こんにちは!タレントマネジメント領域のプロダクトマネージャーをしているyaccoです。
1年9ヶ月前にSmartHRに入社して以来、可愛い3人の子供たちの子育てと同じように、笑いあり涙ありのプロダクト育ての日々を送っています。
この記事は「SmartHRのプロダクトマネージャー全員でブログ書く2024」への参加記事です。25人が持ち回りで毎週記事を投稿します。ぜひご覧ください!
今日は、入社して最初に担当した「組織図」と「カスタム社員名簿」の二つのプロダクトの統廃合の話と、その最終判断のために取り組んだユーザビリティテストについてご紹介します。
実は、カスタム社員名簿は去る2月に開発を停止しており、4月には機能そのものが完全に廃止されます(このブログの公開後間もなくです)。
二つのプロダクトの統廃合の背景
組織図はその名のとおりのプロダクトで、SmartHRに登録された従業員情報をもとに簡単に組織図を作成できます。そして、カスタム社員名簿も組織図と同様に、SmartHRに登録済みの情報をもとに簡単に名簿を作成できるプロダクトでした。
つまり、この二つのプロダクトは利用者とユースケースが重複している状態にありました。この状況を踏まえ、数年前からカスタム社員名簿機能を組織図機能に統合しようとする動きがありましたが、統合には準備期間が必要ということもあり、ようやくこの春に現実のものとなりました。
二つのプロダクトを統合するにあたり、私たちはカスタム社員名簿の機能の大半を組織図に統合するという選択をしました。そして、統合するからには、カスタム社員名簿で提供していた顧客価値をしっかりと組織図側で担い、むしろ上回るくらいの価値を提供したいと考えました。
そしてこの機能の統廃合の活動の一つとして、ユーザビリティテストに取り組みました。
ユーザビリティテストの目的
今回のユーザビリティテストを通じて達成したかったゴールは以下です。
「組織図」は、ユーザーが初見でも迷うことなく操作・活用できるプロダクトである、と確信を持つこと
「カスタム社員名簿」が廃止されると、それまでユーザーがこのプロダクトで実施していた業務は「組織図」で代替する必要があります。
これまでと同等かそれ以上の価値を感じてもらうためにすべきことは、ユーザーが新しいプロダクトを使い始める際の学習コストをできる限り小さくすること、さらに、これまでどおりの業務を組織図で再現できること。そう考えた私たちは、ユーザービリティテストを通じてそれが本当に担保されているかを確認することにしました。
カスタム社員名簿の主なユースケース
廃止されるプロダクトであるカスタム社員名簿の主な用途としては、「全従業員名簿」「部署名簿」などがあります。他にも特定の業務のために一部の従業員が利用する「マネージャー向けの部署名簿」「給与振込口座の確認用名簿」「従業員の取得資格一覧」「制服発注のためのサイズ確認用名簿」などがありました。
後者の用途の特徴は、日常業務と密接に紐づいていることです。今回は特にこれらのユースケースへの支障が生じないことを重視しました。ユーザーの業務フローに変更が生じることを防ぐためです。 これを踏まえ、今回のユーザビリティテストでは、カスタム社員名簿のユーザーがこれらの業務フローを、組織図上でスムーズに再現できるか検証することにしました。
ユーザビリティテストの計画から実施までの流れ
ユーザビリティテストの計画から実施までは、以下のような流れで進めました。
本記事ではテクニカルなことは割愛し、ユーザビリティテストを通じて得られた成果と学びを取り上げたいと思います。
- 全体計画
- スケジュール策定・役割分担
- テストシナリオ設計
- 被験者のリクルーティング
- テスト環境準備
- テスト実施
- 振り返り・優先度判断
弊社にはユーザーリサーチ推進室という調査業務についての専門知識を持ったチームがあります。今回は私たちプロダクトチームからユーザーリサーチ推進室に協力を依頼し、二人三脚でテスト計画を進めることになりました。 (ユーザビリティテスト全体の流れや設計のヒントについて、詳しくはSmartHRデザインシステムのサイトで紹介しています。)
