SmartHR Tech Blog

SmartHR 開発者ブログ

教えて先輩! DevRelの立ち上げ方(後編)社内の関係づくり、社内イベント、最も大切なこと

写真:みんなで記念撮影。左から玉田大輔さん、杉田絵美さん、櫛井優介さん(941さん)

2023年夏、SmartHRでDevRel(Developer Relations)が始動しました!
SmartHRのDevRelは生まれたてほやほや。会社、そして担当者自身にも経験や知見がありません。

そこで、他社で積極的に活動をされているDevRelの先輩がたをお招きして座談会を開催しました。
前編に続く後編では、社内の関係づくりや、社内イベント、DevRelとして仕事するうえで最も大切なこと、立ち上げ時にやるべきことについてお話をうかがいました。

(座談会は2023年9月に行いました。内容は当時のものです)

目次

座談会メンバー

櫛井優介さん(以下、941)

LINE株式会社(現LINEヤフー株式会社)
Developer Relations室 Developer Successチーム所属

2004年ライブドア入社。2008年よりイベントなどを担当し、2018年3月より現職。
主に技術広報活動全般、技術系イベントの運営や各種イベントのスポンサー窓口を担当。スタートレックとHHKBとビリヤードとBTSが好き。

X:@941

杉田絵美さん

株式会社MIXI
開発本部 たんぽぽ室 DevRelグループ マネージャー

大手グルメポータル創業期から上場までエンジニアとして従事。米国留学後、2009年にミクシィ(現MIXI)入社。SNS mixiなどの開発に携わり、EM、新規事業のPdM、技術広報、採用人事を経て、現在はたんぽぽ室DevRelグループにて技術・採用広報のほか、社内外技術者コミュニティの支援等を行う。趣味は旅とカメラ。

X:@semiemi7

玉田大輔さん

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
技術統括部エンジニアリング室・技術広報

2009年にDeNAに入社。エンジニア、スクラムマスター、人事、事業開発などを行い、2018年7月より技術広報。DeNAの技術ブランディング責任者を担う。DeNA TechCon の Organizer を 2019年から担当しており、2019年に社長賞を受賞。趣味は剣道で五段、地域道場の先生をしている。

X:@tamaclaw

聞き手:稲尾尚徳(以下、inao)

SmartHRのDevRel。前職は編集者。

X:@inao

社内の関係づくり

inao:みなさんの会社、すごいエンジニアの数が多いじゃないですか。うちは100人くらいですけど、私はまだぜんぜん開発者の方のお顔とお名前が一致していません。社内の開発者の方との関係作りってどうされてますか?

941:先ほども言ったんですけど、うちは領域ごとに担当制になっていて、たとえば私ならインフラとかセキュリティとかなんですけど、定期的なミーティングをセットしてもらって、だいたい冒頭に5分ぐらい時間をもらって「年間でこういうことやりたいです」とか「こういうことやりませんか」っていうロードマップを領域ごとに作って、それに対して途中の経過報告をしています。「今度イベントあるんですけど、何かありませんか」と提案したりしているので、隔週ぐらいでコミュニケーションが取れるようにはしています。

ただ、それだけだと現場の人たちとの距離っていうのはあんまり縮まらないのかなと思っていて。ミーティングに来るのはいわゆる室長とかマネージャーとかマネジメントクラスなので。僕らがやりたいのはむしろ現場がどう思っているのかを知ることで、現場から「これをやりたい」って言われたいんですけど、なかなか言われる機会がないんで。領域ごとにSlackのチャンネルを作って、何でも相談してください、みたいな窓口は作っておくんですけど、なかなか相談されないので、こっちから「ランチに行こうぜ!」とか何か声をかけてます。

あとはたまにイベントとして現場の人とDevRelとのランチ会をセットして、そこでヒアリングしたりっていうのをやるようにはしてますけど、なかなかワークしないですね。みんな忙しくてタイミングが合わないのと、対象が多くて全部はやりきれないっていうところもあって。あと予算もなかなかつけづらい。

玉田:ランチの予算が?

