こんにちは、品質保証部Managerのtarappoです。
品質保証部が昨年9月からおこなっている短期集中連載記事(24/09-25/04)は本記事の第12弾をもって最後となります。
短期集中連載は終わりますが、このあとも定期的にアウトプットしていきますので、ぜひチェックしてください。
連載の最後となる本記事では、この約半年間に取り組んできた「組織面」での活動について紹介します。
本記事の内容は弊社がスポンサーをした25/03/27(木)〜28(金)に開催された「JaSST'25 Tokyo」で話した内容をもとにしています。
そのときの登壇資料は次になります。
スケールアップ企業のQA組織のバリューを最大限に引き出すための取り組み - Speaker Deck
最初に取り組んだこと
私がSmartHR 品質保証部のManager(Acting)として入社したのは2024年9月です。
Managerがやるべきこととして「部のバリューを最大限に引き出すこと」が重要です。
それを達成するために私がまずやるべきと判断したのは、現状把握になります。
そこで次を実施しました。
- 部内外の関係者へのヒアリング
- ドキュメント*1やSlackなどのチェック
さらに現状把握における大前提として会社の状況があります。
弊社(SmartHR)はスケールアップ企業です。
このスケールアップ企業のキーワードは「規模拡大」と「急成長」です。
そういった前提や現状把握をしながら「なにをするべきか」「いつするべきか」を考えました。
そこで、まずはメンバーがバリューを発揮するために必要な「コトに向かう」ための土台を整えなおすこと*2を最優先でやるべきと判断しました。
進めていくうえでの方針
変化が早い中で急いでおこなうべきことが多くあります。
そのため私が組織に「馴染んでから」はじめるのでは遅いことがあります。
そこで「コトに向かう」ための土台を整えていく中で、決めた方針としては次のとおりです。
- すべてを合議制では決めない
- 言語化とその説明を怠らない
- 進めている途中のものでも共有しフィードバックをもらう
- 私が持ち続けるのではなく移譲時期を都度判断する
リーダーシップと責任をもって進めていくためには「言語化」をしたうえでメンバーに説明することは重要です。
バリューを最大限に引き出すための3つの土台
組織として次が「コトに向かう」ために重要です。
「メンバーが成果を出せて、その成果が正当に評価され、そして成果を各所に知ってもらう」
そこで次の3つの土台を整えていくこととしました。
- (1)メンバーが成果を出せる環境づくり
- (2)メンバーの成果が正当に評価される仕組みづくり
- (3)メンバーの成果を知ってもらう仕組みづくり
この3つはそれぞれ独立しているものではなく、関係性を持っています。
したがって、整えていく中では(1)をやってから(2)というわけではなく、いろいろな要因をもとに、なにから進めていけるかを考えたうえでおこなっていきました。
この3つについて簡単に次に説明をします。
(1)メンバーが成果を出せる環境づくり
成果を出せる環境にするには次が必要です。
「進む方向を同じにし、進む先にある「壁」を減らし、進むことを後押しする」
そこで、次の3つについてできている必要があります。
- (1−1)進む方向を共有できていること
- やりたいこと:「進む先、進み方が分かっていて一緒に同じ方向へ進んでいる」
- (1−2)進むにあたっての不必要な「壁」を減らすこと
- やりたいこと:「コトに向かうことができない要因となる壁を減らす」
- (1−3)進むことを後押しすること
- やりたいこと:「メンバーが進むうえでの現状把握をし必要な後押しをする」
最初の連載記事に書いたことが(1−1)の最初の一歩といえます。
(1−2)で書いてある「壁」ですが、メンバーが「成長するための壁」は必要なことが多いです。 しかし、そうではない「壁」についてはマネージャーが取り除いておくことが重要です。
そして、メンバーが「コトに向かっていく」上でなにもしないのではなく「後押し」をできるようになっていることが大事です。
それは次のようなことをおこなっています。
- 1on1*3
- 一緒にプロジェクトを進める
- 部のタレマネ施策
その中で今、コミットメントをしているのが「部のタレマネ施策」になります。
部のタレマネ施策について
タレマネ施策は、タレントマネジメント施策の略になります*4。 タレントマネジメントは、メンバーのスキルなどを把握し活用したうえで「育成」「採用」「配置」などをおこなうことです。
QA領域において必要とされる、活用することができるスキルは幅広いです。
そういった中で、部ならびユニットとしてどういうスキルが必要なのか、そしてメンバーはどういったスキルを持っているのかを把握することは重要です。
それらを把握し、メンバーの意思も考慮したうえでスキルの獲得を支援することが必要となってきます。
そこで次を進めています。
- (1)現状を把握する
- 現状のスキルの把握
- メンバーの「スキル」「今後やりたいこと」
- 必要なスキルの把握
- ユニットが必要とする「スキル」
- 部が必要とする「スキル」
- 現状のスキルの把握
- (2)スキル獲得の支援する
