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SmartHR 開発者ブログ

COO vs CTO とその仲間たち企画から見えてきた Biz / Dev 協働のリアル

こんにちは!CTO の芹澤です。
去る2021年7月7日に「COO vs CTOとその仲間たち 〜開発チームがビジネスチームの質問に答えまくる祭〜」というタイトルでイベントが開催されました。 smarthr.connpass.com これは、プロダクトチームとビジネスチームのメンバーがプロダクトのことやお互いのチームのことをどう思っているかについて赤裸々にしていくという趣旨のイベントだったのですが、議論のタネとして事前に収集されていた社内アンケートの結果が興味深く、ライブ配信イベントのみで終わらすにはもったいない内容だったので、それを改めてこちらで共有させていただければと思います。
また、当日に繰り広げられた COO 倉橋さん, VP of Product Design 宮原さん, VP of Product 安達さん、CTO 芹澤というパネリスト陣の “ナマ” のやりとりも非常に面白かったため、こちらも、要所要所のピックアップにはなりますが、雰囲気がお伝えできるよう合わせてご紹介できればと思います。(以下、引用時にはそれぞれ「倉橋」「宮原」「安達」「芹澤」と表記します)

製品開発スピードは速いですか?

「製品開発スピードは速いですか?」のアンケート結果。ビジネスチームは、17.4%の人が「とても速い」、47.8%の人が「速い」、21.7%の人が「普通」、13.0%の人が「速いとは言い切れない」と回答している。

以下、ビジネスチームのアンケートコメントより抜粋。

アップデートが鬼の早さで驚きを隠せません!リリース目処も随時共有があるので、お客様に安心して提案できます

どちらかというと現在は品質重視の印象。ただし、短期間でプロトタイプして検証していくスピード感がある

基本は速いが、めっちゃ欲しい機能ほどペンディングしたりしてしまう(そういう機能ほど開発が複雑なことは理解しています)

開発速度とは、絶対的な指標がなく、「速いのか」「遅いのか」を定量的に判断することは、実は難しいです。品質・コスト・納期という、いわゆるQCDのバランスは、常にプロダクトチームを悩ませる存在であり、そういった中で、実際にプロダクトを売る立場にいる方がどう言うふうに感じられているのかがわかるのは、とても良い機会です。
プロダクトチームでは、最短距離で価値提供をしていくということにこだわっているので、アップデートの早さや頻度にポジティブな印象を持っていただけているのは、とても安心しました。一方で、寄せられる多くの要望に対して優先度を付けながら対応しているため、どうしてもなかなか実装されない要望も出てきてしまい、そのようなものを実際にお客さんから求められてしまうと、やはり開発速度への印象も変わってくるんだなという気付きもありました。 開発速度を感じる変数で言うと、イベントでこのようなやりとりもありました。

芹澤「倉橋さんが速いと思った開発と遅いと思った開発は?」
倉橋「QCDのバランスだとは思うが、新しく挑戦している人材マネジメント領域での開発はめちゃ速いと思う。一方、SmartHR本体はユーザ規模に伴う責任とのバランスをとったスピードになっていると思う」
芹澤「あれ?こないだ人材マネジメントの新機能リリース、もっと早くできないのかって言ってませんでしたっけ」
倉橋「(事業メリット的に)早ければ早いに越したことはないです!」

プロダクトチームも、事業やビジネスチームの状況を理解しつつ、QCDのバランスを調整して行くことの大切さが、身に染みてわかりました。
「スピード感」や「更新感」というものは、お客様はもちろん、売り手にとっての安心感にもつながると思うので、引き続き意識的に取り組んでいきたい次第です。

製品品質は良いですか?

「製品品質は良いですか?」のアンケート結果。ビジネスチームは26.1%の人が「とても良い」、69.6%の人が「良い」、4.3%の人が「普通」と回答している。

以下、ビジネスチームのアンケートコメントより抜粋。

ユーザ視点で開発する風土が強く、エンタープライズに揉まれている点もあり製品品質は高いと思います

大きな事故もなく、常に機能開発やヘルプページなど細かに整備している

今は旧機能と新機能との混合運用でお客様側に負荷がかかったり、仕様の説明が難しい箇所がある

プロダクト品質も、開発速度と同様に良し悪しの絶対的な基準を設けることが難しい分野です。作る側としては、レビューやテストを通して、仕様品質やインターフェースデザイン、機能要件や非機能要件など、できる限りの分野で品質の担保をしているつもりではありますが、それがお客様にどう受け取られるかはまた別の話。
アンケートの回答を見ると、細かな不具合やバグというより、インシデントの有無や「使いやすさ」という観点でのポジティブな言及が目立ちました。この辺りも、業務ソフトウェアとしてこだわりを持って開発・運用をしている箇所ではあるので、ポジティブな印象を持っていただけるのは安心しました。
また、ヘルプページに関して言及していただけているのも嬉しかったです。SmartHR ではヘルプページを作成するユニットもプロダクトチームに属していて、プロダクトの一部として管理しています。お客様やビジネスチームの視点でも、そこの価値を感じ取っていただけているのは、とても嬉しいですね。
一方、リリースして月日が経つプロダクトに関しては、レガシーとの共存が避けられず、そういった点で負担をかけてしまっているのには反省です。

