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【イベントレポート】SmartHR×hey │ PM10人規模の組織・プロダクトのリアル

ご挨拶

こんにちは!プロダクトマネージャーの稲垣です。 みなさん、先日のイベント「【SmartHR×hey】PM10人規模の組織・プロダクトのリアル」はご覧いただけましたか? 本記事ではイベントレポートとして、当日語られた内容をご紹介いたします。

今回のイベントでは『PMぶっちゃけトーク』をイメージワードに、プロダクトの歴史の長さやPM組織の規模が近いhey・SmartHRの2社ならではの・またリアルな姿を伝えるべく、赤裸々な話が繰り広げられました。どうぞご覧ください!

登壇者紹介

松栄 友希(ヘイ株式会社 リテール事業本部 シニアプロダクトマネージャー)
デザイナー、マーケターなどを経た後、「転職ドラフト」など複数プロダクトの立ち上げ、グロースにプロダクトマネージャーとして携わる。その後、XTechグループのXTalent株式会社に創業時から執行役員として参画。2021年7月にheyへ入社し、STORES、STORES レジのシニアプロダクトマネージャーに。日本CPO協会理事。

安達 隆(株式会社SmartHR 執行役員 VP of Product)
大学院修了後、受託開発やプロダクト開発に従事。2012年に起業し、EC領域でSaaS事業を立ち上げ、KDDIグループに売却。メルカリにて顧客サポート部門の業務システム開発を担当したのち、2019年にSmartHRへ入社。2020年7月より現職。日本CPO協会理事。

西岡 大揮(ヘイ株式会社 予約事業本部 シニアプロダクトマネージャー)
2012年楽天に入社、楽天市場のトップページリニューアル PJ などを担当。2015年トクバイ株式会社(現ロコガイド)に転職し、小売向けマネタイズのプロダクトマネージャーを担当。その後、2018年 hey に転職。STORES.jp 1人目のプロダクトマネージャーとしてプロダクト開発に関わった後、現在はSTORES 予約のプロダクトマネージャーを担当。

稲垣 景子(株式会社SmartHR プロダクトマネージャー)
ブライダル企業にて接客、マーケティング、SaaS事業立ち上げに従事。2014年から株式会社リブセンスにてWEBディレクター、インハウスSEO担当者を経て、プロダクトマネージャーへ転身。toB・toCの不動産事業の事業からプロダクトまで一気通貫で担う。2020年1月にSmartHRにジョインし、SmartHR本体のプロダクトマネージャーを担当。

「PM組織の課題」とは?意思決定スピードをどう上げる?

PM組織の採用以外の組織課題は何ですか?

松栄:まず、「PM組織の課題ぶっちゃけトーク」ですね。最初のテーマは「PM組織の採用以外の課題は何ですか?」。安達さん、どうですか?

安達:今の一番の組織課題は採用だ、っていうのは両社共通してますよね。
それ以外だと、どうやってアジリティを落とさずにスケールさせていくか。もう少し具体的に言うと、2つの課題感があります。ひとつめは、会社の人数が増えるに従ってビジネスサイドからのインプットをちゃんと集めるのが難しくなってきていることですね。今何が売れているか、どんな機能が求められているか、お客さんがどんな課題を持っているかを知るのが以前よりも難しくなっている。もちろんまったく連携できてないわけではないけど、PMや開発チームが本当にちゃんと全体像を掴むには、収集する情報の量と質が課題になってきていると思います。
もうひとつは、意思決定のスピード。会社としての優先順位が明確なものは、割とスッと決められます。一方、現場からのボトムアップで意思決定するようなイシューになると、「この議論全然終わらないな?」ということも出てくる。機能の優先順位などでもこういうことが起きています。ボトムアップの意思決定をどうスピーディにやっていくかが難しいですね。

松栄:めっちゃいい回答ですね〜。「意思決定スピードを上げる」って、課題として良く分かるんですけど、実際にはなかなか上がらなくないですか? 

