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ドメインエキスパートと歩むプロダクトマネジメント —— 年末調整機能の担当者にインタビュー

SmartHRの労務領域のプロダクトマネージャー(以下、PM)たちは、労務領域のプロダクトを扱いながらも、実はもともと労務管理業務を専門にしていたひとはまったくいません。そんな私たちが労務領域のプロダクトマネジメントをやれているのは、労務領域のエキスパートである、ドメインエキスパート(以下、ドメエキ)のおかげです。

参考:ドメエキが書いた記事
tech.smarthr.jp tech.smarthr.jp

PMとドメエキはどのように協力し合っているのか。今回は、年末調整機能を担当するPMのhajiさんと、ドメエキのnakajiさんのおふたりにお話を伺いました。お互いのスキルや経験を補完し合うだけでなく、同じ年末調整機能をリードするパートナーとして、おふたりが協力し合っている様子が伝われば幸いです。

参考:年末調整機能に関する記事
note.com

ドメエキがPMのキャッチアップをサポート

—— まずは、それぞれ簡単な自己紹介をお願いします。

haji:PMのhajiです。入社前は、通信業界で研究職をやって、次に自動車業界でエンジニアをやって、気がついたらだんだんと仕事がPMに寄ってきて…… というかんじです。SmartHRには2023年に入社して以来、労務領域の年末調整機能を担当しています。

nakaji:ドメエキのnakajiです。前職はデパートの会社で、最初は接客、次に労務管理、最後は社内SEとして営業基幹システムの構築を担当していました。SmartHRには2022年に入社して、いまは年末調整機能をメインに見つつ、ドメエキとしてプロダクト組織に広く関わっています。

—— ありがとうございます。さっそくですが、PMのhajiさんは入社前から労務管理という領域に土地勘はあったのでしょうか?

haji:いえ、まったくありませんでした。それでも、SmartHRが掲げる「well-working」に惹かれて応募したんです。入社が決まったあとは、さすがにわかってなさすぎもまずいかなと思って、労務管理に関する本を読んでみましたが、むずかしくてむずかしくて……。

—— 労務領域でPMをやっている皆さんもそんなかんじですよね。そんなhajiさんが入社されることになったあと、ドメエキのnakajiさんの方ではなにかキャッチアップのための準備はされていらっしゃったのでしょうか?

nakaji:もともと新しく年末調整機能の開発チームに入る方向けに、「年末調整とはなにか」「SmartHRの年末調整機能はどのように使われるか」などを説明した資料は準備していました。また、hajiさんが入社したころはちょうど、チームで年末調整の理解促進のための勉強会を開催していたので、その資料も役に立ったと思います。

参考:新しく入られた方向けの資料の一部抜粋

haji:カスタマーサクセス向けの勉強会資料もありましたよね。あれもすごくわかりやすかったです。

nakaji:そうでした。ひとによって必要とする情報の範囲や深さが異なるので、資料はいろいろあります。

—— なるほど、先んじてキャッチアップのための資料を準備されていたんですね。そしてhajiさんは入社されたあと、どのようにキャッチアップされていったのでしょうか?

haji:まずは用意してもらった資料にいろいろ目を通しました。それとわからない用語は自分でググってみたり。ただ、それでもわからないことはいっぱいあったので、都度都度nakajiさんに声をかけて教えてもらいました。最初は「収入」と「所得」のちがいもよくわかってなかったんです。それに、年末調整という制度にある程度詳しくなっても、年末調整機能というプロダクトとしてなぜこの仕様になっているのかわからないことも多く、経緯含めてたくさんのことを教えてもらいました。

正直いまでもわからないことはたびたびあるのですが、入社したころに比べるとだいぶキャッチアップできたなと思います。

nakaji:去年、ぼくが育休で1ヶ月いなかったときもだいじょうぶでしたしね。

haji:ありましたね! 年末調整の実務が盛り上がっていて問い合わせが多い時期だったのですが、無事に乗り越えられてほっとしました。

nakaji:あれで、もうぼくいなくてもだいじょうぶそうだなって思いました(笑)。

haji:いや、さすがにそれはない(笑)。

—— 年末調整というドメインのキャッチアップは順調だったようですね。

ドメエキは法改正起点の開発要件を固め、PMはプロダクト全体の優先度やスケジュールを決める

—— 続いて、キャッチアップ以外の協業について教えてください。ドメエキのnakajiさんは、日頃どのようにPMと関わられていますか?