今は(1)の「現状把握」を進めており、メンバーならびに部・ユニットの把握を進めています。
これらの情報を把握した後、(2)であるスキルの獲得をどのように支援していくかの検討をおこなっていく予定です。
その中でパイロット的に一部メンバーに対してのサポートをはじめだしています。
(2)メンバーの成果が正当に評価される仕組みづくり
成果を出せるようになっても、それが評価されなくては継続性はありません。
当人にとっても他の人からみても正当に評価されることが重要です。
そこで次の2つができている必要があります。
- (2−1)評価の軸の明確化
- おこなったこと:評価の軸となる「等級要件」の更新
- (2−2)評価の軸の共通認識化
- おこなったこと:更新した「等級要件」を浸透させるための取り組み
重要な評価の軸となる「等級要件」について説明します。
評価の軸「等級要件」について
「評価の軸」は会社の「評価制度」に依存します。 弊社では「等級要件」がその軸といえます。
弊社の等級要件は7段階あり、内容は職種ごとに分かれています。
等級要件は「入学要件」であり、再現性があると認められると該当等級に昇格します。
QAEにおける「等級要件」の課題(の一部)として次がありました。
- 等級に対して特定のスキルが「すべて」満たされている必要があった
- スキルの適正が考慮されておらず「コトに向かう」ことが一定できないことがあった
- 等級に対する詳細な情報が不足しているケースがあった
- なにが「どこまで」できていればいいのか関係者間で共通認識になっていなかった
そこで、これらの課題を解決するために等級要件の更新をおこない、今年の1月から運用をはじめています。
実際の等級要件は等級単位に詳細が記載されておりボリュームがあるため、一部について紹介します。
等級要件の紹介
QAEの等級要件は等級に応じて「求める成果」のレベルを定義しました。
そして、自身の専門性を「広さ」または「深さ」をもとに「求める成果」を発揮できていれば要件を満たすとしています。
3等級は会社においては「方針を理解して自律駆動できる人」になります。
現在の部のボリュームゾーンでもあるので、3等級をもとに説明をしていきます。
「3等級の等級要件(の一部)」
発揮すべき成果
・QAの領域に関する基礎スキルと専門スキルを活用し、即戦力として周囲と協力しながら自律的に課題解決に向けて完遂できる次のいずれかを満たし「発揮すべき成果」を達成できること
- テスト設計をおこない、特定のテストレベルにおける必要なテストケースを設計したうえで、自動テストをチームで運用できるレベルで実装できる
- プロセスを通して見つけた課題に対して、解決案の提案とその施策を周囲と協力しながら進められており、改善サイクルを回すことができる
成果を達成するための内容については、QA領域に求められるスキルをもとに複数用意しています。 上記にあるのはその一部となります。
ただし、この内容だけでは「具体例」がわからないため、補足資料をあわせて用意しています。
補足資料の紹介
3等級に関する補足資料に書いている例を紹介します。
「3等級の補足資料(の一部)」
・テスト設計をおこない、特定のテストレベルにおける必要なテストケースを設計したうえで、自動テストをチームで運用できるレベルで実装できる
- 例)テスト設計で現状の守りを特に弱めることなくE2E自動テストの運用コストを最適化する
- (補足)すでにあるテストを活用する形で構わない
- (補足)リードするテストレベルは複数でなく特定のものだけでいい
- (NG)他のテストレベルなどを一切考慮せずに、特定のテストレベルのテストケースをただ増やすだけになっている
- (NG)実装者しか理解できない、運用が高負荷になるコードを実装している
等級要件に記載している内容をもとにやれることは複数存在します。
したがって上記のように具体例を記載することで、よりわかりやすくなるようにしています。
また、こういった具体例は時期とともに変化してくることもあるため適宜更新する予定です。
(3)メンバーの成果を知ってもらう仕組みづくり
私たち、QA領域のメンバーの成果というのは分かりづらいことも多いです。
それを知ってもらうために「意識的」に情報を共有していくことが大事です。
そこで今は次の4つについておこなっています。
- (3−1)品質保証部内で他ユニットについて知ってもらう
- (3−2)品質保証部について知ってもらう
- (3−3)品質保証部の活動について知ってもらう
- (3−4)QAという領域の解像度をあげてもらう
(3−1)が部内であり(3−2)〜(3−4)が部外への取り組みとなります。
部内についての取り組み
部外だけでなく部内から「情報共有」を意識的におこなうようにしています。
横断組織でもある品質保証部だと「意識」しないと他メンバー、他ユニットの状況を知らないということが起きます。
そこで次の「場」を用意するようにしています。
- 部定例(週1):オンライン
- 期中ふりかえり会(期中に1回):オンライン
- QA Summit(半期に1回):オフライン
「部の半期の流れ」を型化し、可視化することでどういう「場」があるかを分かりやすくしています。
