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東京Ruby会議12運営おしょうゆ&なっちゃんインタビュー ── 【後編】「Rubyと暮らす」意外な話を聴きたい! 怒涛の準備が終わらない

ご自身の腰に手を当ててほこらしげに立っているおしょうゆさんとなっちゃんさん

2025年1月18日に、東京Ruby会議12が開催されます。2016年以来の約9年ぶりの開催です。SmartHRは、東京Ruby会議12に協賛します。そこで、東京Ruby会議12を最大限に楽しんでいただくべく、実行委員長のおしょうゆさん(@osyoyu)と副実行委員長のなっちゃんさん(@pndcat)にお話をうかがいました。

前編に続く後編は、主に東京Ruby会議12のコンセプトや見どころについてのお話です。

(インタビューは2024年11月13日に行いました。内容は当時のものです)

regional.rubykaigi.org

tech.smarthr.jp

目次

今回のコンセプト

── ここからはイベントの内容の話に移っていきます。今回のコンセプトは何ですか?

おしょうゆ:「Rubyと暮らす」というテーマにしています。暮らしとはなんぞや、については大きく二つのことを考えています。

一つは、Rubyを実践的に「使う」話。Rubyでさまざまなソフトウェアを書く話をたくさん聴きたいです。RubyKaigiではRuby言語やその処理系を作る話、Kaigi on RailsではRailsを中心としたWebの話に限定されますが、このどちらでもなさそうな幅広い話が集まる場にしたいなと。帰るころには、「暮らし」の中でもっといろんなプログラムをRubyで書きたい!と思ってもらえれば、大成功です。

そしてもう一つは、東京にあるたくさんのRubyコミュニティの集いの場にできたらいいな、と思っています。コミュニティって「暮らし」そのものですよね。あとで話したいんですが、いわゆる地域.rbと呼ばれるコミュニティのオーガナイザーのステージも企画してます。

── pndcatさんも一緒にコンセプトをお考えになったんですか?

なっちゃん:いえ、コンセプトは最初からだいぶ固まっているという印象でした。コンセプトをもとに、どういうカンファレンスにするのかを具体的に話し合っていきました。

実行委員長のおしょうゆさん

基調講演

── コンセプトに基づき、基調講演をされる方はどうやって決められたのでしょうか?

おしょうゆ:せっかく講演依頼ができるチャンスなので、自分がずっと聴きたいと思っていながらも、なかなかチャンスがなかったテーマについて話してくれる方にしようと思いました。

今回はお二人にお願いしていて、一人がCRubyコミッターかつRails CoreのJohn Hawthornさんです。今はGitHubで働かれていて、Rails Architecture TeamでGitHubの開発を支える開発をされているそうです。 Rubyを推すとき、「あの巨大サービスのGitHubもRuby/Railsで作られている」と語ることがよくあるんですが、その裏側には並々ならぬ工夫があるに違いない、と昔から勝手に思っていて。そこを取り巻くツールや運用などについて聴かせてほしいとお願いしました。

── もうお一人は?

なっちゃん:Kohei Suzukiさん、eagletmtさんです。私たちの前職の同僚で、とてもRubyに詳しいし、Ruby以外の言語にもすごい詳しい方です。おしょうゆの東京Ruby会議12の初期コンセプトを読んだときに「基調講演は絶対eagletmtさんじゃん!!」ってなりました。個人向けのものから会社向けのものまで、いろいろRubyで作ったり、OSSを公開しているeagletmtさんに発表してほしいと思いました。

おしょうゆ:eagletmtさんはRubyだけじゃなくてRustやHaskellなどのほかの言語にもすごく詳しくて。たとえば、最近のISUCONではRubyとRustの両方の参考実装の移植を担当されてたりします。きっと、ほかの言語をよく知る立場から見えるRubyのいいとこ・微妙なところを語ってくれると思ってお願いしました。

RubyとRustってある意味対極にある言語というか、プログラマーをどれぐらい信用するかの考え方がまったく異なる言語だと思っていて。北海道と沖縄ぐらい違う。その両方が好き、という人はそんなに多くない気がするんですよね。RubyとRustを両方バリバリ書いてる人ってRubyのことをどう思ってるんだろう、というのは気になってたりします。

なっちゃん:eagletmtさん自身もXで「RubyもRustも好きな立場として、Rubyの良さと足りなさを話せればいいと思ってます」と言っていたので、すごい楽しみです。

x.com

── 基調講演まわりでほかにお伝えしておきたいことはありますか?

