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SmartHR CRE が目指すところは "RevOps" にあり? —— 『RevOpsの教科書』を読みました

こんにちは!SmartHR CREユニットチーフの a-know こと井上です。

タイトルにもある "RevOps" というキーワードを、みなさんは聞いたことはありますでしょうか?「レベニューオペレーション(Revenue Operation)」の略称なのですが、私は2025年のはじめくらいに初めてこのキーワードに出会いました。

その単語の意味するところから、なんとなく「CREユニットで働く自分たちにとっても大事そう!」と感じた私は、2026年1月現在でおそらく唯一となる、RevOps について日本語で書かれている書籍『RevOpsの教科書』を読みました。

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そしてその直感通り、「RevOpsは、SmartHR の CRE のミッションにも大いに関係することだ!!」と感じることが非常に多く書かれている一冊であることがわかりました。ということで今回は、私がこの本を通じて学びを得たことのサマリをこのブログでまとめると同時に、「今後の SmartHR CRE が目指すところとは?」といったところについても、今時点での考えを示させてもらえたら、と思います。

そもそも、RevOps(レベニューオペレーション)とは?

本書では、RevOps(レベニューオペレーション)について「レベニュー領域におけるオペレーションモデルの科学」「ビジネス成長を科学するもの」という表現が用いられていました。

具体的には、マーケティング・営業・カスタマーサクセスといった部門ごとに分断されがちな「プロセス」「データ」「テクノロジー」を統合することで組織連携を強化し、Go To Market(GTM)戦略の実現や顧客体験の向上、そして最終的な収益(レベニュー)の最大化を目指すための仕組みや考え方、というところになるかと思います。

その主要な役割として、以下の4つが挙げられていました。

  • オペレーションマネジメント
    • マーケティングから営業、そしてカスタマーサクセスへと顧客のステージが遷移する際のオペレーションを設計し管理する
  • レベニューイネーブルメント
    • 単なるトレーニングにとどまらず、全部門の担当者が一貫した顧客体験を提供できることを目的として、教育プログラムの策定・実施や、各種コンテンツやナレッジの管理と提供を行う
  • RevTechマネジメント
    • CRM(顧客管理)、MA(マーケティング自動化)、SFA(営業支援)などの各種ツールについて、データがシームレスに連携できるように管理する
  • データマネジメント/インサイト
    • 組織全体のデータをクリーンに保ち、「どこに課題があるか」「次にどこに投資すべきか」といった分析・提言を可能にする

レベニュー組織を取り巻く環境や背景の変化

RevOps の重要性が認識され、高まってきているのは、ひとえに、レベニュー組織を取り巻く市場環境や背景の変化があると感じていて、それについては本書でも以下のような点として挙げられていました。

購買プロセスの複雑化

顧客が製品を知り、購入し、ロイヤル顧客になるまでのプロセスは年々複雑化してきている、ということ。売り手都合のタイミングで売るのではなく、一連のプロセスの中で「一貫性のある質の高い顧客体験」を提供することが求められるようにもなってきている。

部分最適による「サイロ化」の限界

これまで企業は、専門性を高めるために「マーケティング(MOps・マーケティングオペレーション)」「セールス(SalesOps・セールスオペレーション)」「カスタマーサクセス(CSOps・カスタマーサクセスオペレーション)」といった機能別のオペレーション組織を作ってきた。 しかし、これらが個別に最適化を進めた結果、組織・データ・ツールが分断される「サイロ化」も発生している。

  • データの分断
    • 部門間でデータが連携しきれておらず、全体像が見えないまま、結果として誤った判断をしてしまう
  • 顧客体験の毀損
    • 担当部署がマーケティング → 営業 → CS へと変わるたびに、顧客は同じ説明をしなければならなくなるなど、一貫性のない対応が発生する

一貫性のある顧客体験の実現、それによるプロダクトやサービスに対する信頼の向上、そしてそれらがレベニューの最大化に繋がっている、という状況を実現するべく、レベニュープロセス全体を統合するために求められているもののひとつが RevOps である、と言えると思います。

なぜ RevOps を実践するのか。その意義

RevOps の実践は、"個人の能力に依存したモデル" から、"組織的かつ科学的な成長モデル" へと転換するために不可欠なもの、とされています。

営業やCSの経験や勘といった属人性に依存するのではなく(営業/CSともに私も経験があるので、一定理解できるところはあります)、システムとプロセスによって組織全体のアプローチに一貫性と再現性を持たせることが目的だとしています。これによって組織全体のパフォーマンスを持続的に維持し、ビジネス成長を実現する、ともありました。

