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「オープンセミナー2025@岡山」に協賛・登壇しました #OSO2025

こんにちは!岡山県出身・在住の井上(a-know)です。SmartHR の労務プロダクト開発本部内にある CRE 部でプロダクトエンジニア(チーフ)をしています。

このたび SmartHR は、去る10月18日(土)に開催されました「オープンセミナー2025@岡山」に協賛をしておりました。

ゴールドスポンサーとしてSmartHRのロゴが大きく掲載されたスライドが投影されている様子。
協賛しました!

協賛のきっかけとしては、私がもともとこのイベントでの登壇のお誘いをいただいていたから、というものだったのですが、私の地元である岡山の、ITコミュニティを盛り上げるためのこのイベントで、自分の所属する SmartHR が協賛企業として名前を連ねられたことは、とても嬉しく、会社に対しても感謝の気持ちでいっぱいです。(私は、オープンセミナー2020@岡山の実行委員長を務めていたこともありますので、なおさらです)

ちなみに “オープンセミナー” とは、2003年より中四国の各地域で年に1回開催されている、IT技術者向けの非営利の無料セミナーです。香川・岡山・徳島・広島・愛媛それぞれで開催されており、企画・運営は各地域のITコミュニティのボランティアメンバーが手がけられています。

オープンセミナーとは?を壇上で説明する実行委員長とスライドの写真です。オープンセミナーとはIT技術をテーマにした無料のセミナーで、香川・徳島・愛媛・岡山・広島の各地域で開催されており、岡山では2008年から毎年開催されています。
実行委員長によるオープンセミナーに関する紹介

というわけで今回は、この「オープンセミナー2025@岡山」に登壇・参加してきたことのレポートを書きたいと思います!

開催テーマは「情熱」!

毎年の開催ごとにテーマを置いているオープンセミナー岡山(OSO)なのですが、今年のテーマは「情熱」というものでした。

このテーマに対する今年の実行委員長の思い・考えが公式ページに掲載されていましたので、以下に引用します。

今年の OSO のメインテーマである「情熱」は、私たち技術者が過去から持ち続けてきた、IT ひいてはものづくり全てへの情動や熱意を形容するものです。

多くの人が集ってトークを繰り広げる OSO の場では、これまで具体的な知見や意見の交換が行われてきました。その十余年におよぶ開催実績を眺めると、その場で話される話題も時代に合わせて変化してきたことがわかります。OSO 18回目の今回は視点を心の中へと移し、我々技術者の原点であるパッションについて、登壇頂く方々十人十色の切り口で語って頂く回にしたいと考えています。

情熱というテーマを語っていただくにあたり、今回は従前より技術者としての情熱を発信しつづけてきた方々に登壇頂きます。皆さんにとって親しみある分野から、まるで聞いたことのない事柄に至るまで、アツい思いとクリエイティビティが弾ける濃密な1日となることでしょう。聴講から懇親会にかけて、当日はどのような会話が繰り広げられるか私自身楽しみにしています。

https://okayama.open-seminar.org/ より引用

この実行委員長の思いの通り、当日のイベントは「情熱」に溢れた、とても素晴らしいものでした。その雰囲気はその日・その場にいなければなかなかわからないものであったとは思うのですが、そのごく一部でもみなさんにお伝えできるよう、以下に発表ごとに内容や感想などを書かせていただければと思います。

僕がやっていることで情熱のように見えているものがあるとすれば、それは / a-know(井上 大輔)

筆者であるa-know(井上)が登壇する様子の写真です。
登壇の様子

僭越ながら私がこのイベントのトップバッターを務めさせていただきまして、オープンセミナー2025@岡山はスタートしました。「僕がやっていることで情熱のように見えているものがあるとすれば、それは」というタイトルでお話をしました。

「情熱」というテーマを掲げる今回のイベントに登壇のお声がけをいただいた際、嬉しく、光栄に感じる一方で、実はピンと来ていない部分もありました。そこで私は、図々しくも実行委員のみなさまに対して、「私の何に “情熱” を見出されましたか?」というアンケートを取らせていただきました。

最初こそ、「どんな話をすることを求められているのか」を知るためにお願いをしたアンケートだったのですが、蓋を開けてみると、いただいた複数の回答には私自身も今まで気が付かなかったような共通項のようなものがありそうなことに気が付きました。