おしょうゆ:John Hawthornさんはカナダにお住まいなので、話を聴く機会がなかなかないと思っています。みんなが気になっている巨大サービスがどうやって作られているんだ?という話を聴ける貴重な機会だと思っているので、ぜひ聴きに来てほしいですね。

── 日本でご講演されるのは初めてなんですか?

おしょうゆ:いや、RubyKaigi 2024で話されているので初めてではないですね。彼も私もプロファイラを作っていて、似たような関心を持っています。似たテーマのRubyKaigiスピーカー同士で話に花が咲いて、そこから交流があるという感じです。

x.com

── eagletmtさんはいろいろなところでご登壇されているんですか?

おしょうゆ:外部で発表、という形だと意外と見ないような気がします。圧倒的な実装力ですごい量のコードを黙々と書いてる印象を持っています(笑)。だからこそ楽しみですね。

── お二人ともとても楽しみです。

副実行委員長のなっちゃんさん

公募トーク

── 続いて、公募したトークについてのお話をお伺いします。全部で67ものプロポーザルが来たんですね。

x.com

なっちゃん:本当にうれしいです!! 9月29日に募集を開始したのですが、10月下旬になってもプロポーザルが3個しか来ていなくて、運営一同焦っていました。なので、10月25、26日のKaigi on Railsの場を活かして、発表に興味ありそうな人に直接声をかけたり、Xで「プロポーザルを募集しています!」というのを投稿し続けたりしました。

おしょうゆ:10月17日に「東京Ruby会議12では「Rubyと暮らす」発表をけっこう幅広く募集しています!!!!!!!!!!!!」というnoteを書いたのは、焦りからでしたね。どんな話を期待しているのか、もう少し明確になっていればプロポーザルを書きやすくなるんじゃないか、という気持ちもありました。

note.com

おしょうゆ:このnoteがけっこう反響があって「そういうテーマでもいいんだな」「出してみようかな」みたいな反応がXとかであったりして、楽しみにしていたんですけれども、結局みんな……。

なっちゃん:ほぼほぼ最終日でしたね。

おしょうゆ:ところで、実は「Rubyと暮らす」という言葉が出たのって、実行委員の中でもこのタイミングが初めてなんですよね。明確なテーマのフレーズを決めようとは思ってなかったんですが、YAPC::Hakodate 2024のテーマ「Open the future」がすごく良かったとなっちゃんに言われて。

なっちゃん:テーマがあると、発表や企画などカンファレンスが全体的に統一されているのがいいなと思いました。また、東京Ruby会議は主催者が毎回違うカンファレンスなので、どういう内容のプロポーザルを出せば良いのかわからないと思ったんですよね。カンファレンスを一言で表すテーマがあるほうがプロポーザルが出しやすいのかなと思いました。

── たくさん集まったプロポーザルはどのように選考されましたか?

なっちゃん:今絶賛レビュー中で、明日(11/14)実行委員で顔を合わせて、採択会議をする予定です。

おしょうゆ:実行委員が下読みをしてそれぞれコメントを書いているんですが、聴きたいトークがみんな違うんだなっていうことがわかってきたりして、結果としてたくさんの人が楽しめる感じになるんじゃないかと想像しています。

── 採択会議の採択方法はどんなものを予定しているんですか?

なっちゃん:一応みんなで点数ぽいものは付けていて、それをもとに話すんじゃないかなと思っています。

── 67個中、いくつぐらい通る予定ですか?

おしょうゆ:こんなに応募をもらえるつもりはなかったこともあり、元々は5〜6個のつもりだったのですが。これだけ集まってくると、さすがに数個じゃ少ないと思っていて、たぶん10個に落ち着くのかな?

なっちゃん:そうかなぁと思います。

── 1トラックですか? 2トラックですか?

おしょうゆ:もともと1トラックかなと思っていたんですけれども、聴いてみたい話があまりにも多いので、2トラックにしました。なので、10本採択できるようになりました。使いみちを決めていなかった部屋をもう一つ借りていたのが良かったですね。

── 採択後に、タイムテーブルはどうやって決める予定ですか? どう並べるかの方針を知りたいです。

なっちゃん:2トラックでやるので、このトークとこのトークを裏に合わせようみたいなのを採択のときに考えるんじゃないかなと思ってます。なので、タイムテーブル組みも大変なのですけど、本当に大変なのはトークを10本に絞るところだと思います。

インタビューの翌日に行われた採択会議の様子(おしょうゆさん提供)

前夜祭

── 67本中10本の通過は、だいぶ狭き門ですね。

なっちゃん:あまりにも良いトークが多すぎて、2トラックでも足りないっていうのが採択会をする前からわかっているので、YAPCみたいな感じで前夜祭をしようと思っています。

── 前夜祭はどんなことをやるんですか?

