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UXライターがいる会社に入ったと思ったら、なぜかエンジニアの自分がUXライティングやることになった件

これはSmartHR Advent Calendar 2023の7日目の記事です。
昨日はinaba sanによる UXライターからエンジニアへのスキル移譲をシステム思考で振り返ってみた でした。

この記事では、昨日の記事で紹介されていた「UXライティング大臣」を担当した 10moe、akht が、自分たちの視点からスキル移譲の取り組みについて書いてみます。

この半年間、チームがこれらのスキルを獲得できるように、UXライティング大臣として働きかけをしてきました。

  1. エンジニアがヘルプページを作成できるようになる
  2. エンジニアがリリースノートを作成できるようになる
  3. エンジニアがプロダクトのUI文言を考えられるようになる

この記事では「1. エンジニアがヘルプページを作成できるようになる」を取り上げ、どのようなことをやってきたのかを紹介します。

UXライティング大臣としてどのような道のりを歩んだのか

SmartHRで文書配付機能を担当しているプロダクトエンジニアの10moeです。
UXライティング大臣になってからどのように考え、進めてきたのかについて書いていきます。

当初UXライティング大臣に手を挙げてみたものの、何をできるようにならないといけないのか漠然としていました。たぶんUI文言やヘルプページはやる、リリースノートやスクールは...?みたいな状態で、なにから手をつけていいのかもわからないところからのスタートです。

まずはじめたことはなぜエンジニアがやるのかを理解すること

inaba sanとUXライティング大臣は隔週のミーティングで、スキル移譲の作戦会議や相談をしています。その初回で、最初に目指したいことと、エンジニアがUXライティングをする理由について話しました。

最初に目指したいことについては、UXライティングをするために必要な「集める・考える」ができるようになり、書く部分はUXライティングチームと連携できる状態を考えました。いきなり「書く」を目指すのではなく、ライティングが実施できる前段階を目指そうということです。

  • 機能開発の中で影響のあるヘルプページの洗い出しができる
  • ヘルプページの操作手順の構成ができるようになる
  • 上記ができることで適切にUXライティングチームに依頼ができる

また、なぜエンジニアがやるのか?なぜヘルプページから始めるのか、はinaba sanが伝えてくれた「ヘルページはプロダクトの一部の位置付けであり、ユーザーに影響が大きい」という点が1番にありました。今まではUXライターであるinaba sanがチーム内にいたことで当たり前にできていたことが、外部チームのUXライティングチームが対応することになると仕様のインプット・対応のリードタイムが伸びてしまいます。その点、エンジニアが作ることでinaba sanがチームにいたときのように早くユーザーに価値を届けられるようになります。

UXライティング大臣として、開発チームのエンジニアに自分たちがなぜやるのか?を理解してもらうことが大切だと考え、どう伝えていくかを考えていくことにしました。

  • 「なぜ自分たちがやることが大事なのか」を理解してもらうことが大事
  • UXライターが異動するから自分たちがやらないといけない以上の必要性を理解したい
  • ユーザーにファンになってもらう視点で活動できるともっとオーナーシップを持ちより良い行動ができる

第1回 UXライティング大臣の会の議事録から抜粋

開発チームのメンバーとUXライティングやっていき会で同じ認識をもった

チームメンバーに伝えるために、akht sanがエンジニア目線でUXライティングをする目的を社内向けドキュメントにまとめてくれました。そして、ドキュメントをもとに「UXライティングやっていき会」を開催しました。 やっていき会は、ドキュメントを読んで気づいたことややっていきたい・不安などを思いついたものを出してもらい、共有・発散する場にしました。

メンバーからは、「ヘルプページもプロダクトの一部」であることの認識や、ヘルプページを考えることでプロダクトの良し悪しを気づくきっかけになりそう、開発プロセスにプラスの効果がありそうなどプロダクトとヘルプページの関係性を密に捉えたコメントをもらえました。

また、実際に書いてやることを理解していきたいの声があがり、書く練習の機会を考えるきっかけになりました。プログラミングもコードを書いて覚える・理解することが多いので、少しずつ進めるよりも「とりあえずやってみて」という意識があったのかもしれません。