941:そうなんです。最近はちょっとお休みしてますけど、一応積極的にコミュニケーションを取ろうというのは常にやろうとしてます。

櫛井優介さん(941さん)

玉田:技術カンファレンスのブースを一緒に考えるのが、私はいいなと思ってて。一種の1年に1回のお祭り、高校時代の文化祭をみんなでやるみたい感じで。最初のほうは採用担当の人と、企業色の強い事業の宣伝みたいなのをやってたんですけど、なるべく最近はそのトーンを落として、どっちかっていうとエンジニアのみんなで何か企画作ろうぜって集まって、部署を超えて、有志の人がいろいろ作って。で、自分たちが考えたから自分たちで作るぞみたいなのがなるべく起こるようにしようとしています。iOSとAndroidはそれがうまくいきつつあって、あと新卒入社したメンバーをそこに誘って、新しい風も入るようにしたりしてます。

ただ、ある程度やりたい人がいるところは回るんですけど、やりたい人がぜんぜん出ないところとかもあったりするんですよ。みんな忙しすぎて「誰か行かない?」「しーん」みたいなこともあって。そこに対しては、まずはカンファレンスに行く状態を作ろうってことで、チケットを一定数買って「行ってください!」と。行くことが決まってから「ちょっとみんなで企画やりたいんだけど、どう?」って相談する(笑)。そしたら知っている人が何人か、企画に声を出してくれて。そこで一緒に盛り上がっていくみたいな、そういう流れをつくりたいなと思っていて。

inao:先にチケット買うんですね!

杉田:ね!

941:イベントによってはまとめ買いできるんですよ。交渉次第なんですけど、スポンサーにだいたい何枚かついてきたりするときに「10枚買うから安くしてくれない?」と交渉してみるとだいたい売ってくれたりするんで。そういうので買ったりします。

玉田大輔さん

杉田:うちはそもそも組織自体にいろんな事業があるので、事業ごとにエンジニアも入ってる感じなんですね。で、横軸で技術を見る開発本部も別であるんですけど、基本はその現場に事業部ごとにエンジニアが入っていて、そこにアプリエンジニアとか、サーバーサイドエンジニアとか、いろいろばらけているので、なのでミーティングをやるにしても、けっこう工数かかってしまったりするので、基本はSlackで日々コミュニケーションしています。devrel-shareっていうチャンネルがありまして、そこには400何人かいるのかな。告知もしますが、エンジニア自身も普通に発言したりとかして、真面目な技術の話もしています。

それ以外にも各技術の、SREだったらSREのチャンネルもあるので、そこで日々交流したりとか、あとは勉強会ですね。こういうイベントがあるから一緒にその動画を観ながら勉強会をやろうかみたいな話が出てきて。

inao:一緒に動画見ながらやるってどういうのですか?

杉田:たとえば、Google I/Oって、英語じゃないですか。ちょっと1人で観てるとわかりにくかったりするので、「ここちょっとわからなかったけどどう思う?」「どういうこと?」みたいな話をしながら理解を深めるんです。

941:パブリックビューイング的な。

杉田:そうですね。

inao:リアルに集まって?

杉田:前はリアルに集まってやってましたけど、最近はオンラインですね。

玉田:特にiOSとかAndroidは、プラットフォームの変更に従わなきゃいけないから。

杉田:プラットフォームに影響受けちゃう部分が大きいので、そこのノウハウは共有し合ったほうがいいんですよね。また、最近は月一でSREの勉強会をやってますね。その月の各事業で起きたこととか、ポストモーテムの共有とかをしています。

inao:ほう。登壇者形式で?

杉田:そうですね。「なんか発表することある人?」みたいな感じで。

玉田:準備工数を少なく抑えてるんですね。

杉田:そうですね。

あと、私は物理出社をなるべくしてます。

一同:へえー!!

