プロダクトエンジニアの charo です。
Cursor や Claude Code など AI エージェントブームによる開発が世間で話題になって1年ほど経ちました。 この1年間「AI ってどう使えばいいの?」から始まり、現在では AI エージェントを起点に業務を行えるようになってきた、そんな軌跡を残しておきます。
想定読者は、チームに AI エージェントを広げたいエンジニアリングマネージャーやテックリード、あるいは同じ課題感を持つチームメンバーです。完璧な導入プロセスの解説ではなく、試行錯誤の記録として読んでいただければ幸いです。
背景
AI エージェントを個人で使うだけでも、生産性は確かに上がります。しかし、私たちはチームでプロダクト開発を行っています。 チーム開発の現場では次の問題が発生します。
- 個人最適はスケールしない
- AI の活用に習熟した人だけが速く、慣れていない人は従来どおり。結果としてチームの出力は底上げされない
- コンテキスト投入が属人化する
- 同じ作業を頼んでも、誰が書いた指示かで結果がブレる
- ツール乱立で学習・運用コストが爆発する
- 個々人が別のツール・別のルールで動くと、チームで一貫性がなくなる
私たちのチームで扱っている労務領域はドメインが複雑で、品質要件もある領域です。「速く書ける」だけでは済まず、速く書きながら品質を崩さない、という状態を仕組みで担保する必要があります。
この課題感を出発点に、1年間かけてチームで試してきた施策の流れが次の図です。
---
title: AI エージェントをチームに広げた1年の施策
---
timeline
2025年前半 : AI 縛り週間
2025年後半 : AI のツラミ・知見共有会
2026年現在 : Skills 勉強会
: モブ作業
2025年前半
この時期は Cursor や Windsurf が台頭してきていました。 VS Code から AI エージェント機能が付加された IDE が注目され、Vibe Coding(AI に感覚的に指示しながらコードを書き進めるスタイル)が一気に広まったタイミングです。私たちも Cursor や Windsurf を導入し、既存のプロダクトにどこまで通用するのか検証しながら業務で利用していました。
チームで利用していくために以下の施策を行いました。
AI 縛り週間
この段階では、まだ世間でもルールの整備を行い、うまいプロンプト方法でタスクをこなしてもらう手法が主流でした。 この状態だと、メンバー間で AI への慣れや理解にバラつきが発生しました。そこで AI がどこまでできるのかをチームで体験しようと考えました。
やったこと
- 期間限定で「できるだけ AI 駆動で開発する」というルールで1週間運用
- 事前準備週 → 本番週の2段構えにして、慣らしと本番を分けた
- 毎日の気づき・詰まり・工夫を Slack の専用スレッドに流す運用
よかったこと
- 全員が一度は詰まる体験によって、議論の土台ができた
- その後の打ち手(ルール整備・共有会)の必然性がはっきり見えた
- AI で扱える作業のラインがつかめた
失敗したこと
- 使い方の共有はされたが、結局はプロンプトによって品質の差が生まれた
2025年後半
プロンプトによって品質の差が生まれるという AI 縛り週間の反省を受け、次の半年は個人の知見をチームに広げる取り組みへ舵を切りました。
この頃には様々なサービスが MCP(Model Context Protocol。AI エージェントに外部ツールやデータを接続する標準プロトコル)の提供を開始し、Cursor や Windsurf に限らず Devin のような自律型 AI エージェントや CLI の Claude Code が普及しはじめ、AI エージェントのあり方も多種多様になってきていました。 また Agent Skills(タスクごとに AI エージェントへ渡す再利用可能な手順書)など標準化の動きもあり、AI エージェントを期待通りに使えるようにする仕組みも揃ってきていました。
一方でチームとしては、前回の AI 縛りから比較するとルールや Commands の整備を進めているが、プロンプトを手動で書き AI に作業させる程度にとどまっていました。 まだ個人差が大きい状態が続いていたので、別の形で施策を行いました。
AI のツラミ・知見共有会
AI を使っていく上で、個人で感じていることを書きだしてもらうことを考えました。 この頃になると、ツールのアップデート頻度も上がってきていたので、キャッチアップが困難になり始めていました。
やったこと
- ツライと思ったこと、うまくできたことをシェアする
- Cursor や Claude Code などのツールのアップデート情報をシェアする
よかったこと
- アジェンダを失敗ドリブンにしたことで、成功談より学びが溜まりやすくなった
- スキル格差のあるメンバー同士で、前提の擦り合わせができた
失敗したこと
