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PMが選ぶ!記憶に残るリリース 2022

こんにちは、プロダクトマネージャー(以下、PM)のadachiです。 SmartHR Advent Calendar 2022に参加しようとしたところ既にミチミチに埋まっていたため、泣きながらこれを書いています。

最近、採用活動をしていてよく聞かれるのが「SmartHRって具体的にはどんなもの作ってるの?」という質問です。これ「休みの日は何してるの?」っていうのと同じくらい難しい質問なんですよね。
でも確かに、人事労務のプロダクトだから具体的な機能は想像しにくいだろうし、日々のリリース内容はサービスサイトのお知らせから見れるけど、さすがに件数が多すぎるし、読んでもユーザーじゃないと何が嬉しいのかよくわからないですよね〜〜それはそう〜〜
…と思ったので、師走ということもありますし、今回はSmartHRのPMたちに「2022年で一番印象に残っているリリース」を聞いてみました。

正直、人事労務SaaSのアップデート内容を、人事労務担当者ではない方向けにお伝えしようとすると「細かすぎて伝わらない」感じになってしまう懸念はあるのですが、なんとなく雰囲気だけでも伝われ!という気持ちでお送りして参ります。

2022年、SmartHRのPMはどんなリリースが記憶に残っているのでしょうか?長文になりますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

※ 以下、見出しのカッコ内はPMの名前です。

従業員リストのカスタムダウンロードフォーマット(makikot)

どんな機能ですか?
従業員リストを他社システムのフォーマットに合わせてダウンロードできる機能です。

どんな課題を解決しましたか?
これまでSmartHRの従業員リストは、決まったフォーマットでしかダウンロードができませんでした。そのため、他社システムへ従業員データを連携する際、Excelなどで連携先がインポートできる形式に変換する必要があり、お客さまに負担をおかけしていました。
このリリースにより、SmartHR上で「項目名の変更」「値や形式の変換」「項目の分割・結合」など、他社システムに合わせた変換内容を登録してダウンロードができるようになり、連携業務を手間なく行えるようになりました。

印象的だったことは?
PMMによるこの機能の企画検討が始まったのは2019年だったと思います。その後、優先度の都合でしばらく動いておらず、再始動したのが2020年5月。そこから段階的なリリースを経て、いったん完了したのが2022年1月。長かったですね。長かった分、関わってくれた人の数も多く、たくさんの人の思いが詰まった機能です。
最も印象に残っているのは、企画当初こういった要件で進めようとなったあとに、いくつかの懸念が見つかり、改めて考え直して大幅に要件を変更したことですね。当時は不安もありましたが、今、実際に多くのお客さまに活用いただいている状況をみると、あの時に変えて良かったなと心から思います。

扶養する家族の申請機能(futosi)

どんな機能ですか?
扶養する家族の情報を従業員から申請できる機能です。

どんな課題を解決しましたか?
これまで扶養する家族の情報は、入社時に従業員に入力してもらう「招待フォーム」か、社会保険の手続きをするための「扶養追加の手続き」機能でしか収集できませんでした。そのため、家族情報に変更があっても従業員から更新がしにくく、最新の情報を保持できてるかどうか分からないという課題がありました。
このリリースにより、扶養する家族の情報を従業員がフォームで申請できるようになり、定期的に家族情報を従業員本人に確認・修正してもらえるようになりました。

印象的だったことは?
実はこの機能を提供すると、別の課題が生まれてしまう懸念がありました。申請フォームで扶養する家族の情報を取得してしまうと、プロダクトの構造上の問題で、その家族の社会保険手続きを作れなくなってしまうのです。
しかし検討の結果、この課題は社会保険手続き用の新プロダクト「届出書類」を提供することで解決できました。SmartHR本体だけに閉じず、別のプロダクトも含めた体験を考えて判断できたことが印象的でした。

従業員履歴の一括更新機能(gackey)

どんな機能ですか?
ExcelやCSVファイルを取り込む「従業員情報の一括更新」において、過去の日付の情報を上書き更新できる機能です。

どんな課題を解決しましたか?
SmartHRの従業員データベースは、現在の情報だけでなく、過去の変更履歴も保持することができます。企業が管理する従業員の履歴情報は、部署や役職、等級など多岐に渡りますが、登録の間違いなどが発生した際、履歴をまとめて修正したいことがあります。
これまでは一括での修正ができなかったため、登録済みの情報をひとつひとつ、手作業で削除してから再登録する必要がありましたが、このリリースにより、いつでも・いつの情報でも一括で上書き更新ができるようになりました。

