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「タレントマネジメントができるプロダクト」へ〜人事評価PMの4年間の軌跡とこれから〜

はじめに

こんにちは! SmartHR プロダクトマネージャーの @ninomiya です。

私は 2021 年 4 月に SmartHR へ入社し、2025 年 4 月で5 年目に入りました。 入社当時はまだ仕様検討中だった「人事評価」プロダクトにアサインされて以来、現在まで担当しています。

以前に比べPMが増えてきたこともあり、新しいプロダクトに挑戦しているメンバーも多い中、一貫して同じプロダクトを担当している点は珍しいと思います。

この記事では、「人事評価」プロダクトの歩みとともに、プロダクトマネージャーとしての私自身の成長を振り返ります。 文中に出てくる「強くてニューゲームするには?」は、「もし今あらためて作るとしたらどうするか?」という思考実験です。 過去の進め方が誤っていたという意味ではなく、成長した自分から見てこうしたほうが良かったかも、という観点でお読みください。

タレントマネジメント領域の PM はどんな業務を行い、どのような成長環境があるのかそんな疑問をお持ちの方の参考になれば幸いです。

SmartHRの目指すタレントマネジメントとは

SmartHRではタレントマネジメントを「従業員に投資し、能力発揮・成長してもらい、企業業績を向上させる」ための手段と捉えています。人が育ち、企業としてのケイパビリティが向上することが重要だと考えているためです。 私たちは人事だけでなく現場の管理者が主体的に人材育成に取り組めるような、使いやすいタレントマネジメントシステムを提供することを目指しています。

タレントマネジメントにおける人事評価とは

人事評価の目的は複数ありますが、その一つとして「社員の活用と育成」があります。目標設定と評価によって個人の目標やキャリアパスを明確化させ、従業員の能力・貢献度を可視化します。それにより個々の成長と組織目標の達成を結びつけ、組織全体のパフォーマンスを向上させる役割を果たします。 目標、評価コメント、評価記号、周囲の評価など、人事評価を通して蓄積されたデータはその人の能力や実績を把握し、適切な人材配置や育成計画の策定のための重要な要素の一つになります。

人事評価機能について

人事評価業務には、評価シートの作成・配布・進捗管理・回収・集計といった「前工程」と、評価を収集してから行う甘辛調整や報酬検討といった「後工程」があります。 SmartHR の人事評価機能は、これら従業員の目標設定や評価査定に関わる業務を効率化し、タレントマネジメントができる評価データを蓄積・活用できるプロダクトです。

プロダクトと個人の歩み

1 年目(2021 年):プロダクト立ち上げ期

プロダクトの歩み

入社時点では、人事評価機能は仕様を検討している段階でした。顧客ヒアリングを重ねて業務を理解し、課題を特定し、MVP を定義しました。 開発フェーズでは、週次で完成した機能を社内の人事メンバーにレビューしてもらい、適宜軌道修正しながらリリースまで進めました。

個人の歩み

前職では toC のエンタメ系サービスを担当しており、業務用 SaaS は初経験でした。「ユーザー理解が不可欠」という共通点はある一方で、業務用 SaaS は業務プロセスが複雑で、顧客ごとに固定化されたフローをシステムでどうシンプルに実現するかがカギになります。 そこで入社直後は、人事評価ドメインの理解に集中しました。過去のヒアリングの録画や議事録を読み込み、各社の評価制度・業務フローを図式化しました。共通課題と個社特有課題を把握でき、MVP 検討にも役立ちました。

強くてニューゲームするなら

MVP のターゲットユーザーをさらに限定する
多様な評価制度(MBO、OKR など)を初期段階から網羅しようとした結果、初期段階から仕様の検討範囲が大きくなりました。ターゲットを絞り込み、機能をシャープにしてから横展開しても良かったかもしれません。

2 年目(2022 年):プロダクト導入期

プロダクトの歩み

MVP リリース後、未提供だった開発アイテムに優先順位を付けて対応。 人事評価は「自社の評価制度に対応できないと使えない」と判断されがちなため、対応可能な制度を増やしつつ効率化する機能を重点的に開発しました。

個人の歩み

MVP でスコープアウトしたアイテムと顧客要望が山積みとなり、何から手を付けるか迷う状況に。

  • プロダクトビジョンと NSM(North Star Metric)を策定

  • PMM と協力し、ユーザーストーリーマップへ要望をマッピングし課題重みを定量化

これにより課題を可視化し、優先順位付けが容易になりました。

強くてニューゲームするなら

幹・枝・葉を意識した優先順位付けをする
顧客の切実な声を受け止めすぎたあまり、「nice to have」機能にも着手してしまった面があります。 「幹=多くの企業で共通」「枝=一部の企業で共通」「葉=ごく少数」のフレームで優先順位を付けられれば、作りすぎを防げたのではと思います。

3 年目(2023 年):プロダクト拡大期①
〜垂直から水平へ - マルチプロダクト連携と土台の強化〜

プロダクトの歩み

人事評価のニーズ拡大に伴い、開発体制を 2 チームに拡大。提供企業の規模を広げるため、前工程のカバー範囲を増やす一方で、大企業でも使えるよう処理時間の最適化にも取り組みました。 タレントマネジメント機能が増え、評価データを他プロダクトへ連携する「マルチプロダクト化」が加速しました。