なっちゃん:トークと懇親会っぽいことができればいいなと思っています。

おしょうゆ:もともと1 dayカンファレンスと言っていたんですけど、イメージとしては1.5 daysぐらいに拡張できたらいいかなって感じですね。とはいえ、せっかくやるなら「ただの勉強会」にはしたくないねという話はしています。

── 前夜祭の会場はどちらですか?

なっちゃん:秋葉原にあるアンドパッドさんのイベントスペースで行う予定です!

── 前夜祭が東京で行われて、本番が神奈川で行われる。

おしょうゆ:そうですね。

── 良い東京Ruby会議ですね。

おしょうゆ:これで胸を張って「東京」と言えますかね。

なっちゃん:言えると思います。

最終的に、本編の10本に加え、前夜祭でも10本のトークを採択できました!

そして、前夜祭にはSmartHRからも2名登壇します。udzuraさんによる「超入門WebAssembly ~Rubyのコードを眺めて完全に理解しよう~」と、alpaca-tcさんによる「Rubyと暮らし、OSSに貢献し、登壇する ── 半年間続けた「OSSやっていきの集い」の成果と学び」の発表は現地でしか聴けません!お楽しみに!

さらに、chobishibaさんによる「クリエイティブコーディングワークショップ」も開催されます。金曜日の夕方からとちょっと早い時間からになりますが、途中参加も大歓迎です。connpassから別途登録必要ですので、よろしくお願いします!

なお、コンテンツを盛り込みすぎて懇親会は前夜祭の構想から消えました。
(なっちゃん、おしょうゆ)

connpass.com

"Regional.rb and the Tokyo Metropolis"

── 本編では、基調講演と公募トーク以外の企画もあるんですか?

おしょうゆ:最初に話した、東京のRubyコミュニティを集めて何かできないかなというところで一つあります。地域.rbという小さなRubyコミュニティが東京にはたくさんあって、LT会、もくもく会、あるいは飲み会だったりと、どれも個性豊かで面白そうなんです。そこで、それらのオーガナイザーに壇上に上がってもらって、俺たちはこんなことを思ってやっているっていうところを話してもらう企画というのを、地域.rb……

なっちゃん:and the World?

一同:(笑)

おしょうゆ:というような企画を考えたりしています。

── 東京の地域.rbは何コミュニティぐらいあるんですか?

おしょうゆ:今回は、東京だけではなく首都圏の地域.rbまで拡大して壇上に上がってもらおうと考えています。首都圏全体だと15個以上あります。

なっちゃん:私は少ないほうが良さそうと思っているのですが、おしょうゆは多くしたいって思っているので、どうしようか悩んでいます。

おしょうゆ:多いほうが楽しいからね(笑)。この企画については、たくさんの地域.rbに出入りされている、Kaigi on Rails主催の大倉さんにご協力を仰いでいます。

「左右ともに関東の図のつもりです。関東ってこういう感じですよね?」

会場の見どころ

── 会場の準備などもしていますか?

なっちゃん:フォトスポットを予定しています。

── フォトスポットってなんですか?

なっちゃん:Kaigi on Railsでおっきいフォトスポットがあったのですが、段ボールでやったからけっこう安くできたっていうのがnoteに上がっていたんですよ。そういうのを参考にして、いろいろな装飾に私たちも挑戦しようと思っています。

note.com

x.com

── あれ段ボールだったんですね。

なっちゃん:段ボールなんですよ。

おしょうゆ:他もかなりがんばってます。言わないようにしているお楽しみもあるので、会場にきてビックリしてほしいです(笑)。

── ノベルティとかも用意するんでしたっけ?

なっちゃん:予算もどれくらいになるかわかっていなかったので、ノベルティはステッカーぐらいしかないんですが……ちょっと何か作る?