発表を終えた今でも、それが本当に “情熱” と呼べるものなのかどうかはわからないままなのですが、「他人からはそのように見えているもの」のいくつかを題材に、“情熱” を帯びるに至った道のりや考え方を、みなさまに聴いていただきました。

壇上で発表をしている様子の写真です。
壇上での様子

地元岡山・いわばホームでの登壇機会、ということもあり、個人的にはかなり踏み込んだ、というか赤裸々な話も多く含んでしまったため、申し訳ないのですが当日の資料については公開する予定はありません🙇‍♂️🙇‍♂️

仕様書や規格書などから見る、言語とその標準化の本音と建前 / 佐藤 弘崇 氏

二人目の登壇は、株式会社ドワンゴ/ZEN 大学教員予定者の佐藤さんより、「仕様書や規格書などから見る、言語とその標準化の本音と建前」という内容で行われました。

私は「人間が用いる言語とその変遷」に対して情熱があります。自然言語・プログラミング言語・数式、全て好きです。

人々は見よう見まねで言語を習得し、それが慣習として次の世代に真似されるわけですが、その過程で言語内には微妙な「差」が生まれます。これは不便なので、意思疎通の齟齬を減らすべく、時に「標準化・規格化」が行われます。

この際、「私が話し慣れているものが、標準的だと認められてほしい」と全員が思うゆえに、言語の標準化は常に多大なる政治的調整を必要とします。いわゆる「歴史的経緯」というものには、既存の利用者に迷惑をかけないように物事を設計することの難しさや面白さがミッシリ詰まっています。

とても幅広い具体例をもとに、言語とその標準化の本音と建前についてお伝えします。

https://okayama.open-seminar.org/detail/?speaker=hsjoihs より引用

「自分の考えた架空の世界で使われている、架空の言語やゲーム、OSなどなどを設計し創造することを趣味としています」といったお話から始まり、冒頭からいきなりのトップスピード。その後も、ものすごい速度と物量のお話が、それでいて丁寧に展開されていっていたのですが、すみません、正直私はかなり最初の方で振り落とされてしまった気がします……(笑)。

ただ、メインのお話としては「既存の利用者に迷惑をかけないように規格を設計することは、難しいけど面白い」ということを、JavaScript や C 言語が辿ったこれまでの経緯を例示としてお伝えいただき、非常に興味深く、また学びとともに拝聴できたと思っています。「Webは時間軸方向に長い。Webを壊すな」というフレーズは、日常的にインターネット上にコンテンツを置くこともある個人としても、刻み込んでおきたいものだなと思いました。

「なぜベストを尽くしたのか」への憧れ / KOBA789 氏

三人目の登壇は、ソフトウェアエンジニアの KOBA789 さんより、「『なぜベストを尽くしたのか』への憧れ」というタイトルで発表がされました。

およそ1年前、同タイトルのブログ記事を書きました。 しかし、そこに書かれているのは私の動機のおよそ半分にすぎず、もう半分は伏せられたまま記事は締めくくられています。 もう半分の動機は一体なんなのか。全てを語らず真意を隠したのはなぜなのか。そのとき既に Advent Calendar の期日を過ぎており、一刻も早く適当なところで切り上げたかったからです。深い意味はありません。 当日の KOBA789 は「足が速ければ YouTuber にはならなかった」という話か、あるいはまったく違う話をしてみなさんを楽しませてくれるでしょう。

https://okayama.open-seminar.org/detail/?speaker=koba789 より引用

KOBA789さんからの発表もとても疾走感のあるもので、このあたりから「あ、今日のこのイベントはもうこれくらいが普通な会なんだな」と腹を括った記憶があります(笑)。

「7歳で初めてコードを書いた」というエピソードは信じられないくらいすごいものでありつつ、私のプログラミングの原体験も12,3歳という比較的幼少期であったということもあってか、KOBA789さんの話のなかであった以下のようなことは、私もとても共感を覚えるものでした。

  • おもしろいものを作ると、人に構ってもらえる
  • 大人気なく全力でやるのが一番おもしろい
  • ベストをつくすとなんかウケる。自分は納得してなくても、なんか嬉しい
  • 本気だしてみるのは結構気持ちがいい。でも最初はちょっと恥ずかしい