安達:上がんない(笑)!
上がんないんですけど、いちおう僕たちがどういうアプローチで解決しようとしているかを話すと、ひとつは仕組みです。前提としてボトムアップのカルチャーは維持したいので、誰かに権限を集めるようなことはできる限り避けたいんです。プロダクトごとにビジョンやOKRをちゃんとつくるなど、現場にアラインメントの仕組みを導入することで目線を揃えて、余計な議論を減らしたり、情報不足で判断をミスしたり、各自バラバラなことをしたり、ということを減らしていけるんじゃいかと思っています。
もうひとつは、シンプルに個の力とチームの力を上げていくアプローチ。個の力なら例えばリーダーシップ、チームの力なら「チームで意思決定する」「チームで考える」ことに対して、全員の練度を上げていくようなことが必要だな、と考えています。

松栄:個の力とかチームの力を上げるのは、研修とかワークショップを重ねるようなイメージですか?それとももっとOJTっぽい?

安達:実地でやりながら学んでいこう、というやり方ですね。研修みたいなことは今のところできていません。例えば何か問題が起きても、誰かが上からやってきて解決するとかじゃなくて、どうしたら現場で解決できるかを、都度都度立ち止まってチームで考えています。なので、さっき言ったとおり「全然早くならない」んです(苦笑)。

松栄:笑

安達:で、なかなか早くならないんですが、今やっておかないと今後どんどん苦しくなるはずなので。2年後、3年後に会社がどうなっていたいかを考えた時に、今いるメンバーの能力や練度をしっかり上げておかないと、どうしようもなくなると思っているんです。なので敢えて時間をかけてでも、個人としてもチームとしても成功体験を積んでほしいと考えています。

松栄:これって、PMというよりプロダクト組織全体でやっていることですよね。例えばエンジニアなら「自分はこういうことに時間をかけるよりも技術に尖りたい」ような人もいる可能性があると思うんです。チームで練度を上げていくことに対して、異論が出ませんか?

安達:チーム内からは出ていない認識です。採用の段階でもスクラムでやっていることをしっかり伝えているんですよね。なので前提として「チームでものをつくっていく」ことに賛同している人しかいないんです。あとはエンジニアであっても、技術だけでなく「お客さんにとってどういう価値があるのか」に関心がある人を採用しているので、目線はあんまりズレないですね。
どちらかというとビジネス側からのプレッシャーの方が大きいです。もちろんフラットな関係性なので、「とにかく早く作ってほしい」というよりは「お客さんが困ってるからなんとかならない?」という感じのニュアンスですが。最速で最善を尽くすことと、チームの力をつけることへの投資のバランスは永遠の課題です。

PM組織の「属人化」をどう考える?組織の流動性を高めるには

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松栄:すごいSmartHRのカルチャーが出る方向性だな、って思います。全社の優先順位が決まっているものと、ボトムアップで優先順位を決めるものの境目ってどこにありますか?

安達:難しいですね。この境目がふわっとしているのが意思決定が遅くなる理由のひとつかな、と思っています。あんまりカチッとしたフローや権限範囲を持っていないんですよね。会社全体としての事業戦略、例えば「こういうマーケットにこういうプロダクトを提供して、こういう人たちにこんな価値を提供していこうね」という方向は会社として決まっています。が、それ以降は本当にグラデーションが大きい。
開発チーム内でまるっと判断していいこともあれば、ビジネスサイドも巻き込んで意思決定した方が良いこともあるし、プロダクト同士の横連携で話し合って決める必要があることもある。「このイシューは誰と合意形成したら良い意思決定ができる?」という点がPMごとに属人化していて、ここはPMのオンボーディングでも課題を感じているところですね。

松栄:わかる〜!heyもその点はすごく属人化しています。

安達:昔からいる人は誰と何を話したら決められそうかだいたい分かるんですけど、新しく入社した人は「誰に何を許可取ったら良いの?」って感じますよね。SmartHRはフラットな組織文化を大事にしているとはいえ、その質問に対して「いや、許可とか要らないですよ」って返されても困っちゃうじゃないですか。 権限委譲されているがゆえに困る、みたいな感じになってきています。

松栄:いろんな人を巻き込んでいても、さらに途中で巻き込むべき人が増える、みたいにエンドレスで広がっていくことってありませんか?