ちなみに、イベントでは「SmartHR に完成はあるのか?」という話題になり、以下のような会話がありました。

倉橋「SmartHRって完成するんですかね?」
安達&宮原「しないんじゃないですかね」
安達「完成したソフトウェアってこの世に存在しますかね」
芹澤「パッと思い浮かばないかも」
宮原「機能が増えれば、それだけニーズも増えますからね」

以前、社長のブログで「プロダクトの完成度は「40点」である」という話がありましたが、実はこれ、プロダクトチームの評価はもっと辛く、プロダクトデザイナーは「30点」、プロダクトマネージャは「25点」という点数をつけていたのです。 blog.shojimiyata.com 開発の内側にいればいるほど、プロダクトのポテンシャルが見えてきて「もっとこうしたい...!」という気持ちが生まれてきます。新機能をリリースしてお客様に使っていただけばいただくほど、この気持ちは強くなりますし、ストイックに価値提供を探求し続けられる性質のプロダクトと言えるかもしれません。

(お互いに)話しかけやすいですか?

「話しかけやすいですか?」のアンケート結果。ビジネスチームは17.4%の人が「とても話しかけやすい」、47.8%の人が「話しかけやすい」、17.4%の人が「普通」、17.4%の人が「話しかけやすいとは言えない」と回答している。

以下、ビジネスチームのアンケートコメントより抜粋。

どのような相談もすぐに反応・対応いただけていてとても話しかけるハードルが低いと感じています!

直接お話ししたことがない方がほとんど。話しかける時はドキドキしていつもより3倍畏まります。バザールや新機能お披露目会で、意見や要望を真摯に受け止めてくれるのは大変嬉しい

あまり仕事上の接点がないこともあり、初動として話しかけるのを躊躇してしまいます。

こちらは、プロダクトではなくチーム間交流の話。険悪な関係で話しかけにくい、というわけではないものの、普段接点がそこまで多くないこともあり、ラフなコミュニケーションはしにくそうという印象です。コロナ禍におけるフルリモートの流れで、オフィスでの偶発的なコミュニケーションが減少したことも理由としてはありそうです。

倉橋「リモートになってから一層交流機会は減ったかも」
芹澤「プロダクトチームはほぼ出社しないですからね。オフィスのプロダクトチームの一角、電気が消えてるらしいですね」

ところで、実はこのセクションがイベントを通して一番盛り上がり、全体の1/3ほどの時間をかけて議論が繰り広げられました。何について話したかというと、業務上の接点は思いのほか様々な箇所に存在していて、それらを通して全社一丸でのプロダクト開発のカルチャーが醸成されているのではないか、ということでした。
例えば、以下の記事にあるように、プロダクト開発の優先順位策定や仕様策定のプロセスにおいて、ビジネスチームの方々の意見は積極的に取り入れられており、多くの意思決定が両者を交えた議論の元に行われています。 tech.smarthr.jp

倉橋「ロードマップモム会、最近はいろんなチームの人が魂のプレゼンを持ってくる。これが欲しい、この機能を作ってくれ、と。」
芹澤「あれ、アツいですよねぇ」
倉橋「思うのは、プロダクトに対する思い入れや愛がどのチームも強い。いろんなところから要望が上がってくるのは、弊社の特徴だと思います」

また、バザー形式でのスプリントレビューのように開発途中の機能についてビジネスチームの方に知っていただき、フィードバックをいただく機会もあります。 tech.smarthr.jp

倉橋「PMM主催のビジネスチームへの開発状況共有会、PdMの方も同席してると思いますが、出てる側はどういう心境なんですか?その場で結構ツッコミがあると思いますが」
安達「PdMとしては、あの場で温度感が確認できるのはありがたい。『この仕様だと困る』とか『早く売りたい』といったリアクションがリリース前にもらえるのは嬉しい」
倉橋「優先順位的に泣く泣く実装を見送った機能を突っ込まれることもありますよね?」
安達「それはそれで、ありがたいと思います。PdM としても、自分の意思決定が正しかったのかどうかはずっと気にしている。『これを落とすなんておかしい!』みたいな声は、恐れずにあげていただきたい」

業務ソフトウェアという性質上、作ったものがバックオフィスの現場で機能するのかどうかは常に気になるところですし、日々お客様と接し、現場の肌感覚が養われているビジネスチームの方々と連携し、プロダクトを作っていくことの大切さを、改めて実感しました。

さいごに

僕自身、BtoB SaaS の開発を行う組織においては、ビジネスチームとプロダクトチームでフラットな関係性を保つことが重要だと考えていて、常日頃からこのバランスを意識して組織作りをしています。なんとなく「いい関係性だな」と思ってはいたのですが、こうしてアンケートとってみたり、COO と対談してみると、新しい気づきもあり面白かったです。

実は、このブログは当初イベントの書き起こし記事にする予定でした。ただ、実際にやってみると、要所要所でパネリスト陣がお互いに茶々を入れ合う雰囲気をうまく文章でお伝えするのが難しく、書き起こし形式を断念したという経緯があります。COO とプロダクトチームの愉快なやりとりをなんとかお伝えしたかったのですが...それはまた、同様のイベントが開催されるまで、お待ちいただければと思います。

We are Hiring!!

ちなみに、COO とプロダクトチームの愉快なやりとりを、イベントを待たずして味わう方法があります。
そう、それは、SmartHR 社に入社することです。

SmartHR 社では現在、エンジニア、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナーなど全方位的に採用を進めております。この記事を読んでご興味を持っていただけましたら、ぜひご応募をお願いいたします!