これらのようなことで一歩足を踏み出すことに躊躇している人にとっては、とても大きなエールだったのではないでしょうか。

マサカリと太陽:伝え方の情報デザイン / 間嶋 沙知 氏

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四人目の登壇者は majima DESIGN の間嶋さん。「マサカリと太陽:伝え方の情報デザイン」というタイトルで、「ウェブアクセシビリティ」というものに対して情熱を持っておられる間嶋さんからのお話でした。

印刷物やウェブデザインなどのクライアントワークのかたわら、アクセシビリティやユニバーサルデザインに関する情報発信を続けています。ポスター付きライトニングトークから始まり、ブログやSNSでの発信、勉強会の開催、セミナー出演からの書籍化、書籍の内容を体験できる展示…….これらの活動で意識しているのは、情報の伝え方を考えるためのエッセンスを身近に持ち帰ってもらうことです。

「自分が良いと思うものを多くの人に知ってほしい。」 具体例や原体験を振り返りながら、私の「情熱」の正体について本音で考えてみます。伝え方の伝え方を楽しみながら工夫してきたプロセスを共有できればと思います。

https://okayama.open-seminar.org/detail/?speaker=majima より引用

前半は、間嶋さんご自身が「“当たり前” のことを “当たり前” にできなくなった」という、ウェブアクセシビリティにおける当事者になったご経験をベースに、「伝える、ということはどういうことなのか」について丁寧にお話いただきました。

日々の SmartHR の開発や成果物においても、アクセシビリティに関しては重きを置くいくつかの観点のうちのひとつとなっており、入社時研修にも組み込まれていたりもするくらいなのですが、今回の間嶋さんのお話のなかで、間嶋さんのウェブアクセシビリティの根底にあるであろう「誰かと世界との出会いを、作り手のエゴで奪わない」という思いには、特に感銘を受けました。

後半については、ウェブアクセシビリティなどを始めとした一種の「正義」に対する向き合い方について、間嶋さんご自身のされている工夫などを交えつつ、お話いただきました。このあたりについては、私の感想や要約ではなく、上に貼ってある資料の内容をぜひ直接ご確認いただけたら、と思います。

思い切りの情熱、私なりのアウトプット活動とコミュニティの向き合い方について / 桐生あんず 氏

speakerdeck.com

五人目の登壇者は、Classi株式会社 の桐生あんずさんで、「思い切りの情熱、私なりのアウトプット活動とコミュニティの向き合い方について」というタイトルの発表が行われました。

私のエンジニア人生を振り返ってみて、ブログや同人誌・ポッドキャストなどのアウトプット活動、エンジニアコミュニティとの関わりが共にありました。それらの活動は私にとっての「情熱」と呼べるものだと強く感じています。

その情熱の原動力はいつも「思い切ってやってみる」から始まっていました。それらの思い切りに至った際のエピソード、そしてどのようなことを考えながら今まで情熱を保ち続けてきたかについて今回お話ししたいと思います。

https://okayama.open-seminar.org/detail/?speaker=kiryu より引用

あんずさんは、お住いの三浦半島にて「三浦半島.rb」という地域コミュニティを立ち上げ・運営されています。同じく私も岡山で地域ITコミュニティを立ち上げて運営している、ということもあり、以前から親近感と、どこか応援するような気持ちを抱いていました。

ただ、それ以外の場での活動や側面についてはあまり存じ上げていなかったので、どんなお話が聴けるのか楽しみにしていたのですが、そこで聴けたのは、「アウトプットから始まり、コミュニティに出会い、今やそれらはお互いに欠くことのできない両輪になっている」という、とても素晴らしいお話でした。

この技術ブログもそうですが、ITエンジニアはさまざまな形でのアウトプットを奨励されることが多いように感じていますし、またそれを実践している人が称賛されることも多いと思います。

同じく「コミュニティ」も私たちITエンジニアには欠かすことのできない、非常に大事な存在かと思います。それを踏まえて、エンジニアとして活躍しておられるあんずさんが「アウトプットとコミュニティの相性は良い」とされていたのは、これはもうあんずさんに限らず、また偶然のものでもないように思っています。