杉田:週一くらいですけど。

941:なんでですか?

杉田:けっこう最近、出社してる人が多いじゃないですか。やっぱり顔合わせて、ちょっと挨拶するだけでも違うと思うので。オンラインだけだと実際の印象が違ったりとかするし。

あとは何かあえてミーティングすることでもないし、Slackでメンションするほどでもないけど、ちょっとなんかお話したいみたいなことがあったりすると一瞬で解決したり。オフィスで遠くのほうで話し声とかして盛り上がってたらちょっと遊びに行ったりもしてますね。

941:たしかに、飲み会とか、ちょっとすれ違ったときに話すことって重要だったりしますよね。今はあまりしなくなっちゃいましたけど、前はすごいがんばってやってました。 「ちょっと何々してみましょうよ」とか、冗談で言ってみたら意外と反応いいな、とか。

杉田:そう、オンラインだと無表情だったりして「これはOKなの? NGなの?」みたいなことがあったりするので。そういう意味ではフランクなコミュニケーションも必要だと思います。

玉田:感謝も伝えやすいですしね。この間はありがとうございました、とか。

杉田絵美さん

社内イベント

inao:社内のイベントの話が出ましたけど、社内限定のイベントとか勉強会はどういったものをどれぐらいされているかをお聞きしたいです。特にLINEさんは、「オンラインで『Tech Talk』という技術ミートアップをだいたい月に2回ぐらいのペースで開催」していて、「『Tech Talk』のような社内の技術共有会はエンジニア組織を抱えている企業だったら必ずやるべきことのアクションの1つ」と記事(「社内の開発組織がより良い環境になるように Developer Successチームが手掛ける、インプット→アウトプットのトータルサポート - ログミーTech」)にありましたが。

941:規模が大きくなってくると、横が何してるかわからないとか部署で閉じちゃったりして、横断系って難しくなってくるんですよね。技術の良いところって、技術で語れるじゃないですか。クライアントでもフロントエンドでもサーバーサイドでもいろんな技術があるので、そこを軸にするといろんな部署の人が集まってくれるのでいいなと。

なのでこちらで準備するのは、月に1回Tech Talkをやりますという箱を用意して、登壇者のアサインは数ヶ月前から依頼しておいて、あとはイベントの集客とか社内周知とかの手伝いをするだけって感じですけど、継続してやってますね。私は直接は関わってないですけど。

定期的にやってるってことも大事。「じゃあこのネタは今度のTech Talkで発表させてもらおう」とか「社内ツールの新しい機能を作ったんだけどどこで周知したらいいだろう」みたいなことにももそういうところで機会を作れたりするので。規模が小さいほどけっこう効果的に働くので、100人、200人のときは絶対にやったほうがいいと思います。

あとうちだと、1年に1回、自由研究発表会をやってて。これはもう何やってもいいんですよ。

杉田:それいいなあ。

941:長期休みで、何作ってもいいから、とにかく発表する場があったらみんながんばって作れるでしょっていうとこで。最近は年に1回どころじゃなくて3回ぐらいやってるんですけど。

inao:そんなに!?

941:冬、夏、GWみたいな感じでやってます。参加者はみんなエンジニアなんですけど、普段やってる業務だけだと難しいし、前提知識も必要になってくるので、本当に何作ってもいいし、何やってもいいですよということにしてます。5分という制約があるLTの醍醐味ですけど、5分ならだいたいどんな話もみんな聞いてくれるんで。

それをやってたら「ヨーグルトを作ってみた」とか。

一同:

杉田:サバ缶作ったとかね(笑)。

941:あと物理的にデバイスの一部分がカチャカチャ動く、OPPOのデバイスが出たんですけど、それを歩かせてみたりとか、本当に普段の業務と関係ねえなって(笑)。

あと自分でWii FitみたいなエクササイズのARツールを作ってみたよとか、本当にいろんなことをやってる人がいて。うちのエンジニアにおもしろい人いるなっていうのを知ってもらうきっかけにもなるし、それきっかけで仕事の話が始まることもあるし。そういう、幅の広い、許容できるイベントみたいなのもやっています。

inao:一回何本ぐらいやるんですか?

