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RubyKaigi is 世界最高のコミュニティ 2022

こんばんは、ぷよぐやまーのkinoppydです。

SmartHRでは、RubyKaigiにスケジュールアプリスポンサーとして協賛しており、当日はブースとかも出していました。アイコン付きマスクやトートバッグを受け取りに来てくれた皆さん、ありがとうございます! 想像以上のペースでトートバッグが消えていき、思ったより足らなかったなと反省しました。トラブルがあり1日で終わってしまった人労打に参加してくれた方々もありがとうございます、現在景品発送に向けて集計中です。

この記事はRubyKaigi振り返りレポートですが、セッションの詳細レポートや会場の雰囲気的なところは多くの個人の方や企業のテックブログで既に紹介されているので、私はコミュニティという観点で振り返ってみようかなと思いました。

RubyKaigi is

プログラミング言語Rubyの国際カンファレンスです。Rubyの国際カンファレンスは他にもいくつかありますが、Rubyコミュニティという側面でみたところのカンファレンスとしては最大のものだと思います。

コミュニティ

コミュニティという言葉の表すところは色々あると思いますが、RubyKaigiは様々なコミュニティが入り混じって一つの大きなRubyKaigiというコミュニティを作っていると思います。開発者のコミュニティ、利用者のコミュニティ、個人のコミュニティ、企業のコミュニティ、様々あると思います。それらのコミュニティが、一つにまとまる場を醸成するために尽力してくれているのが、RubyKaigiだなと私は思っています。

毎年恒例のCommitter vs Worldなんかは、わかりやすく開発者と利用者のコミュニティを繋いでくれる仕掛けです。コミッターがMatzへの言質を取るためのに会場全体に意見を求めたり、コミッター同士の激論(通称ラップバトル)を展開したりと、楽しさ満載です。普段はあまり目にしないプログラミング言語開発者同士のやり取りを見て、我々利用者も開発者コミュニティに親近感を持ったり、なんならbugs.rubyなどでRuby開発に貢献していこうという気持ちを芽生えさせてくれます。

企業のコミュニティと個人のコミュニティも、RubyKaigiでは交差します。企業は優秀なRubyエンジニアを求めて勧誘していますし、Rubyエンジニアは様々な企業の情報を仕入れ自分のキャリアを考えたり、あるいは知人がいまどこの企業に所属しているのかをRubyKaigiで知ったりします。少しでも開発者に名前を知ってもらうべく、企業はノベルティの大盤振る舞いをしたり、それに釣られたRubyエンジニアがその企業のプロダクトのことを知って興味を持ったり、様々です。これは単なるポジショントークですが、RubyKaigiにブース出展している企業はどこもコミュニティそのものに貢献しようという姿勢の企業が多いように思います。

新しいRubyエンジニアたち

今年観測していた中で比較的大きなコミュニティだなと思ったのが、フィヨルドブートキャンプの卒業生コミュニティです。コロナで2年間オフライン開催ができないうちに、フィヨルドブートキャンプを卒業した新しいRubyエンジニアたちが、聖地巡礼のようにRubyKaigiを楽しんでいたのが印象的でした。これは参加者だけではなく、スピーカーの中にも多く新しいRubyエンジニアが参加しており、特にRubyを始めてから数年というキャリアで登壇をされていて、素敵な内容で会場を沸かせていたのを多く見ました。

歴史の長い言語はどこもそうだと思いますが、新しいエンジニアに興味を持ってもらったり、コミュニティに対して参加してもらったりして界隈そのものを若返らせることに腐心しているように感じます。その中でもRubyは、国際カンファレンスが日本で開催されること、そしてRubyKaigiという非常に強力なコミュニティがあることで、比較的その問題に対して国内では大きなアドバンテージを持っているように思えます。海外はちょっとどうかわかりませんが。ただ、RubyKaigiはリージョナルなイベントではなく、れっきとした国際カンファレンスです。その国際カンファレンスに参加するというハードルの低さが、少なくとも国内での普及には大いに有利なのではないでしょうか。