境界の彼方: 複合領域で創る新しいキャリア / 井上 恭輔 氏

最後の登壇者として壇上に上がられたのは、株式会社SANU 執行役員 CCXO、そしてSUNSET CELLARS 共同オーナーとしてワイン作りに日々励んでおられる、井上 恭輔 (きょろ)さん。

これまでの学問や仕事の世界では、とにかく自分の専門性を「深く」掘り下げ、他者に抜きん出ることが重視されてきました。私自身もエンジニアとして技術を徹底的に「深く」使いこなすことを大切にしてきましたが、振り返ってみると本当にワクワクしてきたのは、自分の専門性の“境界”をどんどん超えて、新しい領域で技術を「広く」活かすことでした。異なる業界やフィールドをまたぎ続けてきたことこそが、今のキャリアを形づくる大きな要素だったと感じています。

人は成長するにつれ自分の居場所を固め、境界を超えることに臆病になりがちですが、好奇心や楽しさをエネルギーに境界を超えていくと、活動の幅は「1倍」「2倍」と足し算で広がるだけではなく、「2乗」「3乗」と指数的に飛躍していくのです。AIが知識の収集や技術実装を担う時代、人間に残される可能性は「AIを超える極限の深さ」か、あるいは「AIが学べない境界を超える広さ」のいずれかだと私は考えています。だからこそ、境界を気軽に超える力はこれからの時代を生き抜くための大きな攻略法になり得るのです。私自身も、広島の片田舎から岡山の高専へ、東京のIT業界を経て、米国シリコンバレーへと活動する地域を変えながら、業界・業種・役割・求められる専門性を次々に広げてきました。

プログラマーとして始まった人生は、いまや「AIがプログラミングをすべて奪うかもしれない」と言われる時代に突入していますが、それでも私は自分の人生を強く肯定し、今なお大興奮しながら新しい領域に挑戦し続けています。本セッションでは、そんな私の実例を交えながら「境界を超えることの楽しさ」「そして指数的に広がる可能性」をお伝えし、境界を越え続ける生き方の魅力を皆さんに共有したいと思います。

https://okayama.open-seminar.org/detail/?speaker=kyoro より引用

ご自身の半生を振り返りつつ、各ターニングポイントごとでどのような “境界” を飛び越えてきたのか。その時々ごとに、どのようなことを思い、考え、飛び込んでいっていったのか。他でもないきょろさんご自身の言葉で、熱くそれでいて軽快に、40分間のトークをしていただきました。

お話を伺っていて、情熱、という言葉すらありきたりというか、足りないかんじがするくらい圧倒されるエピソードの数々で、「この世のすべてを創りたい」という、きょろさんの根底にある考え方も頷けるお話ばかりでした。

私なんかは、「つくるのが好きなら、もっと楽に “つくる” に向き合える方法もあるんじゃないかな」、……などと考えてしまうんですが、これこそが、私ときょろさんとの決定的な差なんでしょうね(笑)。

きょろさんが今年のはじめ頃に執筆された「米国でスタートアップの要職をやってたけどレイオフされてしまった話」は、私もリアルタイムで拝見しており、そのきょろさんが話されるということで、このあたりのことについては悲壮的なお話にもなってしまうのかな……なんてことを参加前には感じていたのですが、そんなことは全くなかったですね!もちろんそのときは非常にタフな状況だったかとは思うのですが、「神様は、それを乗り越えられる人にしか試練を与えない」とは、まさにこのことだなと思いましたね。今回のきょろさんのお話、ぜひ何らかの形で一人でも多くの人に届いて欲しい、とても素敵なお話でした。

運営の皆様・登壇者の皆様、そして参加者の皆様、お疲れ様でした!

終わってみれば、「あ、そういえば自分も登壇者の一人だったんだっけ?」と素で思ってしまうような、非常に内容の濃い半日間のセミナーでした。

誰もが知っているような著名なイベントは、どうしても主要都市や大都市圏での開催になりがちですが、地方であっても、最高に面白いイベントは作れるし楽しめる!ということは、今後自分自身も当事者になっていく形で証明し続けていきたいと思っております!

この記事を読んでくださっている皆さんも、身近なところで開催されているコミュニティイベントがもしあれば、応援の意味でも参加してみていただけたらと思います。

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