2024年7月16日、SmartHRは情シス領域への参入を発表。そこから約10日後の7月25日にはその第一弾としてIdP機能の提供を開始しました。
情シス領域のプロダクト開発を行っているのは、情シス領域のプロダクトマネージャー(PM)の岸 祐太さん(@kissy)とプロダクトエンジニアの齋藤 諒一さん(@saitoryc)、小林 悟朗さんを中心とするチームです。SmartHR初となるM&Aを通じて結成されたチームの裏側や情シス領域のプロダクト開発のこれからについて、3人にお話して頂きました。
昨日公開された 「人事が」使うサービスから、「HRのデータを」使うサービスへ。情シス領域進出の背景と、目指す未来 も合わせてご覧ください。
岸 祐太
2014年に新卒で通信キャリアに入社。基幹システムの開発に従事し、要件定義やプロジェクトマネジメントを行う。3年後、SoE領域のプロダクト開発を担う新しい組織の1人目のメンバーとして、組織の立ち上げを経験。組織形成・運営のかたわら、自らPMとしてWebアプリケーションの企画・開発・運用保守を担う。その後、2020年3月にSmartHRに入社。現在は情シス領域含む新規事業のPMとしてプロダクトマネジメント業務に従事。
齋藤 諒一
2006年にソーバル株式会社へ新卒入社し、画像解析ライブラリの開発やBtoCのWebサービス開発に従事。2017年よりSHOWROOM株式会社にて、ライブ配信サービスの開発や、エンジニアマネージャーを経験。2021年よりSmartHRにて、エンジニアとしてプラットフォーム事業の立ち上げを行った後、プロダクト横断基盤のエンジニアマネージャーとして、マルチプロダクト化における課題解決に取り組む。2025年1月からVPoEに就任予定。
小林 悟朗
2006年に株式会社一休に入社。4年間、開発部門の責任者として従事した後、2015年に株式会社メタップスに入社。その後、チーフエンジニアを経て、2018年にセキュリティ系スタートアップ企業に入社し、取締役・CTOに就任。2020年に株式会社メタップスに出戻り入社。「メタップスクラウド」のサービスを立ち上げ、開発責任者として従事。2023年に株式会社メタップスからの事業譲渡に伴いSmartHRに入社。
SmartHRの情シス領域への進出とわれわれの出会い
岸:先週公開された倉橋さんと古川さんの対談記事でも書かれていましたが、SmartHRの情シス領域への進出はメタップス社から「メタップスクラウド」を事業譲渡して頂くところから始まりました。ちょうど1年前の2024年10月の話ですね。
小林:もう1年も経つんですね、懐かしいです。
岸:私と齋藤さんはSmartHR側のメンバーとしてこの案件に関わっていました。悟朗さんはその当時「メタップスクラウド」の開発責任者でしたよね?
小林:はい。私はメタップス側のメンバーとしてこの案件に関わっていました。CEOから「SmartHR社に事業譲渡する」という話を初めて聞いたときは驚きましたが、一方でこれは良い機会だとも感じていました。SmartHRの情シス領域への進出がもたらす可能性を見たかったというのもあります。
岸:当初の印象はいかがでしたか?
