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SmartHR 開発者ブログ

EMのキャリアチェンジを支える技術

これはSmartHR Advent Calendar 2023の15日目の記事です。

こんにちは。SmartHRの鈴木です。 この記事では今年の10月にProduct EngineerのSenior Managerから人事メンバーへとキャリアチェンジした僕の経験をご紹介します。 異動してから3ヶ月弱、ヴィムと聞けばVimよりBIMが、レコードと聞けばDBよりvinylが、delegateと聞けば委譲よりOh Honeyが想起されるようになり、順調にエンジニアの記憶が抜けおちてヒップホップ系人事への道を歩んでいます。

エンジニアから採用人事やデータを扱うポジションへのキャリアチェンジは時々聞きますが、僕は異動先で人材開発の仕事をメインに組織開発にも少し関わっています。 かつEngineering Managerからの異動、ということも合わせるとあまり聞かないケースな気がするので、体験を記しておくことにしました。 キャリアを考える際に、どなたかの選択肢が広がる一助となれば幸いです。

そもそもなにをしていたのか

変化の話なので、before afterのbeforeから触れることにします。

エンジニアとしての経験はちょうど10年で、エンジニア一本で歩んできたキャリアです。 SmartHRには2018年に入社し、2020年からEMをしております。異動前は労務プロダクト全体が僕の管掌範囲でした。 組織づくり、戦略策定、採用などをメインの業務としており、技術よりもマネジメントの方に強みを持つタイプのEMでした。

そしていま気がついたのですが、僕はエンジニアでなくなった今になり初めてテックブログを書いております。けしからんですね。 こちらのインタビュー記事に登場したくらいです。

現在なにをしているのか

afterの話です。 冒頭で少し触れましたが、現在の仕事は人材開発がメインです。 もう少し詳しく言うと「ミドルマネジメントの育成」をミッションとしています。

ベンチャーあるあるですが、急拡大を続けるSmartHRではミドルマネジメントの育成が急務となっております。 放っておくと組織のアキレス腱になりうるぞということで、そこのテコ入れをしています。 僕が現在やっている具体的な業務の例はこんな感じです。

  • SmartHRのすごいマネージャーの定義
  • それに近づくための一連の育成システムの設計
  • 各種マネジメントスキル向上のための研修づくりと講師
  • コーチング型マネジメントのティーチング

またいわゆるHRBP的な役割の方々と一緒に、事業側のマネジメント経験者として各部署のマネージャーへのサポートも行っています。 そのほか人事に事業の風、現場感みたいなものを取り入れるために細々したことをしています。

ポータビリティの高かったスキルを挙げてみる

前置きが長くなりましたが、本題です。

正直なところ僕はキャリアについてほぼ考えないタイプで、その時々に面白そうな方へふらふら引き寄せられてきました。 大学卒業後7年ほど就職せず高等遊民をしており、ふとエンジニアになり、なんとなくマネジメントを初め、今回もCEOの芹澤さんと人材・組織開発責任者の豊田さんのお誘いによりふらふらっと人事にやってきました。 そんな人間でもいまなんとかやれているのはなんでだろう?と考えると、エンジニア時代に培ったいくつかのスキルと経験で戦えているのだと思います。

自分がそうだったのですが、特定の職種を続けていると持っているスキルに実は汎用性があるということにはなかなか目が向きづらいものです。 言われるまでエンジニア以外のキャリアも広がっていることになど気がついてもいなかった、ということは実はよくあることなのかもしれません。 僕の場合そのスキルと経験とはなんだったのか?を3つほど記してみたいと思います。

スクラムマスターの経験

開発チームにいた頃はスクラムマスター的な立ち位置になることが多く、その経験はいまとても役立っています。 少し引いたところからチームを観察し、課題を特定して、チームに改善を促すという流れは、マネジメントを機能させるのを手伝ったりチーム運営のノウハウを渡していく仕事ととても似ています。 またときには業務の可視化やチームの振り返りなどのサポートを通して、透明性・検査・適応のスクラムのエッセンスを直接的に注入する場合もあります。

アジャイル開発の経験

アジャイル開発とベンチャー企業の業務の進め方 / 組織づくりはとても似ていて、抽象度をあげるとほぼ同じところに行き着くと思っています。 共通するのは「変化に対応し得る柔軟性の高い状態をつくる」という点で、SmartHRのバリューもアジャイル開発ととても親和性の高いものです。 どうやったらより素早くデリバリーできるのか、どうやったらより価値のあるものを届けられるのか。そういったことを考えながらプロダクト、組織を作ってきた経験は人事の仕事でも通用しています。

マネジメントの経験

マネジメントに関する仕事をしているのだからそれはそうだろうという話ではあるのですが、マネジメントロールを離れたいまマネジメントスキルのポータビリティの高さを実感しています。 細かいところを上げればキリがないのですが、抽象度のコントロール、メッセージング、傾聴、質問、関係構築、多様性理解、フィードバック、組織をまたいだ連携、そのすべてが役立っています。 「マネジメント」だとやや広すぎるのでコアスキルを絞るとするならば、コーチングスキルをあげます。 実は社内コーチも2年ほど務めているのですが、マネジメントスキルの底上げに一番効いたスキルです。 おそらくどんな職種でも役に立つスキルなので、コーチングをしっかり学ぶのは本当にオススメです。

人事を経験してみて

異動後に見えている景色にも触れておきます。 久しぶりにマネジメントロールをはずれ、新しい場所で新しい知識をインプットしているのが単純に楽しく、また得ているものも大きいと感じています。 特に視野だとか視座だとか、そんなところに大きく影響を受けています。

今までも職責上、全体最適観点はかなり意識して動いていたつもりではありました。 が、各職種特性を考慮した人事制度を作る場に居合わせたり、各部のマネージャーと話す機会が多くなったりすると、職種ごとにそれぞれの力学やプライオリティ、考え方が確かに存在することに気付かされます。組織の見方が立体的になるような、そんなイメージ。 あぁEM時代こういうところに配慮せずにコミュニケーションとっていたな、という反省も多く出てきます。 大手企業には高い役職につくには人事経験が必須のところもあると聞きますが、その意味がわかってきた気がします。

また部署横並びで見ているからこそ気がつくことも多く、ここの部署とここの部署のナレッジを共有しあえばお互い補えあえるのでは?だとか、この人とこの人をつなげてみると面白いかもしれないぞ?この人にこの知識をインプットしたらすごいことになりそう!とか、いまはそういうことを考えるのがとても楽しいです。

最後に

ふらふらと人事にやってきましたが、予想を上回って得るものが多く、またそれなりに戦えるもんだなと少し自信もつきました。 今後エンジニアに戻るのか、人事として生きていくのか、まったく別のことをするのかは完全にノープランです。 ただこんな経験をしているからこそ、それぞれのキャリアが相互に作用して特殊な人材になっていったら面白いかななどと考えています。遠回りしてこそ見えるものもある。 キャリアを考える際、どなたかの参考になれば幸いです。