また、RevOps という、現場(フィールド部門)とは独立したところでオペレーション機能を持つことで、データを扱う側の意図や解釈に左右されず、経営判断をする側にとって信頼性が担保された価値あるデータをレベニュープロセスの全体から得られたインサイトとして提供できるようになる、といったことも書かれていました。

またこれは既に書いた内容とも重なりますが、RevOps を実践することで一貫性のある質の高い顧客体験を提供できるようになり、それが信頼に繋がる、という点も、極めて重要な意義のひとつだと感じました。

RevOpsが立ち向かう既存組織の課題にはどのようなものがあるのか

RevOpsが立ち向かう既存組織の課題として最たるものは、やはり「組織とデータのサイロ化」ということになろうかと思います。サイロ化は、「組織文化への影響」という課題も引き起こします。目標やKPIが部門ごとに目線が異なることでサイロ化が進むと、部門間の対立が発生・組織としての統一感はなくなり、働く社員のモチベーションは低下してしまいます。これが、もしもレベニュー目標の達成を共通ゴールに、適切な目標設定がなされていれば、営業はマーケティングと密に連携を図り、供給された適切な質のリードによって受注目標を達成できるようになる......というのは、私にも想像できるところです。

また、本書で語られているように、「どこの部門が言っていることが真実なのかがわからなくなっている」という課題を抱えている組織も世の中にはあると思います。各部門が断片的なデータで会話をしてしまうことで、例えば「マーケティングはリードは好調と言っているが、営業は商談化できないと言っている」、といったような事態です。当然、それぞれの部門には悪意はなく、またそれぞれにとっての "真実" であるデータを元にした発言であるからこその事態の難しさがあると思っています。

加えて「なるほど」と思ったのが、部門ごとにそれぞれ異なるテクノロジーが導入されてしまっていることにより、個別最適化が進んでしまっている、ということです。ツールが統合されていないことによってレベニュープロセス全体の効率が低下してしまうことに加えて、IT部門が管理しきれないサービスを利用してしまうことによるセキュリティリスク、ガバナンスの課題、というのも、RevOps でアプローチし得る課題の一つだと言えると思います。

RevOpsを実践するにあたって重要なポイントや勘所

本書を読んでいて、RevOps を推進する場合には心に留めておいたほうがよさそうだな…と感じた点がいくつかありまして、それは以下の5点です。

  • 「組織図」から入らない
    • いきなり組織図を作るのではなく、まずは明確なゴール、目的、役割の範囲、リスクなどを整理し、理想的な状態から優先順位を決めて取り組むこと
  • データの「解釈」を提供する
    • データを単に提示するのではなく、そのデータが何を意味し、どのような仮説が立てられるのかという「インサイト」を示すことが重要
  • 主役はオペレーションモデル
    • テクノロジーはあくまでアクセラレーターであり、存在しないオペレーションモデルを補うものではない。オペレーションモデルが先行して初めて価値を発揮するものであることに留意する
  • あくまで "各部門の統合" である視点を持つ
    • 各部門、というのは MOps、SalesOps、CSOps のこと。これらの役割を消滅させるのではなく、統合し、レベニュープロセス全体の循環を改善するために意思決定を行うこと
  • 社員体験(EX)にも気を配る
    • 顧客体験だけでなく、社員の体験を重視することが、結果として収益向上に寄与することを忘れない

これから自分たちがやろうとすることが RevOps なのかそうでないのか、は別にしても、これらのポイントは自分たち CRE が持つべきポイントとしても遜色ない、重要な内容だなと感じました。

RevOpsは経営者からはどのような期待を持たれているか。もしくは、意識すべきポイント

経営者はどのような期待を持って RevOps 組織の構築を支援するか、というと、「なぜ RevOps を実践するのか。その意義」のところでも既出の「バイアスのない、第三者視点からの公平なレポーティング」ということに加えて、「部門間のアライメントとギャップフィリング」や「GTMテクノロジースタックの管理」、といったようなものもあるようでした。

本書の中では、"レベル1" から "レベル5" の5段階で表現された「RevOps の成熟度」というものも定義されているのですが、この成熟度に照らし合わせていうと、発生した問題を処理するだけでなく、GTM戦略の支援やプロセスデザインを行い、プロアクティブに利益率改善とレベニュー成長に寄与することのできているレベルである「戦略段階(レベル4)」以上が期待されている、とも書かれていました。

"RevOps" と "データ" の関係

ここまで確認してきたように、RevOps の活動を推進するにあたってデータは活動の基盤であることがよくわかったのですが、そこにAIの力を活用しようということを考えると、"データ"はさらに重要な意味を持ってくるであろうことは、おそらくこれを読んでいる皆さんの想像にも難くないかと思います。