印象的だったことは?
「従業員情報の履歴管理」機能がリリースされた2019年から求められ続けていた機能を3年ごしで提供できたことがとても感慨深く、ユーザーやサポートチームから「これを待っていました!!」という反応もたくさんいただけた機能でした。

部署マスターの履歴管理機能(nabe3)

どんな機能ですか?
部署マスターの変更履歴の閲覧や操作ができる機能です。

どんな課題を解決しましたか?
組織情報や従業員の異動履歴を適切に管理するためには、部署情報の履歴を正しく管理する必要があります。
しかし、これまで部署マスターの履歴はユーザーからは閲覧・操作ができない状態でした。そのため「A部署の名称って数年前にに変わったはずだけど、いつからいつまで前の名称で使われてたんだっけ?」といった情報を確認できなかったり、「本当は2022/12/01付けで登録したかったのに、2022/12/02付けで登録してしまった」といった場合に履歴の修正ができず、従業員の異動履歴を適切に管理しにくい状態でした。
このリリースにより、ユーザーが部署の履歴を見ながら修正できるようになり、正確な履歴データを保持することが可能になりました。

印象的だったことは?
この機能は、今年の1月に入社して初めて取り組んだ大規模な機能開発でした。当初はユーザー業務の解像度が高くないことや、既存仕様が複雑であったことからとても苦戦しました。しかし、社内の労務担当へヒアリングしたり、これまでユーザーの皆さんから頂いていた要望を見ていくうちに解像度が上がり始め、「課題解決するぞ!」と開発が楽しくなってきたことを覚えています。
また、当初はスコープの大きい開発だったのですが、「この価値だけでも先に提供できるとユーザーは喜んでくれるのでは?」とチームで仮説を立て、分割してスピード感のある価値提供ができたこともとても印象的でした。リリース後、実際に喜んでいただいている声を聞いてとても嬉しくなりました。

年末調整で生命保険・地震保険の電子的控除証明書に対応(Hiroponchack)

どんな機能ですか?
年末調整で生命保険および地震保険の申告を、電子的控除証明書でできるようになりました。
電子的控除証明書とは、保険の紙の控除証明書が電子データに置き換わったものです。電子的控除証明書をアップロードいただくと、手入力が「ほぼ」必要なく、保険の情報を登録・申請できます。

どんな課題を解決しましたか?
年末調整で保険の申告を行う場合、これまでは紙の控除証明書を提出する必要がありました。この場合、従業員と担当者それぞれに以下の図で示したような課題があります。

証明書が電子的控除証明書に置き換わることで、以下のように課題が解決されます。

印象的だったことは?
電子的控除証明書のサンプルデータがほとんど存在せず、検証のために実データが入ったファイルを集めるのに苦労しました。実際にリリースをしてみると、想定し得なかったパターンのファイルにも出くわしましたが、そのようなものだと思っていたので慌てず対処できました。
対応にあたってサンプルファイルが少ないのは開発ハードルのひとつなので、今後普及を促進していくのであれば、サンプルやリファレンスはより充実させてほしいです。

文書配付機能の権限アップデート(fumiya)

どんな機能ですか?
文書配付機能のさまざまな操作の権限を柔軟に設定できるようになりました。
↓が実際の画面ですが、「利用できる機能」にある操作の可否を設定することができます。

設定が山盛りですね!

どんな課題を解決しましたか?
文書配付機能は主に雇用契約の書面締結で利用されます。雇用契約の業務フローは各社さまざまで、どの業務を誰にやって欲しいかはユーザーさんによって異なります。
例えばですが、全国各地に店舗を構える飲食系の会社さんであれば、アルバイトさんの雇用契約書の作成は本部の人事労務担当者が行うが、雇用契約書にサインしてもらえたかの進捗確認や、サインしてもらえていない際のリマインドの再送信は各店舗の店長さんにやってもらいたい、といったフローがあります。
また、雇用契約書の中身に対しても「書類の中身までは見せないが誰宛ての書類かは共有しておきたい」とか「自店舗のアルバイトさんの雇用契約書は見てよいが他店舗のものは見せたくない」などいろいろなパターンが出てきます。
こういった複雑なニーズを包括的に解消することを目指したのが本機能で、それによってユーザーさん各社が理想とする運用フローを実現し、安全かつ効率的に業務を行える点に価値があります。

印象的だったことは?
実は文書配付機能にはもともと権限機能が存在していました。ところがこの既存の権限機能は何を設定するとどういう結果がもたらされるかがわかりづらく、非常に難解な機能でした(正直、仕様を理解している開発メンバーですら毎回混乱するほどでした)。
ゼロから権限の仕様を考えるならさほど難しくはないですが、既存のデータが不整合を起こさないように新たな仕様を考えるのはかなり悩ましく、印象に残っています。
ユーザーさんも既存の権限機能を前提とした運用をされていたので、業務を阻害せずに新しい権限機能へ移行できるよう、カスタマーサクセスグループやサポートグループとも団結してオペレーションにあたった点も、過去にない印象的な開発でした(本当に大変でした)!