おしょうゆ:そうね。 けど、実行委員が6人しかいなくて、すごいちっちゃい規模でやっているので、できる範囲でっていう感じですね。

── 実行委員はデザイナーさんも含め5人とおっしゃっていたと思うんですけど、いつ6人になったんですか?

なっちゃん:プロポーザルが最終的に67件集まったその日に、おしょうゆが「前夜祭やりたい」って言い始めて、「それはさすがに5人じゃ無理だと思う」って私が言ったので、一人増やすことになりました。Kaigi on Railsのアフターイベントのときに、いかるがさんを誘ったら、良いよと言ってくれました。

── アフターイベントっていうのは、SmartHRで行った「Kaigi on Rails 2024事後勉強会」ですか?

なっちゃん:はい、SmartHRの事後勉強会で誘いました。

── 良い場になりましたね。

なっちゃん:良い場になりました。いかるがさんは、鶴見の隣で、かつ懇親会会場がある川崎に詳しくて、運営に入ったばかりなのにボールを次々拾ってくれて感謝しかないですね。

── おしょうゆさんもご登壇くださいましてありがとうございました。

Kaigi on Rails 2024事後勉強会で宣伝をするなっちゃんさん。この効果でチケットが驚くほど売れたという

デザイン

── Webサイトのデザインも素敵ですね。

regional.rubykaigi.org

なっちゃん:minamiちゃんのデザインは、鶴もかわいいし、色もかわいいし、すごくいいですよね。鶴見の鶴。

── なるほど。

なっちゃん:これ、最初に見せてもらったときすごい良いなと思いましたね。

── とってもいいと思います。

おしょうゆ:「東京だからといって、東京タワーとかを安直に使うのは違うよねー」っていう話はした記憶があるんですよ。「多摩川越しに見た景色のほうがいい」みたいな。

なっちゃん:したした。

ロゴの案を出しているときに、「ロゴに東京っぽさがありすぎるのはよくないかも。だって私たち、鶴見でやっているんだもん」っていう自覚はあったので、東京ではない感があってもいいなという話をしてました。そしたら鶴のロゴが上がってきて。これRubyの形をしているんですよ、実は。

── ほんとだ!

なっちゃん:鶴とRubyをかけている感じですね。東京要素はないんですけど、これすごくかわいいです。かわいいでしょ?

── かわいいです。

おしょうゆ:色もね、新年っぽい感じで。

なっちゃん:そうそう。色もこだわってもらいました。ただの赤というよりかは、どちらかというと朱色っぽい感じ。

東京Ruby会議12の鶴のロゴのステッカー

スポンサー集め

── いろいろなことをお考えになっているようですが、予算まわりはどのように見積もったんですか?

なっちゃん:カナダからJohn Hawthornさんを呼びたいとなったときに「スポンサーを募集しなきゃ無理そうだね」となりました。

おしょうゆ:はい、集めたい額をざっくり計算するところからスタートでした。カナダからスピーカーを招待したいし、会場費もかかるし、いろいろ作りたいし。

なっちゃん:下見に行って何社ぐらいブースを出せそうかを計算したり、スポンサー特典を考えたり、RubyプランとGoldプランの数はそれぞれこれぐらいにしようとか、各スポンサープランの値段はいくらにすると良いのかとか、本当に考えるのが大変でした……。

── 差し支えなければですが、渡航費とかもろもろ全部計算すると、目標のスポンサー金額はおいくらになりましたか?

なっちゃん:スポンサー金額とチケット代を合わせて250万円ぐらい集めれば、やりたいことができそうでした。

── 順調に集まりましたか?

なっちゃん:ぜんぜんすんなりではなくて、東京Ruby会議12をやるって決めたあとに、いろんなカンファレンスとか、地域.rbとか、地域Ruby会議に参加したりして「スポンサーやりませんか?」みたいなご相談をたくさんしましたね。

おしょうゆ:しましたね。

── 期待した額は集まりそうですか?

なっちゃん:集まりそうです。

おしょうゆ:協賛したいという声を予想以上にいただいて、めちゃくちゃうれしかったんだけれども、スポンサーブースをこんなにたくさんは置けないなと思って、泣く泣く抽選をしました。

── プロポーザルと同じで、スポンサー申し込みも駆け込みで最後の日とかが多いんですか?

なっちゃん:多かったです。だから不安でした。最後の2、3日にポコポコって来たよね。

おしょうゆ:そうだね。これに関しては、各社予算取りの都合もあってどうしてもこうなる、というのは勉強になりました。実は最初は先着順だったのですが、それはやめてよかったです(笑)。

── スポンサー関係の企画はどんなものがありますか?