本書の中でも、「RevOps組織がMOps、SalesOps、CSOps に点在するデータの統合を検討しているのは、単なる全体最適化だけではなく、AIの適用という目的もある」「AIによるビジネスインパクトを生み出すには、データが意図した形式で然るべき場所に統合されている必要がある。分断されたデータのままでは、正しいAIの学習(結果と行動の紐づけ)に結びつかない」といった主旨の記述がありました。これには、「このデータが、どのようなものなのか」を表現するメタデータ的なものの整備も含んでいると理解しています。そこまでできて、始めて「データが整備できている」と言えるのだと思っています。

RevOps について学び、感じたこと

このブログ記事の「なぜ RevOps を実践するのか。その意義」のところで書いた、下記の一節のなかに、「信頼性」というキーワードが含まれていたかと思います。

RevOps という、現場(フィールド部門)とは独立したところでオペレーション機能を持つことで、データを扱う側の意図や解釈に左右されず、経営判断をする側にとって信頼性が担保された価値あるデータをレベニュープロセスの全体から得られたインサイトとして提供できるようになる、といったことも書かれていました。

私は以前から、「SmartHR の CRE は、開発組織のみならずセールスやCSなどのbiz組織にも積極的に関与する(特に、エンジニアリングを発揮する形で)ことで、事業に貢献する」ことを CRE のビジョンとして考えていました。そして、それを実現するためのアプローチとして、「社として把握しているお客様の情報(データ)の鮮度や精度(≒信頼性)を担保する」ということを考えていましたし、これは CRE が管掌すべき "Customer Reliability" の一翼を担うとも考えていました。

本書では "CRE" や "Customer Reliability" というキーワードこそ登場してはいませんでしたが、この本の中で語られている概念や考え方、それを実現するための組織……などはいずれも、私が重要だと考えることと一致、もしくは包含しているもので、「今まで自分が重要で価値があると考えていたことは、やはり世界においても重視されていた・先駆者がいる領域だったのだ」と感じることができ、強く後押しを受けたような気持ちになりました。特に「RevOps とは、ビジネス成長を科学するもの」という表現については、私が以前からよく使っていた「CREing とは、カスタマーサクセスをソフトウェアエンジニアに任せたときに起こるもの」というフレーズにも近いものを感じて、とても親近感を覚えました。

と同時に、売上(レベニュー)への貢献に繋がる活動についてさまざま書かれているなかで、自分自身が "CRE" としてのチャレンジになり得ると現時点で考えていたことは、そのごく一部だったんだな……とも感じました。自分の見えていた範囲が狭かったというか、「まぁこのくらいでいいかな」と無意識のうちに視野を限定的にしてしまっていたな……という、反省にも近い感想です。

"RevOps" を踏まえて、「SmartHR CRE の目指す姿」を捉え直していきたい

世界標準にもなりつつある "RevOps" を踏まえて、「SmartHR CRE の目指す姿」というものを改めて捉え直す必要があるな、という大きな宿題をもらえたような、そんな収穫のある一冊でした。

ちなみに、本書を読み終えた現時点のタイミングで私が考える「RevOps における SmartHR CRE の立ち位置・あり方」はなんだろうか?というところなのですが、それは「RevTech マネジメント」がとても近い位置にあるのではないか、と考えています。

「近い位置にある」という表現にしたのは、完全にそれだけではないというか、「そこにとどまらない、周辺領域についても一部担うことのできる・バリューを発揮できるところがありそう」と感じているからです。具体的には「レベニューイネーブルメント」および「データマネジメント/インサイト」の部分です。特に、「RevOpsを実践するにあたって重要なポイントや勘所」のところでも含めたポイントとして「顧客体験と対になるのが社員であることも忘れてはいけない。社員の体験を重視することが、結果として収益を押し上げることに大きく寄与する」という主旨の記述が本書にはあり、これには非常に共感を覚えました。社内の同僚の誰が取り組むことになっても別にいいけれど、自分たちとしてはぜひここに取り組み、貢献したい!という気持ちです。

ただその一方で、今の状況としてあるのが、「1500名を超える組織になっている SmartHR の、どこで誰が、どんなデータを参照しどんな意思決定をしているのか?そして、どんな課題に直面しているのか?」……について、私がまだ把握できていなさすぎる!ということも痛感しています。

個人的な事柄で恐縮なのですが、私は来年の3月で入社1年を迎えます。「ようやく SmartHR での体の動かし方はわかってきたかな?」という感じがしてきているところですので、「SmartHR 内のいろいろな部署の方々にお話を聞きに行く」「SmartHR の RevOps 関連の現状を把握する」というのは、2026年の目標のひとつにもちょうど良いのかも、と考えています。「RevOps を踏まえた SmartHR CRE の現在位置」については、ぜひ今後も継続的に発信させてください!

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