アプリストア「SmartHR Plus β版」(kissy)

どんな機能ですか?
SmartHRと組み合わせて利用できる、外部パートナー企業が開発したアプリケーション(以下、アプリ)を紹介するアプリストアサービスです。

どんな課題を解決しましたか?
ユーザーの多種多様なニーズに応えるための土台となるプロダクトです。
前提として、さまざまな業種や業態、規模のユーザーから寄せられるニーズのすべてをSmartHRだけで解決するのは限界があります。自社開発では多くのユーザーから求められる汎用性の高い機能が優先的に開発されますし、一般的にも、特定のユーザーしか使わない機能をプロダクトに組み込むのは悪手とされています。
そこでわれわれは、外部のパートナー企業と連携・協働することでこのようなロングテールニーズに応えていきたいと考え、これまで他社サービスとのデータ連携アプリや、SmartHRにアドオンして使えるアプリをいくつか提供してきました。
そして今年の7月に公開したアプリストアでは、それらのアプリの特徴や活用方法を確認したり、資料請求やデモ依頼、アプリのインストールなどができるようになりました。その結果、お客さまはいつでもアプリの導入を検討でき、必要なタイミングで即座にアプリを導入できるようになりました。

印象的だったことは?
このアプリストア事業はかなり昔から検討されていたのですが(最初にアプリストア構想が発表されたのは2018年)、当時検討されていたアイディアがSlackやドキュメント、ときにはソースコードからも発掘されることが度々あり、タイムカプセルを見つけたときのようなエモい気持ちになることが多かったです。 SmartHR Plusという名前も、実は当時のままだったりします。

人事データを事業年度単位で集計・可視化できるように(soncho)

どんな機能ですか?
「ラクラク分析レポート」は、SmartHRに蓄積された様々な人事データをシンプルな操作で集計・可視化でき、日々の集計・報告業務を効率化できるプロダクトです。組織の状態や傾向を把握するための情報がレポートという形で見える化され、事業計画の検討や人材の採用・人員計画策定など幅広く活用できます。

これまでの分析レポートでは、人事データを年単位で集計・可視化する場合、対象年の1月〜12月を1年とした単位での可視化しかできませんでした。このリリースにより、年間の集計開始月を任意で設定できるようになり、事業年度単位での集計・可視化が可能になりました。例えば、4月〜翌年3月を1年の集計単位として、事業年度別の中途採用比率が可視化できます。

どんな課題を解決しましたか?
これまでは以下のようなケースに対応できず、用途が制限されてしまう状況でした。

  • 行政に提出しなければならない情報に関して、事業年度単位での集計が求められることがある
  • 事業計画の検討や人材の採用・人員計画策定などの際、事業年度単位で情報を集計・可視化して検討したい

印象的だったことは?
開発チーム内でリリース前の仮実装中の機能を操作しながら、お客さまに簡単に迷うことなく使ってもらうにはどうしたらよいか議論を重ねました。そのなかで、リリース時にヘルプページがあった方が、お客さまも迷わず操作でき、社内のサポートやCSのメンバーもお客さまに案内しやすそうだよねということになり、当初は予定していなかったヘルプページとセットで同時リリースすることになりました。
その効果もあってか、リリースした当日にお客さまから「早速試してみたところ、簡単に設定ができました」「待望の機能でした!」など嬉しいコメントをいただきました。また、そういったお客さまからのコメントは社内各所から開発メンバーへ能動的に伝えていただいたもので、今年で一番「この(プロダクト開発)環境最高かよっ」と感じた瞬間でした。

継続サーベイグループ(ryopenguin)