個人の歩み

権限委譲

もともと私は業務を振るのが苦手で、業務を抱え込んでしまいチームのボトルネックになることが増えていました。そんな中、2 チーム体制+第二子の育休取得で完全にキャパオーバーに。先輩PMから「PMとしてやるべきことと、他の人でもできることを切り分けて積極的に移譲していったほうがいいよ」と言われ、目標・ロードマップ・Why/What は自分が担い、How をチームに委譲しました。これまでは「自分の責任=自分で最後までやること」だと思っていて業務を振ることができなかったのですが、「自分の責任=プロダクトを成長させること」と再認識しました。

マルチプロダクト化への対応

これまでのプロダクト開発は、垂直でどんどん機能を立ち上げて人事業務フローをカバーしてきましたが、この時期から「プロダクト連携」の取り組みが進み、他のプロダクトのロードマップや実現したいことを意識した開発が求められるようになりました。そのため、PM間での仕様のすり合わせやスケジュールのすり合わせといったプロジェクトマネジメントを行うことが増えてきました。

強くてニューゲームするなら

業務フローのバリューチェーンを先に通す
前工程の開発に注力した結果、人事評価制度のカバー範囲が広がった一方で、甘辛調整の機能といった後工程業務フローの大きなニーズが後手に回ってしまいました。前工程の柔軟性に一定の線を引き、早期に後工程へシフトすべきだったと感じています。

4 年目(2024 年):プロダクト拡大期②
〜人事評価のバリューチェーンを繋ぐ - 新領域への挑戦とチームの進化〜

プロダクトの歩み

バリューチェーン全体をカバーするため、後工程や 360度評価・フィードバックなど新領域に着手。タレントマネジメント新プロダクト立ち上げによるメンバー異動も頻発し、チームビルディングと並行して開発を進めました。

個人の歩み

後工程の開発にあたっては不確実性が高いため、業務に対する解像度をPMだけでなくチームメンバーで上げていく必要性がありました。またPMがディスカバリーしてPRDを書いて〜とやっていてはリードタイムがかかってしまうため、チームでディスカバリーをするという新しい取り組み行いました。(詳細は別記事開発メンバー全員で新規開発アイテムのディスカバリーに挑戦した話をご覧ください)。 また、この時期にあった大企業導入プロジェクトでプロジェクトマネジメントの重要性を痛感しました。「導入を成功させる」ために要件定義からスケジュール合意、ユーザーテストまで綿密に管理しました。今までの開発のやり方とは異なるためチームでもドキドキしながら取り組んでいたのを思い出します。

強くてニューゲームするなら

長期開発でも目的を見失わない
大規模機能で遅延が発生した際、「重要だから進める」だけで突き進み、結果的に 1 か月超の遅延に。予実がズレた時点で立ち止まり、達成したいことを再確認し、スコープの調整など再計画すべきでした。

5 年目(2025 年)〜:これから
〜「タレントができる人事評価」の実現へ - AI活用とPMの進化〜

プロダクトの歩み

引き続き、人事評価の業務フローの拡大をしていきつつ、AIといった新しい技術を活用しながら、タレントマネジメントができる人事評価を目指し、タレントマネジメントプロダクト全体としてお客様に価値を提供していきたいと思います。

個人の歩み

最近感じていることとしては、ChatGPTなどのAIによってPM業務の質と効率性が上がるにつれて、人間としてのPMに求められる能力も格段に上がっていると思います。 とはいえ「こうしたい」といった意思を示したり決断するのは最終的に人間であることには変わりないので、技術をうまく活用しながら人としての意思決定力を磨きたいと思います。 また今期からチーフとしての役割も任せてもらえることになったので、マネジメントとしても経験を積んでいきたいと思います。

最後に

人事評価プロダクトの立ち上げから 5 年間、私は「ユーザーの業務フローを深く理解し、再現すること」と「プロダクトを成長させ続けること」の両立に挑み続けてきました。

  • 立ち上げ期は、MVP を定めるために顧客の声に徹底的に向き合い、プロダクトの核を磨きました。

  • 導入期は、要望の山に向き合いながらも「幹・枝・葉」で優先順位を付ける学びを得ました。

  • 拡大期①では、権限委譲とマルチプロダクト化を通じて「一人ではなくチームで成果を上げる」PM へと変化しました。

  • 拡大期②では、後工程・360°評価など新領域に挑戦し、プロジェクトマネジメントの重要性を痛感しました。

  • これから は、AI をはじめ新しい技術を取り込みながら、タレントマネジメント全体でお客様にさらなる価値を届けていきます。

SmartHRのプロダクトマネージャーは、正解のない課題に対して常に学び続け、チームと共に最適解を探し続ける仕事です。この記事が、タレントマネジメント領域の PM に興味をお持ちの方や、これから同じ道を歩む方のヒントになれば幸いです。

SmartHR のミッションは「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」私たちと一緒に実現しませんか?

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