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クロスファンクショナルを勘違いしていたよ

こんにちは、SmartHRのUXライター kunyです。今年のクリスマスプレゼントは、Eyevolのメガネが欲しいです。

さて、SmartHRのフィーチャーチームは、クロスファンクショナルに取り組んでいます。クロスファンクショナルの詳細については、以下の記事をご覧ください。

この記事では、一年ほどクロスファンクショナルに向き合ってきた自分が、「勘違いだったな」と思うポイントを紹介します。クロスファンクショナルに取り組まれている方・チームのお役に立ちますように(-m-)

※ この記事は、SmartHR Advent Calendar 2022の3日目の記事です。

クロスファンクショナルについて勘違いしていたポイント

クロスファンクショナルを以下のように理解していたのですが、これらは勘違いでした。

1. 他職種に対して職能を移譲することだけが、クロスファンクショナル

自分の専門領域を他職種に移譲することだけがクロスファンクショナルで、それ以外はクロスファンクショナルではない、と思っていました。

例: プロダクトエンジニアがデザインもできる、QAエンジニアがコードも書けるなど
SmartHRにおけるクロスファンクショナル実践例 - SmartHR Tech Blog

2. 職能移譲が完了しないと、クロスファンクショナルのメリットを得られない

クロスファンクショナルの主なメリットは、以下の4つがあります。

  • チーム内ボトルネックの解消
  • コミュニケーションコスト削減
  • 組織のスケールの柔軟性向上
  • より創発的になる

SmartHRにおけるクロスファンクショナル実践例 - SmartHR Tech Blog

これらのメリットは職能移譲が完了しないと得られない、と思っていました。

3. プロセスがわからないので、結構しんどい

クロスファンクショナルの進め方は、チームや状況によって最適解が異なるため、日々手探りで進めることになります。膨大な時間とコストがかかるので、しんどい場面が多いです。

クロスファンクショナルに対する最近の理解

スクラムマスターと話したり、書籍を読んだりする中で、クロスファンクショナルに対する理解が変わってきました。

1. 他職能の観点を持って開発を進めることも、クロスファンクショナル

自分が所属するフィーチャーチームは、顧客の課題・価値をいつも考えています。あらためて考えてみると、プロダクトマネジメントの観点をもって開発をしている、と言えます。

同じように、チームとして、デザイナー・QAやUXライターの観点をもって仕事ができるとよさそうだ、と気づきました。

例えば、UXライターの職能移譲は、UXライターの専門領域(文言の作り方、文章の書き方など)を教えることだけではない。ユーザーにとって最適な表現を考える姿勢やプロセスを、チームに植え付けるのもクロスファンクショナルと言えるな、と。

決して、職能移譲だけがクロスファンクショナル、というわけではありません。

2. 職能移譲を進めるプロセスで、クロスファンクショナルのメリットを得られる

とあるスプリントでエラーメッセージを作成していた際、「リードタイムを削減」でき、「創発のきっかけ」を感じました。具体的にはこんな感じ。

  1. エンジニア:仮のエラーメッセージを入れて実装し、PRを作成
  2. UXライター:ローカルで挙動を確認しながらメッセージ検討するため、PRのDraftの取り込もうとする
  3. エンジニア:PRの取り込みの技術サポート(ありがてぇ)
  4. UXライター:ローカルで挙動を確認しながらエラーメッセージを検討(めっちゃ楽)
  5. UXライター:実装の不備に気づいてエンジニアに共有
  6. エンジニア:シュッと修正
  7. エンジニア:既存のエラーメッセージのパターンを提示
  8. UXライター:既存のパターンも踏まえて検討した結果、ロジックの修正を伴うエラーメッセージを提案
  9. エンジニア:シュッと修正し、エラーメッセージも反映
  10. UXライター:レビュー
  11. エンジニア:リリース

この時、異様にスムーズに作業が完了しました。要因は、会話しながら相手のやっていること・考えを把握し、専門領域外のこともやったから。これを繰り返すことが「創発」につながる気がしました。

3. プロセスがわからなくても、気負わずに周囲と会話して進めればよい

野中郁次郎先生の著書「知識創造企業(新装版)」に、組織として新たな知識を獲得する方法が書かれています。

知識は、チームやタスクフォースのリーダーを務めることの多いミドルマネジャーによって、トップと第一線社員(すなわちボトム)を巻き込むスパイラル変換プロセスを通じて創られる。このプロセスは、ミドルマネジャーを知識マネジメントの中心、すなわち社内情報のタテとヨコの流れが交差する場所に位置づける。
(中略)
ミドルは、トップと第一線マネジャーを結びつける戦略的「結節点」となり、トップが持っているビジョンとしての理想と第一線社員が直面することの多い錯綜したビジネスの現実をつなぐ「かけ橋」になる。 ミドル・アップダウンによる知識創造

SmartHRの場合、「トップ」も「第一線社員」も、ゴール(顧客価値の最大化)の認識は揃っています。その手段の一つとしてクロスファンクショナルを掲げていますが、詳細なプロセスは定義されていません。なので、「第一線社員」もスパイラルに参加していって、最適解を見つければいいんだな、と気づきました。誰も正しいプロセスを知らないので、気負う必要なんてなかったんです。

図では、ミドルマネージャーが触媒となって矛盾を解消していますが、SmartHRっぽい矛盾解消の方法は、肩書を気にせず、チームの垣根も超えて意見交換することだと思っています。

まとめ

勘違いしていたポイント 最近の理解
他職種に対して職能を移譲することだけが、クロスファンクショナル 他職能の観点を持って開発を進めることも、クロスファンクショナル
職能移譲が完了しないと、クロスファンクショナルのメリットを得られない 職能移譲を進めるプロセスで、クロスファンクショナルのメリットを得られる
プロセスがわからないので、結構しんどい プロセスがわからなくても、気負わずに周囲と会話して進めればよい

クロスファンクショナルのゴールって、もしかしたら無いのかもしれません。道は永遠に続く。だとすると、心が折れないように適切に目標を区切って進めるのがよさそうです。そのプロセスの中で、クロスファンクショナルは進化し、メリットが得られます。

とはいえ、誰もクロスファンクショナルの正しいプロセスを知りません。なので大切なのは、肩書を気にせずに会話をしていくこと。組織学習を積み重ねることで、不確実性に打ち勝てるはずです。

最後に・・・。こうやって自分の考えを記事にまとめたことで、ようやくクロスファンクショナルのスタート地点に立てました。引き続き、やっていき。