- AI エージェント全体の仕組みについての理解度が人によってばらつきがあるため、知見だけの共有では体系立てて学べていない
この時期には Skills や Hooks(AI エージェントのイベントに応じてスクリプトを差し込める仕組み)など機能がリリースされており、それらをまだチームとしてフル活用できていない状況でした。
2026年現在
知見共有だけでは体系立てて学べないという反省を踏まえ、2026年に入ってからは Skills や Hooks のように AI エージェントの仕組み自体に踏み込む取り組みへ軸を移しました。
現在の AI エージェントでは Harness Engineering(AI エージェントが安全かつ再現性高く動ける"足場"をコードベースやワークフローに組み込む考え方)という言葉がスタンダードになっています。 正直まだチームもそうですし、リポジトリに Harness の仕組みを取り入れられていないのが現状です。
いきなり仕組みを入れることも可能ですが、まずは Skills や Hooks などの機能についての理解がないと Harness を作り上げ運用するのは難しいです。 そこで取り組みやすそうな Skills の作成方法からチームで勉強会を行いました。
Skills 勉強会
Skills は一度自分で作るのが手っ取り早いので、事前にどんなことを AI エージェントにさせると良さそうか考えてきてもらった上で勉強会を開催しました。
やったこと
- Agent Skills をベースに Skills とはどんなものか概要を理解する
- Claude Code 公式プラグインにある
/skill-creator(対話形式で Skill ファイルを生成してくれるコマンド)を使って実際に作るデモを行う
よかったこと
- どのように Skills を作っていけば良さそうかのイメージをつかめた
- アイディアを出してもらうことで、コーディング以外の業務にも AI エージェントを使うイメージがついた
失敗したこと
- Skills を上手く作るためのノウハウは溜まっていない
- 他の Hooks や Agents については触れられなかった
実際に Skills を作ると、「ああ、AI エージェントはこういう使い方もできるのか」という気づきが次々と出てきました。体系的な理解というより、手を動かすことで輪郭が見えてくる感覚に近いです。
モブ作業での実施
Skills の作り方を学んでもノウハウが溜まらなかった反省から、次は「作るところを一緒に見る」方向に切り替えました。ここまで知見をいかに広めるかのアプローチで進めてきましたが、業務においてどんな設定でどんな指示をし、作業を進めているかは実際に見ないと分からず、個人差が埋まらないと感じていました。 別のチームでモブでの作業が良いとのことで、早速取り入れました。
やったこと
- 2人一組で作業を行う
- 1人が画面共有し、1つの Claude Code セッションに対して2人で指示して取り組む
よかったこと
- AI エージェントに対してどのように指示をすると良いか、タスクを通じて学べる
- レスポンスを待っている間に、議論を深められる
失敗したこと
- チームの作業効率が一時的に下がる
- 知見のスケールが限られる
結果、チームでは AI 駆動での業務が全員できるようになってきました。また AI 疲れも、レスポンスを待っている間に雑談もしながら進めることで多少軽減できていると思います。 作業効率においては、チームの習熟度が上がっていけば特に問題ないはずです。 また、チームとして足りていない仕組みなどは別途学習していく必要はあります。
まとめ
AI 縛り週間、知見共有会、Skills 勉強会、モブ作業。どれも完璧な施策ではなく、そのたびに新しい課題が見えてきました。それでも一つひとつの成功と失敗を積み重ねた結果、チーム全員が AI 駆動で業務を進められる今があります。
冒頭で挙げた3つの課題について、現時点の手応えを書き残しておきます。
- 個人最適はスケールしない:モブ作業で大きく改善。AI エージェントへの指示の勘所をチームで共有できるようになった
- コンテキスト投入の属人化:まだ道半ば。今後は Skills で指示の再利用性を高めて収束させたい
- ツール乱立:Claude Code を中心に据える方針で一定の収束が見えてきた
AI エージェントの進化はこれからも続きます。Hooks でレビューや CI 連携の自動化を進めたり、Agents を業務フローに組み込んだり、最終的にはリポジトリを Harness Engineering の発想で組み直したり。どれもまだ手つかずの領域です。これからもチームで試行錯誤を重ね、AI 駆動を当たり前にする取り組みを続けていきます。
同じように「個人では使えるけど、チームではうまく広がらない」と感じている方の参考になれば嬉しいです。
We are Hiring!
SmartHR では、一緒に働く仲間を募集しています。興味がある方は、ぜひ/hello-worldをご覧ください。