おしょうゆ:スポンサーブース、スポンサーセッション、あとはノベルティを配る場所があります。

── SmartHRも協賛し、ブースを出展します。RubyKaigi 2024で好評だったタイピングゲーム「人労打」のバトル大会を開催予定です! !

スポンサー集めの苦悩を語るなっちゃんさん。実はスポンサーシップ担当大臣とのこと

怒涛に準備中

── ここまで紹介した以外に、8月末の大々的な告知から今まで、どんなことをされてきたのでしょうか?

おしょうゆ:告知時点では本当に時期と箱しか決めていなかったので、テックカンファレンスをやるにあたってはそれ以外の「すべて」をやらなくてはいけないことだけわかっていた。でも「すべて」ってなんだ? ということで、手探りでいろいろと進めています。

なっちゃん:カンファレンスってだいたい半年ぐらい準備にかかるらしいんですけど、私たち、箱を取ったのが5ヶ月前とかなので、けっこう急ピッチですべてをやっていますね。基調講演を依頼して、プロポーザルを募集して、スポンサーの募集もして、チケット販売をしてみたいな感じで、本当に怒涛の日々を過ごしています。

おしょうゆ:開催を決めてから、ほかのカンファレンスに参加するときの目線が変わったというか、勉強するようになりましたね。コンテンツやプログラムはもちろん、会場の装飾とかもよく見るようになったし、メモしたり「こういうところが良かったよね」って話もしたりします。スポンサーシップ募集要項を作るときは、参考として10カンファレンス以上の資料を見比べたりしました。

準備面でも、「こういう体制・スケジュールで動いているんだ」っていうのも意識的に見るようになって。どうも、みんな我々より3ヶ月ぐらい余裕があるんですよね(笑)。「プロポーザル募集を締めるのそんなに前なんだ」「スポンサーをそんなに前から募集しているんだ」「その時期って開催すら決めていないけど」みたいな感じで。なので、かなり急ぎでいろいろやっています。

── 大変ですね。

なっちゃん:私がRubyKaigiの運営にも入っているので、RubyKaigi Teamが作っているsponsor-appをforkして使ったりとか、ノウハウみたいなのをもらってきたりみたいな感じで、けっこう効率的には進められているんじゃないかなって思ってます。いろいろ。ギリギリね。

おしょうゆ:いや、本当に。

RubyKaigi製、スポンサーを管理するためのシステムこと "sponsor-app" 。入稿された会社情報やスポンサーの管理や、スポンサーチケットの発行もできる

なっちゃん:ほかには、下見とかもちゃんと行ったしね。

おしょうゆ:そうだね。自分は合計で4回下見に行ったかな。

── 予約前には一度も行かなかったけど、予約後には4回も行っている。

おしょうゆ・なっちゃん:(笑)

なっちゃん:下見でこんなに行くとは思わなかったよね、正直。

おしょうゆ:そうそう。

この間は、鶴見のこともちゃんと知って紹介できるようになりたいなと思って、駅から出発して、周辺をいろいろ歩き潰しました。駅周辺の飲食店とかはもちろんだいたい見て、あとは鶴見川っていう近くの大きい川を「こんな感じなんだ」って見に行ったりだとか、あとは生麦事件の現場まで行ってきました。

鶴見線の終点、海芝浦駅。ホームが海に面していることや、改札から出られないことで一部で有名

── 生麦事件ってなんですか?

おしょうゆ:近くに生麦って地名があって、そこで大名行列を横切ったイギリス人が斬られたっていう事件ですね。

── あー、それを生麦事件っていうんですね。

おしょうゆ:この事件が薩英戦争につながったんです。横浜育ちの小学生はみんなそこをやたらと詳しく勉強するんですけれども、それを辿ってきました。

── なるほど。横浜市の中で、鶴見区はどういう位置づけですか? 住宅街なのか、商業地区なのかとか。

おしょうゆ:人口も多いですが、いわゆる産業地区と言えると思います。川崎に隣接していて、東京湾に面しているので、工場や物流拠点がたくさんあります。それこそキリンのビール工場があったりだとか、大黒っていう埠頭があったりだとか。

なっちゃん:大黒って鶴見にあるの?

おしょうゆ:そうだよ。

なっちゃん:へー!