コメントの中には不安・疑問もありましたが、気づきややっていきたいことに関するものが多く、興味を持ってもらえ前向きに捉えてもらえてほっとしました。

ライティングタスクをどのように日々の開発に組み込んだのか

エンジニアがUXライティングをやろう!という気持ちになったので後はやるだけです。 開発に組み込むために通常のリファインメントとは別に、ヘルプページのリファインメント(=ヘルペリファ)を始めることにしました。開発アイテムについて日頃リファを行なっているため、ヘルペリファもそこまで苦戦しないかなと考えていました。

が、甘く見てはだめですね。初回のヘルペリファはチケットのタイトルからやりたいことはなんとなくわかるけれど、どこから話していけば良いか、ゴールをどうすると良いのかわかりませんでした。自分たちで進めることができず、inaba sanの考えていることを聞く、言われたとおりに調べる、文字に起こす、とついていくのがやっとです。どういうロジックで実現手段にたどり着いたのか、今後自分たちだけでできるようになるのか不安になりました。

そこで、初回の進め方をベースに10moeが主導してリファの進行スクリプトを作成し、スクリプトに沿って話していくことで、できるだけだれでも同じように進めていける土台づくりをしました。また、ヘルペリファを行なってみての感想を聞き、少しずつ進め方の改善を行なっています。

ヘルぺリファが終わったチケットについては、自分たちで書ける状態まで作れるようになり、inaba sanのレビューをもらいながら、ライティングタスクからリリースまでをエンジニアが行なっています。

もう1つ、UXライティングやっていき会からあがった書く練習の機会づくりをしました。
SmartHRにはユーザー向けと社内向けの2種類のリリースノートがあります。文書配付機能の通常フローでは、リリース後に社内向けリリースノートをエンジニアが記載して、その内容をもとにUXライティングチームがユーザー向けのリリースノートを作っています。これまでは、社内向けリリースノートは自由に記載していたため、ライティングガイドラインに合っていませんでした。日々書くということ、短い内容でガイドラインに合わせて情報を伝える練習にちょうどよい題材です。エンジニアが社内リリースノートのモブライティングを行ない、inaba sanにレビュー・フィードバックをお願いするようにしました。エンジニア同士で相談しながら進めることができ、inaba sanのフィードバックがとても丁寧&わかりやすく、だんだんと書くスキルがついているように感じます。

inaba sanにリリースノートのフィードバックしてもらったときの投稿

どちらも早めに仕組みのベースを作り、そのあとは困りごとができたら改善していこうという動きをしています。

スキル移譲をはじめたころの目標といまを振り返って

最後に目指したかったことと、いまを比べてみます。ヘルプページについて行なっていることは以下です。

  • 開発時にヘルプページについて話すことが当たり前になり、ヘルぺリファを通して影響範囲の確認ができている
  • ヘルペリファでライティングガイドラインや既存の書き方を探して、こういう構成にできそう、こうすれば書けそうを考えられようになってきている
  • エンジニアがヘルプページのライティングタスクを行ない、レビューをもらいながらリリースまで完了できる

最初に目指そうとしていた「集める・考える」ができるようになり、「書く」という次の一歩にすすんでいます。

プチふりかえり

SmartHRで文書配付機能を担当しているプロダクトエンジニアの akht です。最近イカ釣りをはじめました。全然釣れないので誰か釣り方を教えてください。

ここからはこの半年の取り組みをふりかえって、個人的に大事なポイントだったと思うところを紹介します。

わからないこと・できないことを自覚する

ヘルプページを自分たちで書いてみようとなったとき、「いうて日本語だし、機能自体は自分たちで作ってるわけだからシュッと書けるでしょ」とぶっちゃけ思っていました。

しかしいざ書いてみようとすると、不思議なことになかなか手が動かないのです。改めて考えてみるとよくわかっていないことが多く、ヘルプページに対する理解がとてもぼんやりしている状態でした。

  • ヘルプページってどんな構成になっているんだっけ?🤔
  • どんな単位でページが作られているんだっけ?🤔
  • チーム内で「xxx」と呼んでいるあの機能はユーザー向けには何と説明すればいいんだっけ?🤔
  • そもそもヘルプページで何を伝えられるといいんだっけ… ?🤔

例えるなら、これから手を加えようとしているWebアプリケーションで採用されている言語やフレームワークのことがなんにもわかっていない状態です。そう考えると手をつけられないのは不思議でもなんでもありませんね。

しかし、わからないこと・できないことが認識できれば、そのギャップを埋めるためのアクションを取れるようになります。その中でもとても有用だったのが次に紹介するリファインメント用の進行スクリプトでした。