941:無限に出てくるんで、一応20本くらいまでにして。

杉田:それは選ぶんですか?

941:基本は先着にしてます。会自体は2時間くらいでやって、相当盛り上がりますよ。150人くらい来ます。

inao:今はオンラインで?

941:オンラインです。気軽に登壇もできるし、見るほうも楽なので。気楽さを売りにしたイベントは登壇が気楽っていうほうが大事かもしれないですね。

inao:Tech Talkのほうは縛りはあるんですか? 毎回テーマを縛ったりしてるんですか?

941:どっちかっていうと部署にお願いする感じですね。たとえばJavaの新しいバージョンが出たら社内の詳しい人に「社内に共有してもらうために登壇してくれませんか」って聞いてみたり。

inao:その他に勉強会もあったりするんですか?

941:勉強会は各部署でやってるんですけど、部署を飛び越えて全体としてやりたいというのは違うニーズとしてあるので、定期的にやってる感じですね。

inao:勉強会はもう、勝手にやってくださいと。

941:そうです、部署ごとで勝手にやってる。そこで「うちの部署の勉強会なんだけど、他にも来てほしいんだよね」という相談があったら、Tech Talkとはまた別で、社内広報はします。

玉田:うちでは、社内勉強会は大きく2種類あります。一つは、事業部横断の技術コミュニティです。技術コミュニティにはAndroid Tuesday、SwiftWednesdayなど全部で9個あって。

941:毎週やってるんですか? すげえ!

杉田:確実に毎週やってるんですか?

玉田:確実かどうかわかんないけど、そうですね。技術コミュニティはホームページに載せてるんですけど、最近Unity.ThursdayとWeb Frontend 勉強会が立ち上がりました。ほかに、vimrc読書会をやったり、うちはGoogle CloudとAWSの両方を使ってるんですけど、それぞれのカスタマーエンジニアとかソリューションアーキテクトとかが参加するGCloud Monday、AWS Workshopをやったりとかっていうのが全部で9個あります。

もう一つの事業部内勉強会のほうはさっき数えたら20個ぐらいありました。もともとはこんなになかったんですけど、2年ぐらい前に「DeNA Engineer Quality」(以下、DEQ)っていうDeNAのエンジニアとして大切にしていきたい価値観を言語化したものを会社が作ったんですよ。半年に一度、このDEQについてのサーベイを行っており、DEQの支援・体現の状況と阻害要因を定点観測したり、サーベイ結果をもとにDEQが体現されやすい組織改善のサイクルを回すことを行っています。そこに「Expand your horizons」という指標があって、「あなたが学んだことを外部に発信したり、いろんなことを学べるようなことを支援する組織ですか」って聞くようにしたんですよね。

で、半年に1回アンケートを取ると、その組織でできていないことが見える化される。そこから、事業部内勉強会がたくさん開催されるようになったんですね。私が組織指標を取り入れて一番良かったなって思うのは、そういう発信、情報の流通がすごくしやすくなったところかと思います。

inao:アンケート結果は具体的にはどのように展開しているんですか?

玉田:半年に1回のアンケートを僕らエンジニアリング室がとって、集計して各事業部のエンジニアマネージャーに渡しています。エンジニアボードって僕らは呼んでるんですけど、各組織のエンジニアトップの人を集めて、それを見ながら、各組織ごとに振り返りなどもしてもらいます。うちの組織はこれが良かったよって展開してくれるようなエンジニアトップの人がいたりとかして、そのノウハウを横展開したりするんですよ。もちろん、組織課題が見える化されるところも出てきます。

941:その組織が慌てる、と。

inao:個々の勉強会は勝手にやってくださいみたいな感じで自由に?