小林:率直に言って驚きもありましたが、SmartHRで情シスに取り組めることは非常にポジティブに感じていました。ID管理やSaaS管理を考えると、従業員データベースや入退社といった人事イベントを抑えることが非常に重要です。SmartHRがすでに持っているアセットを活かすことで、より良いプロダクトを提供できる可能性があると私も思ったんです。
岸、齋藤:いい話。
強くてニューゲームなチームでのプロダクト開発
岸:これまでSmartHRはほぼ完全に内製で事業とプロダクトを成長させてきており、そういえば今回が初めてのM&Aだったんですよね。この経験は、新しいプロダクト開発の場でもあり、SmartHRとしても大きな挑戦でした。
齋藤:事業譲渡直後のプロダクトチームは、SmartHR側のメンバーである私と岸さん、それにメタップス側の吾郎さんを含む、総勢6人の混合チームでした。当初はお互いの知見やノウハウを共有し、チームとしての共通認識を構築することに時間を費やしたのが印象に残っています。
小林:そうでしたね。前職での経験から、たとえば「ここはこう作っておけばよかった」「この運用はもう少し楽にできるはずだ」といった学びや反省がありまして、それをどうにかSmartHRでの開発に還元したいという想いが強かったんです。
岸:仕様や設計を決める際も、この学びを踏まえて議論できるのが非常に心強かったです。
小林:SmartHRとメタップスでの開発文化やプロダクトに対するアプローチも当然違っていたのですが、それぞれのスキルや経験が違うからこそ、自然と「ここは任せられる」という信頼感も芽生えていきました。
岸:SmartHR側も割と社歴の長いメンバーが多かったというのもあり「情シス領域へ進出するにあたってこのアセットは活かせる、競合との差別化になるはずだ」「ここを強化しておかないとプロダクト導入のハードルになるであろう」というポイントは確度高く分かっていたため、お互いの考えを持ち寄り、プロダクトの方向性や仕様を固めていったのを覚えています。
齋藤:その意味で、まさに“強くてニューゲーム”な状況でしたよね。お互いの知識を持ち寄って、理想のプロダクトを再構築するような感覚で進めていました。
岸:とはいえ、もう顧客の課題をすべてを把握しているチームなのかというと、当たり前ですが全くそんなことはありません。私自身も初めて向き合う事業ドメインのプロダクト開発でして。なので、まさにこれから、チームの何人かで弊社の情シス部門に短期的に体験入社する予定です。実際の業務を肌で感じることで、現場のリアルなニーズや課題を深く理解したいねと。この取り組みを通じて得た知見をプロダクトに反映していきたいですね。
現在のチームの体制、開発スタイル
小林:現在の開発チームに話を移すと、エンジニアが2名増えたものの、引き続き1チームでの開発体制です。開発スタイルも何か特別なことはしておらず、スクラムのプラクティスを一部取り入れながら進めています。小さなチームであることを活かし、意思決定のスピードが速いのが特徴ですね。
齋藤:メタップス時代の開発の進め方と大きく違う点はありますか?
小林:実はあまり大きな違いはないんですよね。なので、違和感なく溶け込めたのかもしれません。強いて言うなら、SmartHRの場合はプロダクトデザイナーもプロダクトチームの一員として活動しているので、UIなどのインターフェースを決める意思決定もスピード感持ってできている、という点でしょうか。デザインシステムを参考にしながらエンジニアでも一貫性のあるインターフェースを作れる環境があるのも非常にありがたいです。
岸:私はいくつかのプロダクトのPMを兼務しているのですが、PMという観点だと、他のチームとはだいぶ関わり方が異なっていますね。情シス領域のプロダクト開発を経験してきたメンバーが揃っているので、良い意味でPM以上に顧客への理解が深く、プロダクトを「どう作るか」についても非常に高い解像度をすでに持っているんです。
そのため、機能の仕様についてはチームのメンバーに任せることが多いですね。
小林:岸さんは「SmartHRの他機能と組み合わせたらどうなるのか、マルチプロダクト目線だとこうすべきではないか」といった、さらに俯瞰した観点でのプロダクトの仕様をカバーしてくれるので、いい感じに役割分担できていると思いますね。
齋藤:バックグラウンドが異なるメンバーが集まったチームということもあり、自然と各メンバーが役割を超えて意見を出し合い、仕様や機能の優先度を定めることができるのはこのチームの強みだと思います。
岸:ちなみに、齋藤さん目線で課題や改善の余地を感じる部分はありますか?
齋藤:人が足りないことです!(切実)
情シス領域の新プロダクトを作るだけでなく、SmartHRの認証・セキュリティといったSmartHRが情シス領域に進出するうえで強化が欠かせない機能群も現在はこのチームの管掌範囲になっているのですが、さすがに手が回らないよねと...。
小林:メンバーを増やしつつ、提供価値ごとにチームを分けるといった複数チーム体制に徐々に移行していきたいですね。
これからのSmartHR、情シス領域のここが面白い
岸:ここまでは情シス領域進出の背景やチームの今について話してきましたが、「これから」に話を移していきましょうか。チームが発足して1年ほど経ちましたが、お二人にとっての情シス領域のここが面白いという一番押しのポイントはどこですか?