安達:ありますね(苦笑)。 「俺は聞いてない!」みたいな人が出てくるわけじゃないんですけど、「あの部署に聞いていなかったせいで判断をミスった」みたいなことが起きてしまうんです。
heyさんはそういうの、課題じゃないですか?

松栄:課題ですよ(笑)。heyは組織課題がいっぱいあるんです。そもそもheyの特徴は、ひとつの会社がだんだん大きくなったわけではないんですよ。同じくらいの規模の小さな会社がくっついて大きくなったような成り立ちで、ひとつひとつの事業部が元は30人〜50人くらいのベンチャーなんです。プロダクトの特徴としても、例えば「STORES 予約」と「STORES レジ」と「STORES 決済」っていう3つのプロダクトに対して、ユーザーはどれからどんな順で導入することもできるんです。そうすると、自分たちの事業部の中で意思決定を収めない方が良いことも出てくるんですよね。
「これは他のプロダクトと相談した方が良かったかも?」「これはプラットフォーム事業部にまとめてもらった方が良いのでは?」みたいに、ひとつひとつ内容に応じて考えているのが現状で、誰に何を聞いておけば良いかは超属人的です。本人の関わりの範囲とかアグレッシブさ、社歴の長さなど、いろんな要素が重なって、うまくやれるかどうかが個人によって違いがある状態になっています。

安達:そうですよね。「属人化」ってネガティブな文脈で使われることが多いですけど、僕は属人化するしかない部分もあるんじゃないかと思ってるんです。全部を仕組みとかルールにすることはできないですよね?

松栄:うんうん、できないです。仕組みとかルールを決めすぎても、ハマらなくなっちゃうんですよね。全部を網羅できるパターンはなくて、結局個別に考えちゃう。急激に人が増えて、人の流動性もそこそこあるので、以前はAさんが決めてたけど今はBさんが決めている、みたいなことも多々ある。
組織の形自体も、事業部付から横断組織になるレベルで変わっているので、「そもそも仕組みとは…?」みたいになるじゃないですか。組織が成長する過渡期において、どこまで仕組みで担保してどこまで属人で担保するのかの判断も難しいですね。

安達:こういうふうに解決していこうみたいな方針ってありますか?

松栄:会社として「明確にこう課題解決しよう」というフェーズにまだ到達していないのが現状ですね。会社全体のバリューをついこの間決めたんですよ。会社の行動指針が今決まった状態なので、hey全体として「PMってどういう人?」という定義もまだ固まっていないんです。

安達:あ〜、なるほど。

松栄:事業ごとに特性も全然違っているので、例えば私の居るリテールのPMと、決済のPMでは動き方も全然違うんです。なので事業部ごとに採用要件も全然違うんですけど、そのまま進んじゃうと異動できなくなっちゃうじゃないですか。

安達:わかります。PMってもともと異動しにくいし、しかも急に追加で必要になったりするから、流動性を担保しておかないとヤバいですよね。

松栄:そうなんです。だから全社としての「PMの役割・範囲」や、協働する人たちとの役割分担を考えた上で採用要件を定義するところからスタートかな、と思っています。

安達:ジョブディスクリプションはあるんですよね?

松栄:はい、あります。ただ、今はプロダクトごとにそれぞれのPMがジョブディスクリプションを書いていて内容が違っていたり、すごいふわっとした定義みたいな感じになっています。

安達:「何を、なぜつくるのかに責任を持ちます」みたいな…?