また「場」についてはつくって終わりではなく、都度改善するように定期的にフィードバックをもらうようにしています。
部外についての取り組み
部外の人に品質保証部の存在やおこなっていることを知ってもらうということは重要です。
そのため「社内向け」「社内外向け」として次のようなことをおこなっています。
- 社内向けの発信
- 全社向け
- QAに関する記事の作成と共有
- プロダクトサイドメンバー以外への連携へ向けた活動
- PdE向け
- PdE新規入社メンバー向けのオンボーディング
- プロダクトメンバーが集まる場での部からの定期的な情報発信
- 部内LT会
- 全社向け
- 社内外向けの発信
- ブログ
- 登壇
社内でLTを経験してもらい、そこから社外への登壇へ繋げたりなど「社内外」の両方に対しておこなっていくようにしています。
まだまだ、ここについてはやることが多く、特に今まで接点がなかったところに対してどのようにつながっていくかは今後の課題といえます。
補足
登壇および登壇資料で情報が足りていない次の箇所について説明します。
- 進めていった中での課題
- これから先やろうとしていること
進めていった中での課題
前提として、これらが進められたのは「会社としてもともとあった文化」「部内外のメンバーの協力」があったからといえます。 しかし、進めるにあたって課題がなにもなかったわけではありません。
ある程度のスピード感で変化をさせていったため、本来は半期の中で分散しておこなえるはずのタスクが一度に発生してしまいました。 結果として、一定期間とはいえメンバーに負担がかかってしまいました。
そういった中で「この状況がどの程度続くのか」「いつ収束するのか」「今後どういったことを予定しているのか」といった面についての説明は不足していたと言えます。
私自身のタスクは週次定例などを通して共有していましたし、タスク自体はオープンにしていました。
しかし、全体的な流れは分かりづらいという課題がありました。
そこで「今期おこなう予定のこと」を期初に共有し、期中や期末でおこなったことをまとめて共有するようにしています。 またこういった共有は私だけでなく部、ユニットとしてできるように「場」を用意するようにしました。
これから先やろうとしていること
今回は土台を整えた話をしたわけですが、私が入社する前になにも土台がなかったわけではありません。 変化の早い環境において、その土台が弱くなってしまったといえます。
そこで、すでにあった土台を現状に合った形で「早く」アップデートをする必要がありました。 そして、アップデートし続けられるようにする必要がありました。
これですべてが整ったというわけでもありませんし、ここから先も早い変化が起こり続けます。 それに対して、適応し続けることが組織としては必要になってきます。
これからも変化し続けていけるように、次をさらに進めていこうとしています。
- ロードマップの作成と共有
- タレマネ施策を基軸とした組織としての柔軟性確保
もちろんこれ以外にも進めることはありますが、これらが現時点でコミットメントが強く優先順位が高いものになります。
ロードマップの作成と共有
品質保証部は「目指す姿」を掲げています。 これに向けてどう進んでいくかは、部・ユニットとして現在位置を確認しつつ、進めていきます。
それとは別に、私たちがこの先どのようになっている予定なのかのロードマップを作成しています。
今、掲げている「目指す姿」も数年後にはある程度ゴールが見えていて、次の「目指す姿」を作っているはずです。
中長期的な視点で見たときに、どうなっているかについてまとめ、それにむけて推進していけるようにします。
「目指す姿」のさらにその先に向けて、私たちはどうなっているかを作ることで、短期視点ではなく中長期的な取り組みもしやすくする必要があります。
タレマネ施策を基軸とした組織としての柔軟性確保
QA領域で求められるスキルはプロダクトの特性ならびに組織の状況に依存します。 そして、それらは徐々に変化もしていきます。
そういった求められるスキルの変化を部やユニットが把握し、対応できるようにすることはとても重要です。
そのためには、メンバーが「得意とすること」「今後伸ばしたいこと」を考慮したうえで、部やユニットが後押しできる体制を整えることが大事です。
このような取り組みが進むことで、組織としての柔軟性も高まっていきます。
したがって「部のタレマネ施策」は重要ですし、強くコミットメントをして進めていく必要があります。
なお、弊社は「タレントマネジメント」のサービスも提供をしています。 これらも活用しながら施策を進めていく方針です。
まとめ
JaSST'25 Tokyoでの登壇資料を元にしつつ、昨年9月(2024年9月)からおこなってきたことを紹介しました。
しかし、まだまだ組織としてはやるべきことはたくさんあります。 より土台を固めるだけでなく、土台を自律的に変化させられるような組織にしていく必要があります。
そして、これから組織としてさらに成長していくためには今いるメンバーだけでなく、新たなメンバーも必要です。
そこで、本記事を読んで、興味をもっていただけましたら、カジュアル面談をぜひご検討ください。 私たちと一緒にSmartHRの品質保証部を次のフェーズにもっていきましょう!