おしょうゆ:たぶん。

なっちゃん:大黒パーキングエリアも?

おしょうゆ:大黒パーキングエリアもそう。

── 大黒パーキングエリアは有名なんですか?

おしょうゆ:有名……。有名ですね。大黒パーキングエリアは首都高のパーキングエリアの中では最大のもので、金曜日や土曜日の夜は車好きの人でにぎわってますね。なにせ映えるもので、スポーツカーとか、珍しい車がたくさん集まってきます。集まりすぎて、よく警察の人が封鎖して立ち入り禁止にしてる。漫画の『湾岸ミッドナイト』にも複数回登場してるはずです。パーキングエリアからは下道の大黒埠頭をのぞくこともできて、ドリフトに興じてる人たちがいたりする、そんな感じの場所ですね。警察も違法改造の摘発に便利な場所として使ってて、取り締まり、もとい「無料車検」をよく実施してます。ローダウンしすぎてると切符を切られるだけで、別に車検を更新してくれるわけじゃないんですけどね。自分は首都高が好きで時々ドライブしてるんですが、あるとき休憩のために大黒に寄ろうとしたら封鎖されてて、道の構造上そのまま埠頭に出されてしまったのが思い出深いですね。いや、大黒が閉鎖されてるって情報は首都高の至るところにある案内板をよく見てれば普通に書いてるので、凡ミスなんですが。別の回ですが、夏の夜に運転し疲れて仮眠を取ってたら、寝苦しかったのかいつの間にかエアコンをつけてて。起きたらしっかりバッテリーが上がってて、ハイエースで一家総出の旅行に出てた方に助けてもらったこともありました。あの時の恩をいつか返したいな。ちなみに近くに東扇島という場所があって、こちらもちょっと別の種類のカーマニアが集ってるそうです。そっちはあまり行ったことないんで詳しくないんですが。……こんな感じでいいんでしたっけ? このインタビュー。

── …………ご説明ありがとうございます。

大黒パーキングエリア。入るときにらせん状のランプを降りてくることになり、少し不思議な体験

まだまだ準備は続く

── ここから開催までのToDoはあと何が残っていますか?

おしょうゆ:めちゃくちゃたくさんあるよね。

なっちゃん:めちゃくちゃたくさんあるよね。

おしょうゆ:やることをGitHubのissueで管理しているんですけども、今見るとオープンが51個あります。こうやって見ると意外と少ないような気もする……?

なっちゃん:いやいや。私、立ててないissueあるから。本当にめちゃくちゃやばい。けど6人になったので。いや、6人になったけどやることは増えたんだ(笑)。ここからもぜんぜんやばいです。

── issueのうち、これしんどそうとか大変そうなものを2、3個挙げてもらってもいいですか?

おしょうゆ:今見ると、「前夜祭」というシンプルな名前のやつがありますね。

── 「前夜祭」という粒度で1個にしているんですね。

おしょうゆ・なっちゃん:(笑)

なっちゃん:あとは、「English Speaker向けのいろいろ」っていうissueがあったりする。このissue、ざっくりですね。

おしょうゆ:ざっくりですね。

── 通訳とかも入れる?

おしょうゆ:基調講演でお呼びしたJohn Hawthornさんは英語話者ですし、日本語のトークもちゃんとわかったほうがおもしろいだろうなとは思っていて。Johnに限らず、東京にいる英語話者のRubyistも楽しめる仕組みは入れたいなと考えています。専門の同時通訳は予算的に厳しかったのですが、テキストベースの機械翻訳ならばコスト面も合いそうだということで、リアルタイムで表示される仕組みを作っています。

── それは英→日も日→英も両方?

なっちゃん:日→英だけかな。

おしょうゆ:日→英だけ。せっかくこういう仕組みを作ってるし、日本語コミュニティと英語コミュニティの交流の場にもなるとおもしろいかなと思って、Tokyo Rubyist Meetupの方面なんかにも声をかけてみたりしてます。

── 配信とか録画とかも行うんですか?

おしょうゆ:録画はする予定です。配信はちょっと無理かな。

── 録画はどういった体制ですか? 会場に備え付けてある?

なっちゃん:実行委員のてるふのくんが、録画・録音周りに詳しいので、彼にお願いする予定です。けっこうパワーでやっています(笑)。

── パワーだ。

やることに終わりはない……

チケットの売れ行き

── チケットの売れ行きはいかがですか?