松栄:そうですそうです。

安達:SmartHRもそれぐらいふわっとしてますよ。ジョブディスクリプションは全プロダクト共通ですけど、明文化されているものっていう意味だとそれ以上のものはないかも。

松栄:まだまだ話したいんですけど、時間なのでいったん切り上げて稲垣さんと西岡さんの話に移りましょう。

プロダクトの歴史・レガシーコードとPMはどう向き合う?

レガシーコードとどう向き合う?

松栄:「PMの実際の取組み・学び」ひとつめのテーマですね。両社ともに数年の歴史があるプロダクトを抱えています。レガシーコードゆえの課題とどう向き合っていますか?

稲垣:まずはどんな課題があるかからお話ししますね。SmartHRは会社の急成長に伴って、プロダクト自体のユースケースやターゲットがガラッと変わっているんですけど、そうするとプロダクトの中で持つべき概念やデータの構造、根本の考え方みたいなものも変わるんですよね。例えば入社の手続きに使われていたものが人材マネジメントにも使われるようになったり、利用企業の規模が数十名から数万名に変わってくると、プロダクトの思想も大きく変わります。思想の変化にコードの変化が追いつけない、というのがレガシーの課題なのかなと考えています。
どう向き合っているかというと、優先順位の考え方をアップデートしようとしています。「求められているものをできるだけ早く届けていきたい」と思って開発してきているんですが、やっぱり目の前で求められていることにフォーカスするだけじゃまずいんですよね。
少し長い目や広い目で見たプロダクトの成長方針を考える動きが生まれてきました。これまでは短期的に、次から次へと求められるものを作り続けていましたが、最近は経営層の考える中長期の成長シナリオに対して、このプロダクトの役割や、どう変化していく必要があるのかという観点も入れて、中期と短期の両方からプロダクトの方針を考え始めています。

松栄:求められるものをつくっていくと、「声の大きな人に向けたプロダクトを作ってしまう」ような問題がよくあると思うんですが、そういうことですか?

稲垣:それもあります。お客様が欲しい物って、今目の前で困っていることへの解決策なんですよね。 例えば、入社の手続きだけに使っていたときは、まさかその情報を会社の人事データベースや分析基盤として使うことになるなんてお客様自身も想像していないと思うんです。
なので、その都度その都度目の前で見えている課題だけにアジャストしてものをつくってしまうと、構造自体の望ましいあり方を見誤ってしまったり、最終的に欲しい物にたどり着けなかったりするな、と思っているんです。

松栄:なるほど〜。heyの方はどうですか?

西岡:STORES 予約はクービックっていう会社からheyにグループ会社としてジョインしたプロダクトです。サービス自体は8年前からあって、デザインやコードの負債がかなり溜まっています。技術負債をどの順番で解消するかの意思決定はエンジニアリングマネージャーに任せるようにしているんですが、そのために方向性のインプットを意識しています。
例えば「3年後までにこうなっていたいから、それまでにこの技術的負債は解消しておいた方が開発速度が上がるよね」というコミュニケーションを取るようにしていますね。そうすると、スクラムの中で負債解消をn%入れていく、みたいな進め方ができるようになると考えています。
あとはhey独自の考え方でいうと、heyって今は4つのプロダクトが別々に存在する状態なんですが、IDなどの基盤の統合がまだ全然できていません。そのために今後何をしていけばいいのか、みたいなことをエンジニアと話していたり、開発の優先度として混ぜ込んでプランニングをしていったりしています。

