こんにちは!QAエンジニアのtoyoseaです。
この記事では、2025年4月入社の新卒0期生のプロダクトエンジニアを対象に行なった品質保証部のオンボーディング施策についてお伝えします。
品質保証部のオンボーディング施策について
2025年4月、SmartHRに新卒0期生(プロダクトエンジニア5名)が入社してくれました。
これを受けて、品質保証部では「品質について考える会」や「テスト設計」に関するオンボーディング施策を実施しました。
背景としては、新しく入社された方に品質保証部との関わり方や今後の方針について知ってもらった上で、QAについての理解を深めてもらうためです。
そして、本オンボーディングを通して所属する開発チームにおいて次が達成できればよいと考えました。
メンバー同士で「QA」について共通言語で話せるようになり、ズレを最小限にできる
開発サイクルを回していくうえでのテスト設計の基礎を理解し、自ら手を動かして取り組める状態になる
上記を達成するためにオンボーディングは大きく分けて、
座学(オンライン)
ワークショップ(オフライン)
の2部構成で実施しました。
座学について
座学は品質保証部のtarappoが担当しました。
品質保証部では、2025年からプロダクトエンジニアの中途入社の方向けのオンボーディングとして次の座学を実施しています。
(1)品質保証部についての話
(2)QA周りについての話
(1)は、品質保証部を知ってもらう目的で、現在の部の体制や「目指す姿」、そして今期のミッションなどについて説明しています。
(2)は、QAやテストがどういったものであるかを知ってもらう目的で、社内展開しているドキュメントである「テストっていつするべきもの?」をもとに「いつでもテストをする重要性」について話しています。
いずれも中途入社のプロダクトエンジニアを対象としたコンテンツであるため、QAやテストの基礎的な知識がある前提でオンボーディングを実施しています。
そのため、新卒の方向けだと情報が不足しており、本オンボーディングの目的である「メンバー同士で「QA」について共通言語で話せるようになり、ズレを最小限にできる」を目指すにはコンテンツ不足と判断しました。
そこで、既存のコンテンツを拡充し、次の4つを用意しました。
(1)品質保証部についての話
(2)テストっていつするべきもの?
(3)QAとは?
(4)不具合を見つけられるところで見つける重要性
それぞれの概要は次のとおりです。
(1)新卒の方はQAエンジニアと一緒に仕事をした経験がないため、QAエンジニアという職種についてあまり知りません。また、世間的にQAに関わる職種は多種多様です。そこで、従来の話に加えて弊社におけるQAエンジニアという職種について説明しています。
(2)から(4)はQAに関する昨今の話のドキュメントを用意しました。
まずは外観を知ってもらうことが大事というところから、QAにおける外観といえることについて説明をしています。
1コンテンツあたりの所要時間は30分で、1週間の間に4コンテンツの説明を実施しました。 そして、これらの座学のあとにオフラインでのワークショップを開催しました。
ワークショップ前の準備
今回、オフラインのワークショップとして、
「品質とはなにか?」を一緒に考える
架空のプロダクトのテスト設計
の二部構成で実施することにしました。
ワークショップをする際には、実際に品質について考えたり、テスト設計技法を使って考えることができる具体的な題材があったほうが学びが深くなると思います。
そこで簡易的な架空のプロダクト「e-learning管理システム」のUIモックと仕様を作成することにしました。
e-learning管理という題材にした理由は、SmartHRのプロダクトと似たようなBtoB向けプロダクトを意識したためです。また、e-learningの一覧表示、作成、編集、削除のような一連の動作が行なえ、短時間でも把握がしやすいシンプルな仕様が実現できると思ったためです。
ワークショップ1:「品質とはなにか?」を一緒に考える
このセクションでは、このあとのワークショップ2でも使用する架空のプロダクト(e-learning管理システム)を前提に、「品質とはなにか」について考えてもらいました。
担当は品質保証部のkaomi、t.leafが行ないました。
新卒メンバーと直接顔を合わせるのはこれが初めてなうえに、オフラインのワークショップはめったにない機会のため、二人とも緊張していました。
しかし新卒メンバーが積極的に参加し、意見交換をしてくれたことで、終始和気あいあいと進められました。
「品質」という言葉はそのままだと大変曖昧です。 そこで、最初はあえて前提条件などを提示せず、お題の架空のプロダクトを見て考えられる「品質」を自由に発散してもらいました。 まずは「品質とはなにか」に思いを馳せ、自分の言葉で表現してみることが大事だと思ったからです。 実際に下記のような、「品質とはなにか」に対するいろいろな意見が出ました。
ユーザーにとって使いやすいこと
プロダクトが安定していること
プロダクトが安全であること
コンテンツが充実していること
品質は「主観的なもの」としている理由
事前の座学のおさらいも含め、オンボーディングの中では「品質は主観的なもの」として解説しています。
品質には公的な指標も存在しており、もちろんそれも一定の基準としては大切です。