玉田:各事業部の社内勉強会は勝手にやってますし、横断の勉強会も勝手にやってると思います。ちょっと支援したりはしてますけど。

杉田:うちは四半期に一度、MIXI DEVELOPERS MEETING(別名:エンジニア総会)というイベントを開催しています。

それは何かっていうと、全社的なエンジニアの交流の場ですね。CTOが話をするのと、その時々で話してもらう部署は違うのですが、各部署のエンジニアに今こんなことをやってますとかを共有してもらっています。あとは懇親会で、LT大会とかをやっていますね。やっぱり自分が所属する部門のことしかわからなくなってくるので、会社全体のことを知ってもらう機会としてだったり、いろんなエンジニアがいるよっていうところで、交流してもらう機会としても実施しています。

各技術トピックの勉強会や共有会は、適宜DevRelで企画することもあるし、有志で集まって各技術に関する勉強会をやってくれていたりします。

あとは勉強会じゃないですけど、社内のブログもけっこう書かれている。

941:社内の?

杉田:ですね。社内の人だけが見れるブログです。社外に出せないようなこともけっこうあるので、社内だったらハードルも低いじゃないですか。それをさっきのdevrel-shareチャンネルに新着記事として共有しています。

うちは勉強会とか、なかなか腰が重いんで。ゲームもあるし、普通のアプリもあるしで事業ごとに繁忙期が違ったりするので、時間の調整が必要な勉強会とかよりも、自由な時間に書ける社内ブログのほうがワークしてるのかもしれないですね。

inao:そこからテックブログに昇華したりもするんですか?

杉田:してたりもしますね。

inao:エンジニア総会はオフラインですか? ハイブリッドですか?

杉田:ハイブリッドをこの前やりました。もともとはオフラインでやってたのをリモートワークが多くなったタイミングでオンラインにして、懇親会もオンラインでやって、お弁当をそれぞれに送って。前回は、出社も増えていたので、オフライン会場も即席な感じで設けてハイブリッドで。

最近オフラインもそろそろいいかもねって話はしてます。地方に住んでるメンバーもいるので、完全オフラインということにはならないかなと思いますが。

写真:座談会の模様。談笑する941さん、杉田さん、玉田さん

DevRelとして仕事するうえで最も大切なこと

inao:まだいろいろテーマが残っていますが、時間があと10分くらいですね。

941:「一番大事なこと」と「これをやったら」の話をしたほうがいいんじゃないですか。

inao:そうですね、そうしましょう。まず、DevRelとして仕事するうえで最も大切になさっていることはなんでしょうか。

941:一個じゃなかったんですけどいいですか(笑)。

いろいろ考えたんですけど、私達のチームで考えてるのは、ホスピタリティです。エンジニアのためになることを必ずしたいよねって話をしています。満足度を上げるっていう意味でも、言われてそれをこなすだけでもなくて、やるんだったらさらに、みんなにとってより良いものにしていきたいので。そのために必要なのは多分、ホスピタリティ。

能動的であることはすごく重要だと思っています。言われたら言われっぱなしで終わることもありがちなので、「やるんだったら、もっとこうしませんか?」と提案する。何も言われてなくても、「こういうのをやったらいいと思うんですけどどうですか」と積極的に提案しにいくことも多々あります。そのほうがいい結果につながることが多いです。

あとはエンジニアとの信頼関係を保ち続けることがすごく大事です。スポット、スポットではできても、やっぱり継続していかないと次につながっていかない。そのための活動は怠らないようにはしてます。普段のコミュニケーションもそうだし、こっちからグイグイいくようにしてますね。

inao:振られてくるのと、自分からいくのとどっちが多いですか。

941:自分からいくようにしてますね。業界の情報をキャッチアップして「うち、これできてないと思いますけどやりませんか?」とか、「こういうイベントが今度立ち上がるみたいですけどうちとしては興味ないですか?」とか、こっちから提案する。現場は忙しいので、採用活動や広報活動になかなか目が届かないっていうのも当然あるので、僕らのほうが投げかける役割かなと思ってますね。