稲垣:全社の基盤やデータ統合の話って出てきますよね〜。めちゃくちゃわかります。

西岡:ですよね。こういう話って、エンジニアもめちゃくちゃ嫌な顔をします(苦笑)。

安達:IDの統合はゾッとしますね(苦笑)。

西岡:ですよね。とは言え進めないわけにはいかないので、プラットフォームの戦略として考えたりとか、経営陣とのコミュニケーションを取ったりしています。

PMの目標設定をどうしてる?事業・プロダクト・PMの成長を接続するための取り組み

松栄:ではそろそろ次のテーマに行きましょう。「各社ともPMはどのような目標の持ち方をしていますか?特に数字目標は持っていますか?」

西岡:去年の下半期はあんまり数値目標を置いていなくて、プロダクトのリリースをOKRや評価目標にしていたんですが、プロダクトのリリースにフォーカスすると、アウトカムに繋がっているかという視点が抜けていたなと感じています。
予約にはPMが2人いるんですが、今は2人とも事業の数字に直結するような目標を持っています。2人でやっているのであまり分担はせず、2人とも比較的全体を見るような動き方をしています。
SaaSの場合はプロダクトの提供価値と事業の売上がかなり直結するなと思っていて、いいプロダクトをつくることは重要だけど、売上が上がっていないプロダクトは本当にいいプロダクトなのか?という感覚なので、事業目標とともに提供価値を考えるようにしています。

松栄:heyは今PMが13人いるんですけど、みんなが数字目標持っているかっていうとそうじゃないですね。西岡さんが所属する予約のPMが自ら「数字の目標持ちます!」って言って、持ち始めた状況です。

西岡:そのあたりはすごくフレキシブルで、事業ごとに目標設定をするので、事業責任者と一緒にKPIや数値を考えていますね。

稲垣:数字目標を持ちたい!という背景にはすごく共感します。その中で、持つことにしたのが事業の数字だったのはどうしてなんですか?

西岡:今は一例として、新規のMRRやチャーンの数字を持っているんですが、機能をつくることで事業が成長していくモメンタムを作りたかったんです。ビジネスチームと話をするときに議論の方向性を揃えるというか、新規のMRRを上げるため・チャーンを防ぐためにどういった開発をするのかという目線がかなり揃うなと思っています。
ただネガティブな面もあるなと最近思っていて、近視眼的なものの見方、例えば「大きなオーナーさんを獲得していくため」みたいに、個別のオーナーさんの事情に寄ってきてしまうんですよね。
そこはSalesやCSと話をして、プロダクトとして中長期で目指したいビジョンやマーケット、競合をしっかり見て、プロダクト戦略そのものの目線合わせをしているところで、振り子みたいに行ったり来たりする感覚はあります。さっき安達さんが言っていたビジョン、中長期の話と、「どうしてもこのオーナーさんを落としたくない!」みたいな話の間で、汎用的な開発をしていくためのヒアリングやユースケース検討をしています。

稲垣:中長期の目線で例えば基盤の開発をするのと、目の前の要望への開発をするのってかなり違うので、予め比重を決めておいたりしないと、数字の目標そのものや達成の捉え方がズレてしまいそうだなと思っています。

西岡:そうですね。短期的な評価をあまり信用していなくて、そもそも人は人を評価できないって思っているんです(笑)。みんなの目線が揃えばいいなと思っていて、評価をツールとして使うような目的ですね。

安達:松栄さんはそれに対してどう考えていますか?

松栄:事業部によって結構違ってますね。私のところは、すごい丁寧な目標設定と評価をしているチームです。目標設定と評価において、評価されることよりも、前向きに自分の課題に取り組める状態をつくることの方が大事だと思ってるんですよ。「上司に分かってもらえなくて低評価だった」とか「外的要因が大きくて評価は悪かったけど自分はもっとやったはずだ」みたいに本人が感じてしまうと評価ってまるで意味がないじゃないですか。
だから、評価という名称ではありますが、その中で「どこまでがあなたの中でコントローラブルで、どこまでがアンコントローラブルでしたか?」ということをコーチング主体で本人に考えてもらう機会を何度か挟んでいます。その時にGoodポイントもたくさん返すので、認められている・受け入れられている感情を持ってもらいながら「ここは自分の認知が違っていたかもしれない」ということを認識して前向きに走れるようにしています。

安達:コントローラブル・アンコントローラブルの領域をきれいに分けるのって難しくないですか?