小林:やるべきことがまだまだある点ですかね。現在は非常にシンプルなIdP機能のみ提供していますが、SaaSのアカウント管理や端末管理、またSmartHRのアカウント自体のセキュリティ強化といった機能を提供予定です。情報システム担当者が抱える業務の負担を減らし、本来やるべきことに向き合えるような環境を提供するためにわれわれが貢献できると考えていることは多くあるため、良いモチベーションになっています。
齋藤:既存事業を手掛けるチームとの関わりも多く、チーム一丸となって大きなことにチャレンジできるのもやりがいですよね。
例えば、ちょうど先日ブログが公開されていましたが、課金基盤チームとの関わりです(参考:プラン選択を柔軟に! 課金基盤チームの挑戦 - SmartHR Tech Blog )。
近い将来、SmartHRであらゆる雇用形態の従業員を登録・管理しやすくなるよう、料金プランの考え方もアップデートする予定なのですが、情シス領域へ進出するためには必要不可欠な一手なんです。労務領域やタレントマネジメント領域とは違い、情シス担当者は業務委託や派遣社員といった雇用形態の従業員の方々の情報も取り扱う必要があるのですが、そちらを想定した料金プランになっておらず、導入のハードルになってしまっているんですよね。
自分たちのチームだけでなく、SmartHR全体で何をすべきかを考えながら他チームをも巻き込んで事業を作っていく楽しさもあると思います。
岸:PMやエンジニアなどの職種に限らず言える話ですが、SmartHRで新規事業に取り組めること自体の楽しさもありますよね。
労務で培ってきた一定のユーザー規模、ビジネス規模がある上で新しい事業価値を提供していくというフェーズなのでやりたいことが実現できるスピードが速く、非常に面白いと思います。いち個人としても、転職したのかっていうレベルでこれまでと全く違う事業ドメインのプロダクト開発なので、非常に新鮮な気持ちで日々取り組んでいます。
一緒に情シス領域のプロダクト開発を行ってくれるメンバー求む
岸:つい最近、PMMの古川さんと協力しながら「直近2〜3年のロードマップ、プロダクト全体像」を整理したのですが、やるべきことが盛り沢山です。また、事業の特性上、BPOパートナーなど社外の方々と協働する場面も多くなることも予想されます。
単なるプロダクト開発だけでなく、他社と協働しながら情シスを取り巻くあらゆる業務を効率化するというより広い観点でもプロダクト・プロジェクトマネジメントを求められる場面もありそうなので、「SmartHRの新規事業、情シス領域楽しそうだな?」とちょっとでも思った方はまずはカジュアル面談でぜひに来てほしいですね。
小林:情シス領域のプロダクト開発の経験有無は必須ではありません。バックグラウンドが多様なメンバーと一から事業を作ること自体に興味を持って楽しめる方にぜひ来てほしいです。
岸:最後はVPoEになられる齋藤さんに締めてもらいますか...。
齋藤:無茶振り(笑)。
今回は「メタップスクラウド」をベースとして情シス領域に進出するというチャレンジを行っている最中ですが、今後も他の領域においてもSaaSやSIer、BPOを提供する他社とタッグを組みたいと考えています(参考:ARR150億円、前期比150%のSmartHRが、SaaS、SIer、BPOなどの領域で仲間を募集 | M&Aクラウド)
これまでの学びや知見をさらに活かし、VPoEとしても、どのような状況にも柔軟に対応できる強いエンジニア組織を目指していきます。SmartHRが持つ可能性を最大化し、次のステージに進むためのチームづくりを進めていますので、「SmartHRで新しい挑戦を楽しんでみたい」と思ってくださる方は、ぜひカジュアル面談でお話しましょう!
岸、小林:締まった!
最後に
私たちはプロダクトマネージャー、エンジニア中心に各職種を絶賛募集中です。興味ある方はぜひ以下のページをご覧ください。