nakaji:法改正起点の仕様追加・変更が必要なときに、ドメエキが主導して要件定義までやっています。そしてプロダクト全体でみたときの優先度決めやスケジューリングは、PMがやっています。

もう少し具体的に言うと、年末調整に関する法改正、例えば去年2024年で言えば、定額減税のような法改正があったとき、まずドメエキがそれがどんな法改正なのかキャッチアップします。その上で、既存の仕様で足りない部分があるか、あるならどのような仕様追加・変更が必要かなどを整理します。プロダクトの要件としてドキュメントに整理するときは、エンジニアも巻き込んで仕上げていきます。

PMのhajiさんとは、法改正があることを把握したときや、ぼんやりとでも要件が見えてきたときなど、こまめにコミュニケーションをとって、いつまでにどこまで要件を固めておくかをアラインするようにしています。

優先度やスケジューリングはPMであるhajiさんが行なっていますが、そのために必要な情報をドメエキから提供する、というイメージですね。

—— すごい、そこまでドメエキがやるんですね! あれ、そうなると逆にhajiさんはなにを……?

haji:さすがにまだ仕事ありますよ(笑)。法改正起点ではないような、使い勝手に関するところはぼくが主導することが多いです。例えば去年だと、従業員が年末調整情報の提出後に自分で修正できるようになる「引き戻し機能」の開発はぼくが主導しました。

【年末調整】従業員が提出内容を自ら修正・再提出できる新機能

とはいえ、こういう使い勝手改善の開発でも、nakajiさんの労務の実務経験を踏まえて、この仕様についてどう思いますか? みたいな壁打ちはよくやらせてもらっています。

あと使い勝手と言えば、nakajiさんにはドメエキ目線でみた改善したいリストを作ってもらっていますね。

nakaji:ありますね。ドメエキからみて「いけてないな〜」と思うところはリストアップしています。さすがにその年の法改正起点のものほど優先度ではないですが、いつか改善しようと狙っています。

参考:ドメエキnakajiさんがまとめた、社外秘の課題リスト

haji:ぼくはPMとして、ドメエキの改善したいリストや、法改正、会社の内部環境、競合などの外部環境を踏まえて、中長期的にいつなにをするのかを決めています。

—— なるほど〜。

nakaji:ドメエキすごいって話が多くなってきたのでバランスを取った話をしますね(笑)。hajiさんとお仕事していて感じるのは、「Why」を伝えてチームを巻き込んでいくのがすごくうまいということです。年末ごろに、次の1年の開発方針みたいなのを決めて共有してくれるのですが、これまではこういうことをやってきたけど、いまはこういう状況になってきたから、次は中期的にこういうことをやっていこう、というのをすごくわかりやすく伝えてくれます。あれがあるから、開発チームのみんなも納得感を持って自律的に動けているのではないかと思います。

haji:フォローありがとうございます(笑)。そうですね、広く情報を集めて、整理して、「Why」をしっかり伝えるのはかなり意識しています。情報の整理のところでは、nakajiさんによく壁打ちさせてもらっています。

ドメエキは温度感を伝え、PMの意思決定を後押しする

—— 伺っていると、かなり密というか、インタラクティブなコミュニケーションが多そうですね。協業する上で、大事にされていることはありますか?