松栄:めっちゃ難しいです(笑)。でも結局、きれいにわけられるのが正しいというよりも、そこに対して本人に考えてもらいたいんですよね。
客観的に見て思うことと、自己認識は絶対ずれるので、そのズレについてどう思うかを話し合って、本人が納得して前向きに走れることが大事だと思っているんです。

安達:マネージャーがメンバーのことをしっかり見てるんですね。その人が普段どういう風に仕事をして、どういう意思決定をして、どんな結果だったかを全部知らないと、そのフィードバックってできないですよね。

松栄:それはそうですね。めちゃくちゃ細かくは見れていない人はいるけど、できるだけ細かく見て、極力こまめにフィードバックすることを心がけています。
じゃあ、稲垣さんの目標の話を聞いてみましょうか。

稲垣:ありがとうございます。まず前提として、SaaSでプロダクトが成長してくると、プロダクトの成長と事業の成長を密接に結びつけるのが難しくなってくるな、と考えていて、プロダクトによって数字の目標を明確に立てているところと立てていないところが分かれているのはheyさんと共通しています。
新規プロダクトは機能開発と新規受注などの関係が比較的直結してくるので、PMMと密に連携を持ってPMも事業の数字を追っている印象があります。 一方、私はSmartHRの中でも一番古いプロダクトを担当しているので、これまではあまり固定の数字目標を持たずにやってきました。とは言え、さっきお話したみたいに中期のビジョンを考えている最中なので、それに応じたNorth Star MetricやKPIを設計したり、個人で分担できるようにしていきたいと考えています。

松栄:「North Star Metricは本当に存在するのか?」みたいなことってありますよね?

稲垣:そうなんですよ〜(苦笑)。 North Star Metricの条件に「この値が伸びたら事業の数字も伸びること」があるじゃないですか。あれが一番難しいなと思っています。
ただ、「難しいね、見つからないね」でNorth Star Metricを置かずに来たのは自分に対する逃げだったな、とも思っているので一回試しに置いてみて、検証も含めてやっていこうとしています。半年後に「大失敗でした!」って言っている可能性もありますが(笑)、まずはやってみないと何もわからないなと。

西岡:僕らもNorth Star Metricを立てよう、と話して年始にふわっと立てたんですよ。ただ、結構形骸化しているんです(苦笑)。North Star Metricを伸ばすために何か注力できていることがあるかというと、あんまりなくて。
North Star Metricって、ビジネスチームにも理解を得られているものなんですか?ビジネスチームって個々のお客様が大事になりがちだと思うんですけど。

稲垣:そうですね。まず前提として、100%の納得を全社員に得るのって、会社の規模的にももう現実的じゃないと思ってるんです。
今私が担当しているのが「SmartHRを人事データベースとしてちゃんと活用してもらえるようにすること」なので、人事データベースとして成長するためにこういう順番で課題を解決していこうと思っている、とか、そのときに一番伸びるべき数字はこれだ、ということを考えています。 意思決定の精度を上げるためにもプロセスとして、考え方や背景をしっかり共有して、フィードバックはビジネスチームにもきちんともらうようにしています。
ただ、あらゆる意見が盛り盛りに入ったNorth Star Metricってあんまり良いものにならないと思っているので、フィードバックをもらうのと、もらったフィードバックの中で盛り込むべきものの取捨選択はどこかで切り分けないといけないなと考えています。

優先順位をどう決める?意思決定の精度を上げるには

松栄:じゃあそろそろ3つめのテーマにいきますね。「担当プロダクトの開発について、優先順位づけをどのようにやっていますか?」みんながよく気になる優先順位ですね!

稲垣:理想は最大多数の最大幸福を考えたいんですよね。ただ、やっぱり難しい。
手法としては、職種を問わず一堂に会して議論することをよくやっています。まずはPM・PMMで大枠の優先度の素案を考えて、その上でCSやSales、エンジニアなど、欲しいもの・やるべきと思っていることが違う人たちが集まって視点の違い自体を共有しながら議論できるようにしています。
優先度そのものは、毎年打ち出される事業ミッションと、課題の重要度、例えば求めているユーザー数や頻度・困り度合いなどを絡めて検討していますね。

松栄:heyはどうですか?