調査シナリオの準備
今回のテストでは、ユーザーがカスタム社員名簿機能で行っていた業務を組織図機能でスムーズに再現できるかを確認するため、以下のようなシナリオを用意しました。
- カスタム社員名簿機能で作成していた「〇〇のための名簿」を、組織図機能上で新規作成する
- 作成する組織図に含める従業員や表示する従業員情報は同等とする
- 組織図の公開範囲も名簿で設定していた内容と同等とする
ユーザビリティテストの実施
テスト当日はファシリテーターが中心になって進めていきます。 被験者の方に事前にお伝えしているのはユーザビリティテストの一般的な説明のみで、シナリオやタスクの共有は当日まで行いません。これはできる限り実際と同じ状況でタスクをこなしてもらうためです。
今回は5社から1名ずつ、5名の方に被験者として参加いただきました。被験者の選定条件は「組織図を全く触ったことがないこと」を含めていたため、被験者は初めて触るプロダクトを前にやや緊張気味で参加されていました。ただ、これらのことを忠実に守ることで、目的に沿った検証が可能となります。
今回はユーザーリサーチ推進室の方がファシリテーターを担ってくれましたが、テストセッションにはPMの私だけでなくプロダクトエンジニアやデザイナーも同席しました。全員で手分けして議事録を取ったり、被験者の操作を観察して疑問に思った点について質問したりと、それぞれが当事者としてテスト結果に向き合いました。
テストの振り返りと優先度判断
テスト実施後は、議事録を見ながら皆で良かった点や改善点について仕分けを行っていきます。 改善点の中には、緊急度の高いものとそうではないものが混ざっているため、今回のユーザビリティテストの目的に照らして優先度を判断していきます。
その結果、組織図は初めて利用するユーザーであっても手厚いサポートを必要とせずに、画面上の説明や直感に従って操作を行うことで組織図の新規作成タスクを完了できることがわかりました。画面によっては少し学習が必要な部分もありましたが、ヘルプページを見るほどのこともなく、ほぼすべての被験者がスムーズに一連の操作を進めることができました。
こうして組織図機能は、当初の目的『初見ユーザーでも迷うことなく操作・活用できるプロダクトである、と確信を持つこと』を達成できました。
さらに、上記の結果を支える重要な要素として以下があることもわかりました。
- SmartHR デザインシステムによってSmartHR全体のUIデザインの一貫性が担保されていることで、UIの各要素の操作がもたらす結果についてユーザーの学習が完了している。新規のプロダクトであってもそのメンタルモデルに従って操作することで期待通りの結果が得られる。
これはデザインシステムの価値を改めて感じた出来事でした。
全体を通して
今回のユーザビリティテスト活動は、機能の統廃合を進めるうえでとても意義のあるものとなりました。テストを通じた検証とその結果によって、統合後のユーザーへの提供価値に自信がもてるようになったのは言うまでもありません。そして、その活動の一部始終に寄り添って伴走してくれたユーザーリサーチ推進室の存在もまた、その自信を支える大きな根拠となりました。
実際のユーザーに客観的に評価してもらう機会を持てたことは、非常に大きな安心につながりました。しかしその一方で、開発当事者である我々がユーザーのフィードバックを恣意的に解釈してしまってはいないか、という不安もありました。
そんな状況に対し、開発者でもなく利用者でもない第三者であるユーザーリサーチ推進室のメンバーから、「組織図機能は確かに初見ユーザにとって使いやすい仕様になっている」という客観的な評価をもらえたことで、私たちは安心して前進することができたのでした。
おまけ: このプロダクト統廃合に伴うデータ移行の裏話を開発担当のプロダクトエンジニアが紹介しています。興味のある方はぜひこちらも読んでみてください!
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