リファインメントの進行スクリプトを詳細に書いたことがメンタルモデル構築に役立った

目的と完了条件、進め方 目的を達成するための手段
目的と完了条件

進め方
実現手段

上の画像はヘルプページに関するタスクをリファインメント(以下、リファ)するときの実際の進行スクリプトです。これはUXライターが整備したものではなく、10moe sanが先に紹介してくれたように、これから実際にUXライティングを担当していくエンジニア達で考えて作りだしたものです。

なんのためにリファをするのかの目的を示し、リファの完了条件を定め、進め方のメモとタスクを完了にするための実現手段の指針を記載しています。 この詳細なスクリプトは単にリファの進行に便利というだけでなく、取り組む対象であるヘルプページへの解像度を高める効果がありました。

ヘルプページは実はなんと「機能概要 / 操作手順 / 仕様の一覧 / よくある質問」という4つのタイプに分けられるのです。 「ヘルプページを変更する」と言っても新規ページの作成・既存ページの修正・ページの削除というように取りうる手段がいくつかあるのです。 それから翻訳が必要なページもあります。機能開発するときは多言語対応に気を配っていますが、たしかに考えてみればヘルプページも多言語対応されていないと片手落ちになります。

このようによく考えれば当たり前に思えることばかりが書いてあるのですが、これが本当に当たり前になるようにこのスクリプトを通じてメンタルモデルを構築していきました。 当初の「とにかくやるぞ!」というフワフワした状態から一気に地に足がついた状態になり、自走していくための準備がここで整ったのでした。

取り組みの早い段階でこのスクリプトを整備できたのはとてもラッキーでした。いや、ラッキーというのは間違った表現かもしれません。偶然これが天から降ってきたわけではないからです。やはり人の力が大きかったなとも思います。

メンバーの得意なことがうまくハマった

普段ならテックブログでこういうことを書くのはどうかなという声もあると思うのですが、年末なので許してください。

UXライティング大臣には普段から細かい部分によく気がつき、物事を網羅的に抜け漏れなく考えるのが得意なメンバーがいました。その特性が発揮され、先ほど紹介した進行スクリプトが整備されました。そして自分たちの開発プロセスの中にこの新たなタスクを自然に組み込むためにはどのようにすればいいのかを、細かい部分にまで目を配って先導してもらいました。

  • 機能開発する中でヘルプページが必要になることをチームはどのタイミングで気付けるのか
  • 気付いたとしてどのタイミングで具体的に考えるのか
  • 実際にいつ誰がヘルプページに関するタスクをやるのか

頭の中で開発プロセスを詳細に描けるからこそ、なめらかに新しい取り組みをはじめていく段取りができたのだと思います。この「現実」の細かい部分をやりきることこそが今回の一番重要なポイントでした。

またUXライターも常にレスポンスが速く疑問にはなんでも答えてくれてとても助かりました。答えに辿り着くまでの思考や理屈をわかりやすく言語化してくれて、まさに魚の釣り方を教わっている気分でした。 これらの動きはまさに「私たちのバリュー」を体現したものと言えそうです。

できる人を真似してカタを身につける

エンジニアには最低限身につけておきたい基本的な所作があります。公式ドキュメントを参照することと、エラーメッセージを読むことです。

同じようにヘルプページを書く際にも基本的な所作があることがわかりました。SmartHR Design Systemのライティングガイドラインを参照することと、既存のヘルプページを参考にすることです。

これらが身についていないと、てきとーにググって出てきた結果を安易に拝借してしまったり、どう書けばいいかのヒントがせっかくあるのに参考にしようとせずただ闇雲に書くことを繰り返してしまいます。

実際にUXライターと一緒にヘルプページをモブライティングする中で、カタともいうべきこれらの所作に気づくことができました。今では自分たちにもこのカタが身につきつつあります。 どんな仕事であっても、できる人がどのような身のこなしをしているかを観察して、それを真似るのがまずは大事だなぁと感じました。

まとめ

UXライティングのスキル移譲について、半年間の歩みと大事だったな思うポイントを紹介しました。

この半年間は実践を重視して、まず軌道に乗せるために活動してきました。 うまくいっている実感がある一方で、スキル移譲のゴールがまだフワッとしているという課題もあります。 UXライティンググループと協調しながらスキル移譲のゴールを明確にして、次の半年ではそこに向かって走っていきたいと考えています!

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