玉田:僕も一つではなく、二つです(笑)。

まず関係者、エンジニアへのリスペクトというか、感謝というか、また一緒にやりたいなって思っていただけるコミュニケーションは、やっぱ外せないなと思って。僕らが自分でコンテンツを書くわけじゃないし、僕らが登壇するわけでもない。あくまで主役はエンジニアの方々なので、気持ち良く動いていただけるようにすることは外せないなと思います。

もう一個挙げるとしたら、作った後に、それを見直すというか、否定するというか。年に1回技術カンファレンスやる、スポンサーやる、ブース展示やる。魂込めて作るじゃないですか。だけど「それが完成形だ!それでずっといこう!」ってならないようにしなきゃいけないなと思っています。次の年には去年やったことを否定するような考え方で、新しくやるには、今の時代だったら何をやったらいいんだろうと考え続けなきゃなって思ってて。それができてなかったら良くないし、それをちゃんとやってるときは、毎年なんかリニューアルできてるな、変化あるなって実感できます。

杉田:エンジニアとの関係は大事だなと思いつつ、対エンジニアだけじゃなくて、社内の法務やいろんな関係者もそうだし、対コミュニティであったり、対メディアであったり、関わるすべての人に対しての誠実さと謙虚さは大事にしています。

あとは、うちの開発部隊では常に意識されている部分ではあるんですけど、スピードと品質。スピード感は失いたくはないし、あとは品質も、中身のない結果は出したくないし、っていうところで。そこはけっこう、私がエンジニアだったころと同じような感覚でやってはいますね。

あとは柔軟性かな。こんにゃくのように。

941:柔軟性は大事ですよね。

「前例がないからできません」とか言い始めると何もできないので、自分がファーストペンギンになることってすごく多いんですよね。だから柔軟であること、あとはやっぱりスピード感ですね。前例がないからって立ち止まっちゃうと進まないので、本当に。「とにかくまずは聞いてみるか」みたいな姿勢はすごく大事ですね。

大きな会社からLINEに来た人がいて、「今度こういう海外のカンファレンスで50万円ぐらいのスポンサーしたいんだけど」と言われて「はい、わかりました。申し込んでおきました」と進行したらめちゃくちゃ驚かれて。大きな会社だと半年かかるんですって。それが秒で終わるから「すごいっすね」と。あらかじめ予算をとっておくとか、速く動けるようにいろんなことを普段から準備してるんですよ。あとは、初めてのことに動じないでパッと行けるっていう心持ちが必要なんだと思いますけど。

スピード感と柔軟性はめっちゃ大事だと思います、確かに。

inao:ありがとうございます。

DevRel立ち上げ時にやるべきこと

inao:今、立ち上げ時なんですけども、まずこれを最初からやったほうがいいよっていうことをアドバイスいただけませんか?

杉田:自分の得意なところからやるのが一番だと思います。

inao:そうなると編集、テックブログとかですか。

杉田:そうですね。

うちの新しいメンバーも、どちらかというとライティングのほうが得意だったんです。元エンジニアじゃなくて、技術的なことは詳しくないけど、インタビューとかはできる。で、まずは社内に顔を広げるという意味でも、いろんな部署のエンジニアやチームにインタビューをやってもらったりしました。

941:仕事を一緒にすると付き合いも深くなっていくから。

私は一番最初に何をやったかっていうと、事業部のエンジニアの一番偉い人とずっとランチしてたんですよ。すごくずるいんですけど、その人と握ってさえいれば、もう方向性で外すことないだろうっていう、打算的な面もありつつ。その方はすごいシャイで、1ヶ月間ぜんぜん話してくれなくて。やっと1ヶ月経って笑ってくれるようになって「やっと打ち解けてくれた!」みたいな。それ以降ちょっと信頼してもらえるようになりました。部署とかチームのコアになってる人っていますよね。コミュニケーションのコアになってる人。

杉田:キーパーソン。

941:キーパーソンを押さえるっていうのは絶対やったほうがいいと思ってて。たとえば記事を書くにしても、誰の話を聞いたら当たるのかわからないじゃないですか。SmartHRとして出すべきなのかどうかっていうのもわからないと思うので。

そういうとき「こういうことやろうと思ってるんですけど、どこら辺に聞いたらこういうのって進むんですかね」って相談できるように、キーパーソンたちと圧倒的に仲良くなることが大事だと思います。

inao:なるほど!