WASM、C言語、Rust、JIT、CPU

今回のRubyKaigiのスケジュールで大きな特徴だったのは、Rubyの最適化のために非常に低レイヤの話題が多く扱われていたことだったと思います。これまでのRubyKaigiでも、これらの話題は決して少なくはありませんでしたが、今回は群を抜いて多く感じました。

WASMに関しては、kateinoigakukunさんという彗星の如く現れた強烈な才能を持ったコミッターの出現が大きかったというかほぼ全てですが、その他の話題、特にYJITやCPUレベルでの最適化の話はShopifyというコミュニティが大きな存在感を放っていました。Shopifyは、Rubyのコミッタ何割在籍してんのってくらい多くのコミッタを雇用しており、また莫大な資金を投じてRubyの改善に寄与してくれている、最も影響力のあるコミュニティではないかなと思います。そのような存在を肌で体感できることも、RubyKaigiの良さだと思っています。

正直、普段Rubyを書いているのでCはまだしもCPUの話やメモリ効率の話は全然頭がついていかないというか、1/10も理解できないんですが、こういう技術がRubyを速くしてくれているという体験をすることが出来ます。これがRubyKaigiです。

地域のコミュニティ

RubyKaigiの特徴に、RubyKaigiを開催する現地の自治体と強力なタッグを組み、RubyKaigi側も自治体側も全力でRubyコミュニティを盛り上げてくれているというものがあります。福岡での商店街貸し切りとか、もはや伝説ですね。このように、地域というコミュニティにもRubyKaigiでは触れ合うことが出来ます。今年の飲食店で使えるチケット2000円分は、あまりにインパクトが強すぎて連日様々な店でたくさんのRubyistが飲めや食えやの夜を過ごしていたようです。お店側も、RubyKaigi参加者を歓迎する張り紙を出してくれていたり、私が泊まっていたホテルにはカウンターにRubyKaigiを応援するメッセージなどを飾ってくれていました。

普段私達がいるコミュニティと違うコミュニティと触れ合うことで、私達は刺激を受けます。RubyKaigiが開催される地方のコミュニティと触れ合うことが、直接プログラミングや仕事には影響を及ぼすことは無いかも知れませんが、人生そのものに対してなにか影響を与えてくれるかも知れません。そのような素敵な出会いをくれるのも、またRubyKaigiなのです。

あとは、川とかもあります。河ですかね? どっちかわかりませんが。今年はなかったみたいです。でも、来年はできるといいですね。

このコミュニティに居続けるために

この刺激的なRubyKaigiというコミュニティを育て続けてくれているオーガナイザーの方々には、本当に頭が下がる思いです。この2年間、きっと何度も準備が無駄になった瞬間が訪れて、心が折れそうになったのではないかと察します。それでも、RubyKaigiを開催することで、最高のエンジニアコミュニティをまとめ上げてくれたことに、いちRubyエンジニアとして本当に感謝してもしきれません。

そしてコミュニティは、RubyKaigiオーガナイザーの皆さんに頼っているだけではなく、全ての参加者が率先して更に良くしていく必要があると思っています。実際に目に見える大きなアクションとして起こせるかどうかでいうと難しいと思いますが、たとえ小さいアクションであったとしても、来年は誰かひとりRubyKaigiに行ったことがない人を誘って連れてくるであったり、ブログを書いてRubyKaigiの楽しさを後世に残すであったり、様々な形でアクションが起こせるのではないか、そしてその積み重ねがRubyKaigiをよりハッピーにしていくのではないかと思います。

みんなでもっとRubyKaigiを好きになり、そして良くしていきたいですね。

来年もよろしく

SmartHRは、もちろん来年もRubyKaigiに協賛しようと思います。より良いRubyの世界と、RubyKaigiの開催に、Rubyを利用してお金を稼いでいる企業として貢献したいと思います。