なっちゃん:いまは99枚です。

── 目標は何枚ですか?

おしょうゆ:350人かな。

なっちゃん:うん、同じ認識。

── それに対して現在99枚というのは、2ヶ月前だとこんなもんなんですか?

なっちゃん:うーん、RubyKaigiの感覚で言うとここからたぶん増えると思う。けど250くらいになるんじゃないかなと思って。

── 350ではなく?

なっちゃん:いきたいけど、250ぐらいになるかもしれないとは思っています。

── じゃあ、このインタビューをきっかけに増えるといいですね。

なっちゃん:ほんとそうなんですよ。切に増えてほしいです。

おしょうゆ:トークの応募は最終日にワッと駆け込んできたので、チケットも近付いたらみんな買ってくれるんじゃないかなと思っています。

なっちゃん:あと、さっき言ったKaigi on Rails 2024事後勉強会で10枚くらい売れたんだよね。

おしょうゆ:そうそうそう。

なっちゃん:いろいろな場を使って、がんばって売っています。

おしょうゆ:RubyKaigiチーフオーガナイザーの松田さんには「そんなに心配しなくても」と言われてるんですけどね。

なっちゃん:松田さんには言われたね。松田さんが言っているなら、なんとかなるんじゃないかと思います(笑)。

おしょうゆ:でもやれることはやろうと。

なっちゃん:そうですね。

その後チケットの販売は順調で、インタビュー公開時点では225人以上の方に参加いただけそうです。

でも……もっと盛り上がってほしい! 350人めざしたい! よろしくお願いします!(おしょうゆ)

ti.to

各所で宣伝行脚をする実行委員たち。右端はてるふのさん

開催に向けて不安なこと

── 開催に向けて不安なことは何かありますか?

なっちゃん:RubyKaigiのように運営ノウハウがあるわけではなく、実行委員長もすごく勢いで物事を決める人なので、当日になって「いろんなものが足りないじゃん」とならないのかが心配ですね。

おしょうゆ:これ、しっかりしろって言われてますか?(笑)

なっちゃん:言ってます(笑)。とはいえ、今のところ意外とうまくいってるよね。ありがたいことに、トークもスポンサーもたくさん来てくれたよね。

おしょうゆ:まあ、あの〜……、「とりあえずやれるんじゃない?」と言い切れるところが自分の良いところかなと思うので。会場決め、トーク募集、前夜祭といろいろあるけど、見切りで発車させるのが役割ということにしておこう。

なっちゃん:(笑)

おしょうゆ:そこは活かしてやっていこうと思っています。

── 実行委員長は不安なしということで良かったですか?

おしょうゆ:ないです!

なっちゃん:じゃあ、私だけ心配(笑)。

おしょうゆ:「できないよ」と言ってもらうことで、バランスが取れているので。

なっちゃん:そうですね。

実行委員長に不安なし!

お互いへの質問

── お二人どうしで質問とかありますか?

なっちゃん:「自分がやりたいカンファレンスにちゃんと近付けていますか?」というのは、やっぱり気になっています。これはもう、実行委員長が好きなことをやったほうがいいと私は思っているので、「おしょうゆがやりたいカンファレンスですか?」とは思っていますが、いかがですか?

おしょうゆ:そうですね。けっこう近付いている気がしますね。

なっちゃん:何パーセントぐらい?

おしょうゆ:パーセントで聞いちゃいますか?

なっちゃん:(笑)

おしょうゆ:企画を考えているといろいろとやりたいことが出てきて、さすがに全部はできないなと思うんですよね。それこそ、前編で話したミューザ川崎シンフォニーホールでやるのはできなかったので。とはいえ、もともとやりたかったコンセプトにはかなり近づけるんじゃないかなと思っています。やりきれれば!

なっちゃん:がんばっていきましょう。がんばりましょう。

── osyoyuさんからpndcatさんへの質問はありますか?

おしょうゆ:副実行委員長を頼んでおいて聞くことではないと思うんですけれども、なっちゃんはRubyKaigiのオーガナイザーもやってるんですよね。「これを一緒にやるのはどう考えても大変じゃない?」って思ってるんですけど。

なっちゃん:誘ったときに聞かなかったじゃん。

一同:(笑)

なっちゃん:あのときはRubyKaigiのオーガナイザーの仕事は何もなかったんですけれど、今はもちろん始まっていて、東京Ruby会議12の1月あたりとかは、RubyKaigiもそろそろ忙しい時期なんですけれど、任されたので、RubyKaigiも東京Ruby会議12もがんばりたい気持ちです。

おしょうゆ:イベントをオーガナイズからやっていると楽しいしね。

なっちゃん:楽しいんだよね(笑)。楽しいから、良くないよね。

おしょうゆ:自分の好きなようにできるって、こんなにおもしろいことはないよね!