941:これは処世術ですけど。

杉田:うちでもCTOとは極力、距離を近くしてますね。あとは顔が広い人を見つける。

941:顔広い人、飲み会得意な人とか押さえておくと楽ですね。はい。

「今どき飲み会かあ」とも思いますけど、圧倒的にコスパがいいです。その後めちゃくちゃ仕事しやすくなります。飲み会も、「ちょっと1回時間もらえませんか」ってちゃんとセッティングをして、まずはこっちがいろいろなことができると感じてもらうっていうのは大事だと思うので、そこからやると良いかもしれない。

inao:ありがとうございます。

玉田:僕がinaoさんになるんだったら、やっぱりinaoさんの得意なところをやっていくのがいいだろうなって思います。スキルセットもそうですけど、持ってる人脈が他のDevRel、技術広報とは違いすぎるので、そこをうまく活かした何か新しいことをぜひやっていただけたらなあって思いますね。やっぱりそれぞれの企業で得意なことは違うので、どういうことをやられるのかっていうのはすごい楽しみにしてます。

941:私だったらSmartHRのVPoEみたいな人にインタビュアーをやってもらって、各界の著名な、inaoさんとつながりのあるエンジニアの人たちにインタビューするっていう企画をSmartHRの名前でやります。

玉田:確かにそれ良さそう。

941:Javaの最新の話を聞くとか、Androidの今とか、いくらでもやりようがあって、絶対見られると思いますよ。

玉田:それを文章にして記事にして出すっていうところが、inaoさんのスキルセットが活きていいですよね。

941:かつSmartHRの名前も出るし。

inao:ありがとうございます。そのまんま、やります(笑)。

941:絶対やれると思いますよ。めっちゃコスパがいいと思います。

メンターになってくださいますか?

inao:これは記事に掲載するかどうかはあれなんですが、うちの会社、誰もDevRelの知見を持ってないので、メンターになってくださる方を探しているんです。みなさまはなっていただけたりしますでしょうか……?

941:玉田さんはもう厳しいよね(笑)。

玉田:本業やって副業もやって剣道もやってYAPCもやって、で、もう奥さんに怒られてるんで。

941:副業はいまなにやってるんですか?

玉田:ハイヤールーという会社で技術広報をやっています。コーディングテストサービスを提供している会社です。そこの社長の葛岡宏祐さんは元DeNAのエンジニアで、中卒でDeNAに入社して、25歳くらいのときにDeNA TechConでトラックAの一番いいところでめっちゃいい登壇して、そっからもう何年も経ってますけど、まだ29歳です。

一同:へえええ。

玉田:そこの副業が多いのと、YAPCのスタッフも初めてやっています。YAPCのスポンサーを担当していて、941さんにスポンサーをご検討いただいて、941さんにはフラれちゃってるから。

941:いろいろありましてね……。

inao:うちも玉田さんからお話いただいて、今回初めてYAPCのスポンサーをさせていただくことにしました。

941:メンターはたぶん私できますよ。申請してみないとわからないけど。

inao:えっ、できますか? おねがいします! おねがいします!! ありがとうございます!!!

杉田:では941さんにお任せします。私は本業のほうをまだまだ頑張らないと。

941:inaoさんの面倒を見てあげよう(笑)。

inao:inaoから170に変えようかな(笑)。

みなさま、本日は長時間にわたって有意義なアドバイスをありがとうございました。

制作協力:イトウヒロコ
写真:小山田 法師