どんな機能ですか?
定期調査など、同じ内容のサーベイをグループ化し、回答結果の推移を可視化できる機能です。

どんな課題を解決しましたか?
従業員向けのサーベイは繰り返し実施することで、従業員の変化をとらえ、タイムリーなアクションを取りやすくなります。一方で、決められたタイミングで繰り返しサーベイを実施し、それらのデータを加工、分析する業務はサーベイ担当者の大きな負担となります。
今回リリースした機能によって、簡単な操作で継続的なサーベイの推移を可視化できるようになりました。今後はサーベイの配信自動化なども実現し、定期的なサーベイの実施をさらにサポートしていく予定です。

印象的だったことは?
従来の「従業員サーベイ」は単発のサーベイのみを行う前提の設計だったため、連続したサーベイのグルーピング、推移の可視化、将来的な定期配信の自動化といった要件を考慮すると大きな改修が必要でした。最低限の機能に削っても、開発開始からリリースまでに長い時間を要することになりました。
そこで機能をいくつかに分けて、重要度が高いものから開発し、できたところから都度ユーザーに操作テストを依頼する形をとりました。これにより細かくフィードバックを集められ、開発期間が長くなっても学習や軌道修正をしながら進められました。現在リリースから1ヶ月弱経ちましたが、すでに多くのユーザーにご利用いただいています。
ご協力いただいたユーザーの皆さまには、この場を借りて厚く御礼申し上げます!!

人事評価計算機能(ninomiya)

どんな機能ですか?
人事評価シート上に計算式を埋め込み、その計算結果を表示できる機能です。

どんな課題を解決しましたか?
人事評価の方法のひとつとして、従業員の入力内容から点数を算出するケースがあります。紙で評価を運用している場合、手動計算によるミスが発生したり、Excelで行う場合には、関数を壊してしまうといった問題も起こりやすく、人事担当者が人事評価を運用する際の作業負担や、心理的負担になっています。
このリリースによって、従業員が各項目に点数を入力すれば自動で計算が実行できるようになり、計算する作業工数が減らせたり、計算ミスといったリスクがなくなりました。

印象的だったことは?
関数を使った計算式はSmartHRでは前例のない機能であったため、プロダクトエンジニアが勉強会を開いて知識を深めながら開発を行ったり、複雑な計算式を簡単に設定するためのUIをチーム全員で検討したり、いつも以上にチーム一丸で取り組んだと思います。
また、この機能は人事評価機能に対して一番要望が多いものだったので、提供できたことでようやく人事評価システムとして戦えるプロダクトになったと思います。

従業員を指定した組織図の作成機能(yacco)

どんな機能ですか?
組織図を作成する際に、組織図に含める対象を従業員単位で指定できる機能です。
組織図機能は、SmartHRに登録されている部署情報・従業員情報をもとに、自動的に部門の階層構造と各従業員の所属を可視化するプロダクトです。これまで組織図を作成する際には、その組織図に含めたい「部署」を指定する仕様となっていましたが、今回の機能追加で「従業員」単位での指定もできるようになりました。

どんな課題を解決しましたか?
部署情報に影響されない組織図を表現したいというニーズに対応できるようになりました。
例えば、部門横断型のプロジェクトチーム体制図を作成する場合、そのチームに所属する従業員を一人ひとり選択して指定することで、チームメンバーだけが記載された組織図を作成できます。また、部署情報を持たない社員(例:配属先未定の新卒社員など)を組織図へ反映するといった使い方も可能です。

印象的だったことは?
今回の機能開発では、UIや仕様を決めるにあたってプロダクトデザイナー主導によるモブデザイン会を複数回実施しました。モブデザイン会では、UIを検討するのと同時に各画面での操作に対する挙動も合わせて議論し、仕様を固めていきました。
はじめはデザイナーの提案に対してどこまで踏み込んだ意見をしてよいのか迷う場面もあったのですが、回を重ねるごとに指摘や議論ができるようになり、最終的にはデザイナーの方にもとても有意義な場になったと言ってもらえ、チームにとって非常に良い経験となりました。また、この取り組みのおかげで開発メンバーが実装前に細部までイメージできる状態になっていたため、その後の工程をスムーズに進めることができました。

最後に:引き続き各職種、募集中です!

以上、PMが選んだ記憶に残るリリース情報でした。手広く色々やってるんだなとか、結構泥臭いことやってるんだなとか、まだまだ伸び代たくさんありそうだなとか、SmartHRの開発現場の様子が少しでも伝わったなら幸いです。

来年はもっとたくさんの価値を届けていきたいですし、そのための開発メンバーがまだまだ足りていません。少しでも興味をお持ちの方は、ぜひお話しましょう!

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