西岡:具体例で2つ話しますね。
ひとつはさっき話したように、売上を目標にすると近視眼的になって大手顧客の要望の優先度が上がってしまうことや、それに対して中長期戦略のバランスをどう取っていくか、SalesやCSとどう目線を揃えて議論していくかは前提として大事にしています。
もうひとつは、この間やってみて良かったな、と思ったことです。直近半年くらいに渡る「優先順位を変更したときの振り返り」をやったんです。優先順位の変更に対して「それはなぜだったのか」とか「本当に正しかったのか」を未来から見て議論してみました。
意思決定って基本的に間違えることも前提としていると思うんですけど、その間違いをカバーするためにどう進化すればいいかをPM2人で議論したのがすごく盛り上がりました。「間違えたな」とか「ちょっとふわっと決まっちゃったね」みたいなことをなくすにはどうしたら良いかを考えるのはすごい良かったです。

稲垣:それ、すごく良いですね!

西岡:振り返ると、結構曖昧に決めてるんですよね。少ないですけど、例えばその場で誰かが言った一言で決めちゃったりとか、場の空気の流れで決めちゃったりとか。ファクトが全然取れてなかったことに気付いて、そのファクトをどうやって取りに行けば良かったかを考えたりしました。

稲垣:逆に、その時の意思決定の流れだけじゃなくて、その意思決定が正しかったのかの振り返りをすることってありますか?

西岡:この間の議論はそれも含んでましたね。長期的に見た時にこの意思決定はこのタイミングでする必要があったのか、とか、もう少し検証できることあったよね、という発見もありました。

安達:それ、うちでもやりたいですね!

稲垣:はい、すごくやりたいです。もう、2年前の自分に言い聞かせてやりたいことがたくさんあるので…(苦笑)。

西岡:過去の自分に向き合うのってめっちゃしんどいですよね。「なんでこんなショボいドキュメント書いてんねん」とか、大胆に仮説外してたな、とか(笑)。

安達:しかも、2年とかじゃなくて2ヵ月くらいのレベルで起きるじゃないですか。「2ヵ月まえの自分、愚か過ぎか?」って毎日思いますよね(笑)。
これ、PMの成長に関するすごく大事な話だと思って聞いてたんですけど、PMにいちばん大事なのって意思決定力じゃないですか。
意思決定力ってどうしたら身につくかというと、実地でやるしかない。自分で意思決定しないとダメなんですよね。ただ、その後ちゃんと振り返ってフィードバックを受けて学習するところまでワンセットじゃないと、ずっと筋の悪い意思決定をし続けてしまって成長しないよな、ってめっちゃ思いました。

西岡:また同じ問題に当たってるな、また同じ失敗しちゃったな、って思うことってやっぱりあるんですよね。「これは明らかに自分に責任がある」って内省することは大事だと思います。

稲垣:そうそう!何か情報が足りなかった、とか評価基準間違えてる、とか、理由の要素をまとめることで学べるところたくさんありそうですよね。

Q&Aその1:事業責任者とPMの役割分担は?

松栄:盛り上がっているところなんですが、そろそろQ&Aタイムにいきましょうか。

Q:小さな会社では兼任されるところも多いと思いますが、heyさんでは事業責任者とPMの役割分担はどうなっていますか?

西岡:予約は、事業責任者は事業の数字に責任を持ち、PMはロードマップの価値を叶えるとか、中長期の価値を高めるためのロードマップの作成に責任を持っていますね。

松栄:リテールは、今年レジとネットショップの組織が統合してリテール事業本部になりました。ネットショップは数年あるプロダクトなので機能やサービスがたくさんある一方、レジは出たばかりのプロダクトなのでまだまだ0→1フェーズです。
プロダクトとしては1つだけど、内部の構造がちょっと複雑で、プロダクトの責任者・ネットショップのビジネスの責任者・レジのビジネスの責任者が横並びで存在していて、さらにその上に、事業責任者がいます。
ひとりひとりが「自分が見ているところに一番詳しい人」の状態なので、事業責任者はまとめて決める人じゃなくて、問いを投げる人になっていますね。「どうしてこっちの方が良いの?」とか、「どうしてこう決めたの?」とかバンバン質問を受けながら、意思決定の見直しをしているのがリテールですね。

Q&Aその2:プロダクトに感じるやりがいは?どんなところが好き?