haji:すでにお察しかもしれませんが、任せるところは思い切ってお任せすることです。もちろんPM自身も、担当するドメインのキャッチアップが重要であることは承知しています。しかし、やるべきはキャッチアップすることそのものではなく、価値を最大化することだと思っています。なので、ほかにやるべきだと思うことがあれば、法改正対応の要件定義などは思い切ってお任せする、というのは意識しています。定期的に話す時間はとっているので、迷っているところは適宜相談いただくかんじですね。

nakaji:お任せされている感はとても感じますね(笑)。とはいえ、最終的にはPMが意思決定をすることが多いので、ドメエキとしては、意思決定に必要な情報をしっかり伝える、ということは意識しています。法改正に対応するときも、どこまでをプロダクトで対応して、どこからはお客様の運用でカバーしていただくか、といった線を引く必要があります。そんなとき、労務管理の実務の経験者として、最低でもここまではやらないと価値が足りないですよ、ということはしっかりお伝えするように心がけています。

haji:そこはいつも助かっていますね。温度感もセットで伝えていただけるので、意思決定のときにすごく後押しになっています。

PMとドメエキの関わり方は固定的ではない

—— ここまで年末調整機能のことを伺ってきましたが、ドメエキであるnakajiさんは、年末調整機能以外のことも担当されることがあるんですよね? ほかのPMの方とはどんな協業をされているのか伺ってもいいですか?

nakaji:はい。最初にドメエキの体制について補足しておくと、ドメエキはいま社内に5人います。年末調整機能はぼくが担当していますが、勤怠管理機能や届出書類機能にも担当がいます。ほかの機能は特定のだれがついているというわけではなくて、案件があればその都度連携しています。

ドメエキの中でも、ぼくは特に税制改正周りをみていて、年末に出る税制改正大綱を見て、年末調整に限らず、SmartHRのプロダクト全体への影響を調査します。そして影響があるようなら、影響のあるプロダクトを担当するPMに情報をインプットしにいきます。

去年(2024年)だと、定額減税の影響範囲を調査したところ、基本機能にも影響があることがわかりました。基本機能は、ふだんから密に関わりがあるプロダクトではなかったので、関わり方を決めるところから担当PMと話しました。その結果、ぼくがこの件のプロジェクトマネージャー的に動いた方がよさそうということになり、要件定義以外にも、ヘルプページ作成を主導したり、社内への情報共有、社外からの問い合わせ対応などを、さまざまなひとを巻き込んで推進していきました。

—— なんと、プロジェクトのリードまでされたんですね。

nakaji:法改正の中身がややこしいものだったので、PMよりもドメエキがやり切ってしまった方がよさそうという判断でした。ドメエキがここまでプロマネ的な動き方をすることは珍しくて、もっと軽いものであれば、PMに情報をインプットして、あとは相談に乗るだけ、ということもよくあります。

—— PMとドメエキの関わり方は固定的ではなく、状況に応じて変化していることがよくわかりました。

ドメエキがいるから、PMが孤独を感じずに意思決定できる

—— 最後にhajiさんから、ドメエキといっしょに仕事ができる良さ!みたいなお話をいただけますか?

haji:一番は、気軽に相談ができる相手がいる、ということですね。年末調整は制度自体にややこしいところが多く、内容によっては、ほかのPMに相談しようと思っても、気軽にとはいきません。コンテキストの共有からしっかりやる必要があるので。

年末調整に詳しいひとという意味では、社内の労務担当者に相談するという手もありますが、それはそれでプロダクトマネジメントに馴染みがある方々でもないので、気軽に壁打ち、という感じにもなりません。

一方で、ドメエキのnakajiさんは、年末調整に詳しく、かつプロダクトマネジメントに日頃から密に関わってもらっているので、低いコストでフラットに相談できます。

特に、インシデント対応のようなスピード感が求められるときに相談できるのは、精神的にほんとうに助かっています。結果的に同じ考えであることもよくあるのですが、「ぼくもその案がベターだと思います」と背中を押してもらえるだけでも、孤独を感じずに意思決定できます。

もちろんプロダクトによって、ドメエキとの関わり方はそれぞれちがうのですが、社内にドメエキが5人もいる環境は、ほんとうに恵まれているなと思っています。

もし「SmartHRのPMに興味あるけど、労務なにもわからなくて心配〜」って方がいるなら、「ドメエキがいるから、キャッチアップする気持ちがあればだいじょうぶ!」とお伝えしたいです。ここは、PMがより価値を大きくすることに集中できる環境だと思います。

—— おふたりともありがとうございました!

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