なっちゃん:それ! それは周りがいるからだと!

一同:(笑)

なっちゃん:それはもうみんなに感謝したほうが良いです。

おしょうゆ:(笑)。いつもありがとうございます。すみません、いろいろわがまま言って。

なっちゃん:いえ、大丈夫です。おしょうゆのやりたいようにやりましょう。これは本当に。

このインタビューの写真はなっちゃんが大きな箱に乗った状態で撮影されました

参加者の方へのメッセージ

── そろそろインタビューの締めに入ろうと思います。

東京Ruby会議12には、どういう方々に参加してほしいですか?

なっちゃん:RubyKaigiとかKaigi on Railsが好きな人はもちろん来てほしいんですけれど、今回はせっかく東京……ではなく鶴見で地域Ruby会議をするので、気軽に参加してほしいなと思っています。おしょうゆがどんなトークが来てほしいかをさっき言ったnoteに書いて、RubyKaigiともKaigi on Railsとも違うプロポーザルがたくさん来ているので、また新しい体験ができるんじゃないかなと思っています。

おしょうゆ:Rubyと暮らしている内容を聴きたいと書いたら、自分は想像もつかなかったような「暮らし」のプロポーザルをたくさんいただきました。「こんなことにRubyを使ってるんだ、それは他の言語のほうがいいのでは?」みたいな(笑)。

なっちゃん:いたいた(笑)。

おしょうゆ:いやでもね、これがすごくいいなと思って。

きっとみんなRubyがすごく好きで、Rubyの可能性を広げてる人たちだと思うんです。なので、Railsをバリバリ書いているような人も、意外なRubyの一面を見られて楽しめる場所になるかも、と思っています。

── まだチケットを買ってない人、買うか迷ってる人に向けて、背中を押すようなメッセージをください!

なっちゃん:9年近くぶりの東京Ruby会議です!! このあと9年、やらないかもしれない。なのでぜひ来てほしいです!

おしょうゆ:次があるとは限らないからね。

なっちゃん:次があるかわかんないよね。

おしょうゆ:ぜんぜん持続性のある運営をやっていないので(笑)。次があると思わないでほしいのと……

── のと?

おしょうゆ:技術的にもしっかり満足できる会議になるはずなので、一日Rubyに浸りにきてほしいですね。RubyKaigiやKaigi on Railsとも一味違った内容です。そしてチケットも3,000円と、ちょっとお手頃、であってほしい。学生は無料です!

── タダ同然ですね!

おしょうゆ:立場として、タダ同然とは言えないけれども(笑)。

── 最後に、読者の方や参加者の方へのメッセージをお願いします。

なっちゃん:東京Ruby会議12、絶対楽しいのでマジで来てほしいと思ってます。

おしょうゆ:ぜひ現地に来て、現地の熱量を味わい、また熱量を高めてくれるとうれしいです。やはりなんと言っても「会議」ですから。鶴見で待ってます!

── 本日はお時間ありがとうございました。

おしょうゆ・なっちゃん:ありがとうございました。みんな来てね!

最後に一挙告知です。

まずは本編のチケットのご案内。以下URLよりどうぞ。1月18日、鶴見で待ってます! ti.to

そしてインタビューでも話題にあがった前夜祭。SmartHRからも2名発表しますので、横浜の前日は東京で! connpass.com

さらに、今週の12月27日19:30から「東京Ruby会議12 vs PHPカンファレンス小田原〜オーガナイザーが語る見所と裏側〜」をオンラインで開催することになりました! 同じ神奈川で開催される地域カンファレンス同士、運営のヒミツやスタイルをぶつけ合う会になりそうです(何を隠そう、「プロポーザル募集を締めるのそんなに前なんだ」と驚いたのはぺちこん小田原のこと)。オンラインなので、お気軽にどうぞ! forkwell.connpass.com

よろしくお願いします!!(おしょうゆ、なっちゃん)

インタビューありがとうございました!

この会場が埋まる日を楽しみにしています!

写真:nanseki、inao