しかしそれをクリアしているからといって、必ずしもユーザーや関係者が満足するとは限らないという話をしました。
プロダクトによって「品質」の定義は異なり、人や立場によっても欲しいものは異なるかもしれません。
また、リスクの取り方や何を重視するかも業界やプロダクトの性質によって違います。
それらをどう分析してどこを守るか判断できるようになることも、品質保証の大切な視点です。
ユーザーの立場で品質を考える
ここまでの内容をふまえて前提条件を追加し、改めて品質について考えてもらいました。
開発者やビジネスオーナーなど、立場によって「良いプロダクト」は変わってきます。
ここでは「ユーザーの視点」としてプロダクトの「管理者」と「受講者(コンテンツの利用者)」を提示し、品質について考えていきました。
そうすることで、先程よりも具体的な内容が意見として出るようになりました。
途中でハプニングがあり、本物の紙の付箋にペンで記入して貼り出すという想定外の場面もありましたが、それも含めて楽しいワークショップになりました。
次のワークショップへ
その後、ソフトウェアテストの7原則を紹介してワークショップ1は終了となりました。
このセクションでは考え方を話しただけで、品質保証や品質に対するわかりやすい答えやフレームワークを提示していません。
これらの考え方をもって、どう実務として活かすのか。
次のワークショップへと続きます。
ワークショップ2: 架空のプロダクトのテスト設計
このセクションではe-learning管理システムという架空のプロダクトを対象に、実際にテスト設計を行なってもらいました。
担当は品質保証部のeto、Sen、toyoseaで行ないました。
ワークショップ1と同じく、私たちもオフラインでのワークショップを実施する機会はめったにありません。テスト設計を知らない状態で「テスト設計をしてください」と言われても新卒メンバーが困ってしまうことを想定して、事前にテスト設計技法の学習を促しました。
テスト設計技法について事前学習の促し
事前学習として新卒メンバーに著書『ソフトウェア技法練習帳』で取り扱っている下記の4つの技法について、特定のページを選んで読んでもらいました。
同値分割法
境界値分析
デシジョンテーブル
状態遷移図
これらのテスト設計技法は実際の業務でも頻繁に活用するため、事前に基礎知識を身につけておくことで、当日のワークショップを経て理解が深まることを期待しました。
ワークショップ当日
ワークショップでは、新卒メンバー同士で相談しつつe-learning管理システムのUIモックや仕様のドキュメントを見ながら、
仕様の疑問点
テストすべきポイント
e-learning管理システム全体を俯瞰してみてリスクがありそうな点
を付箋に書き出してもらいました。
新卒メンバー同士が積極的に意見を出し合い、活発な議論が行なわれました。
たとえば仕様の疑問点では「パスワードのリセットの導線がないのでは?」といった要件に言及するものが出たり、「e-learningのコンテンツ名やコンテンツURLの最大長は?」といった境界値分析に関連するものも出ました。
一方で、テストすべきポイントでは「SQLインジェクション対策」といったセキュリティに関するものや、「e-learningのコンテンツ作成画面で保存ボタンを連打した時に重複して保存されないか」などの様々なテスト観点が書き出されました。
ワークショップの後半は新卒メンバーが出した付箋に対して現場のQAエンジニアからポジティブ&ギャップフィードバックを行ないました。
最後には新卒メンバーからのワークショップの振り返りとして「実際のテスト設計の方法を学べ、こういったテストの考え方でやっていけると障害を防げそう」といった前向きな感想が多く寄せられ、ワークショップの手応えを感じられました。
ピンク付箋:仕様の疑問点
緑付箋:テストすべきポイント
オレンジ付箋:e-learning管理システム全体を俯瞰してみてリスクがありそうな点
アンケート結果
オンボーディング終了後、新卒メンバーに向けてアンケートを実施しました。
良かった点としては座学やワークショップで取り扱った内容についての理解度が高かったことや、今後の業務で活かせそうという評価があったことです。
一方で改善点としては、一部のワークショップの時間について「長い」というフィードバックがあり、今後は時間配分の見直しが必要だと感じています。
また、「より実践的なテスト技法を体系的に勉強したかった」という声もいただいたので、テスト技法に関してDeepDiveできるような学習プログラムも検討したいと考えています。
これらのフィードバックは、来年のオンボーディング施策の改善にしっかりと活かしていく予定です。
おわりに
ここまで2025年の新卒0期生のプロダクトエンジニアに向けて、品質保証部で実施したオンボーディングについてお伝えしてきました。品質保証部としてはじめての取り組みでしたが、ユニットを超えた有志のチームでオンボーディングコンテンツを考えていくことで、お互いの「品質」についての考え方やテスト設計の勘所を知れて、我々にとっても有意義な時間になりました。
SmartHRは来年以降も新卒のプロダクトエンジニアを採用していく予定ですので、来年以降もブラッシュアップした形で品質保証部のオンボーディングを実施できればと思います。
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