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弱視ユーザーは制限時間がある通知の何に困るのか

こんにちは!アクセシビリティテスターのgamochanです。 アクセシビリティテスターとは、障害のある従業員がプロダクトを試験し、障害当事者という立場を活かしながら開発側にフィードバックをすることでプロダクトのアクセシビリティ向上を目指す仕事です。詳しくは アクセシビリティテスタープロジェクト | SmartHR ACCESSIBILITYをご覧ください。

私自身も弱視(ロービジョン)で常に拡大鏡(ズーム機能)を使用しています。 拡大鏡を使用した際の見え方については次の記事で説明しています。

gamochan.com

今回の記事では制限時間があるコンポーネント、特に通知によって弱視ユーザーが困ることを説明します。

実際に拡大鏡を使用してみた動画

以下が実際に拡大鏡を使用しながら操作したデモ動画になります。 この画面では従業員項目を選択し、画面下部の保存Buttonを押下してみます。

⚠️初見のページの場合、高確率で通知に気づくことができません。

このページは既に見慣れているため、保存Buttonを押下した後に画面左を確認していますが、この動きは「画面左に通知が出現すること」を知っている必要があります。 初見の場合は「[保存]を押したけどページに何も変化無いな…」と画面上部を確認したり、再度トライしてみたりとより多くの時間をかけ、運が良ければ画面左を確認したところで通知に気づく、という流れになります。

また、今回は操作完了メッセージを例にあげていますが、エラーメッセージの場合は次のような可能性(実体験)があります。

  • 保存できていないことに気づかずにページを離れてしまう
  • エラーに気づかずに何度も同じ操作をしてしまう
  • エラーの原因がわからずに操作完了まで時間がかかる(原因がわからずヘルプページを見漁ったり問い合わせをすることもあります)
  • 最悪の場合、操作を諦めてしまう

制限時間があると何が困るのか

1. 表示範囲が狭く存在に気づけないことがある

拡大鏡を使用すると見切れる範囲
拡大鏡を使用して見た画面
私の場合はここまで拡大することでやっとButtonのラベルが「保存」であることがわかります。その代わり多くの範囲が見切れますが、文字が読めなければ操作ができないため、拡大鏡は常に必要になります。 弱視のユーザーの中には私以上に拡大率を上げて使用している方も多くいます。拡大率が上がることによって見落とす部分は多くなります。

そのため、操作部分から離れた通知は制限時間に関わらず気づくのに時間がかかります。そして制限時間があることで、見えない場所でいつの間にか通知が消えている、それすら気づかないという状況になります。

2. 存在に気づいても読み終える前に消えるときがある

デモ動画の中では二度通知を見ていますが、一度目はメッセージを読み終えることができませんでした。だいたい「しました」は読むことができましたが、何をしたのかまでは確認できませんでした。

弱視の人は健常者の方より読む時間が多くかかります。映画の字幕やゲームのオート文字送りの文字はほぼ読み終えられません。 例として弱視の人が公的な試験をする場合は、健常の方の1.3倍ほど試験時間を延長する等の合理的配慮がされることが多いです。それほど読む時間が多く必要になります。

どんな通知だとわかるのか

  • 制限時間が無い
  • 操作箇所のすぐ近くに通知が出現する
  • 常に同じ場所に出現する
  • 画面幅いっぱいに表示される

これらを網羅しているのがSmartHRのフィードバック方法です。 SmartHRのフィードバックは見落とすことがほとんど無く、非常に見やすいデザインです。SmartHRでは既に制限時間のある通知の実装は非推奨となっています。

smarthr.design

今回は私の見え方をもとに話をしましたが、弱視ユーザーの見え方や支援技術の使い方は様々です。 弱視の見え方については弱視・ロービジョンのユーザーのウェブ利用時の課題と解決案(WIP) - SmartHR Design Systemも併せてご覧ください。