松栄:では次の質問に行きましょう。プロダクトに感じるやりがいってどんなことがありますか?

安達:僕は全体を見ているのでややふわっとしてしまうんですが…迷いなく「社会にとって良い」と思えるところでしょうか。「このプロダクトって本当に世の中に必要なのか?」を考えがちな性格なんですが、SmartHRに対してはそういう迷いがあまりないんです。
例えば最近で言うと人事評価のプロダクトを出したんですが、評価って大変じゃないですか。大変だ、嫌だ、みたいなところをポジティブなものに変えられたら大きな価値だなって思っています。

稲垣:まず、SmartHRが叶えている・いこうとしている方向性、例えば最近は労務から人事への可能性を広げていこうとしていることを叶えていきたいな、と感じられているのがベースにあります。
その上で、私が担当しているプロダクトは、SmartHR全体でどのプロダクトをどう活用していただくかにあたっても土台にあたるものなんですよね。
だから、「守るべきものを攻められる」ことがやりがいになっているなと感じます。
ステークホルダーも多いですし、プレッシャーや難しさもすごくあるんですけど、難しさに負けそうになるときほど「根本のプロダクトだから!」って思うようにしています(笑)。

西岡:BtoBtoCのプロダクトに関わることが多いんですけど、エンドユーザーとして自分の生活にあってほしいなと思えるものな点が大きいと思います。
例えばSTORES 予約なら、僕は電話で予約するのとか本当に嫌いなんですけど、B側の課題を解決することでレバレッジが効いてC側の体験が良くなるのが共通するやりがいですね。

松栄:好きなところが4つくらいあるんですけど…プロダクトを良くすることが世の中を良くすることだって素直に思えるところが一番大きいですね。
放っておいても世の中は進化していっちゃうんですよ。みんなマクドナルドをモバイルオーダーするし、ユニクロに行ったらカゴを置けばレジ精算できるし、みたいに。
お金を持っているプレイヤーがどんどん世の中を進化させていっているんですけど、たとえば職人で「すっごい美味しいケーキがつくれる人」とか「すっごい良い製品が作れる人」とかが、そういう潮流に乗れなかったがために淘汰される世界を作りたくないんです。
社内では「本業に集中する」って言っているんですけど、私たちがやっているのは「夢を持って生きている人たちが、それを人生として継続してやっていける土台をつくる」ことだと思えるのが好きですね。

安達:いい話〜。考え方もそうですし、ケーキってキャッチーで良いですね。うちもそういう伝え方したいなあ。

松栄:笑 ありがとうございます。

終わりに

プロダクトの歴史や組織の規模感が近いゆえに共感できる部分がたっぷりで、何度も「わかる〜!」という言葉が飛び出した会、できるだけ内容を削らずに盛りだくさんでお届けさせていただきました!
途中で話に挙がった「意思決定の振り返り」は、是非自分のチームでも取り組んでみよう、と画策していたり、楽しく学びの多い時間となりました。

さて、最初のテーマは「”採用以外の”PM組織課題」でしたが、SmartHRのPM組織課題の最たるものは採用です(笑)! プロダクトも事業も成長中のSmartHRでは、解決したい新たな課題やつくりたいプロダクトもまだまだ山盛り。一緒に課題に向かってくれる素敵な仲間をお待ちしています!

SmartHRのPMについてもっと知りたい方はこちらもご覧ください! tech.smarthr.jp

募集要項が気になった方はこちらへどうぞ↓↓ open.talentio.com