こんにちは。SmartHRでプロダクトエンジニアをしている 平石(hiraishi) です。 今回は、私が所属してるSmartHRのプロダクト基盤開発本部のグループ企業管理ユニットの紹介や取り組んでいる課題について書きます。
グループ企業管理ユニットが取り組む課題
SmartHR は、これまで主に『1つの企業』での利用を前提として作られてきました。しかし、導入企業の規模が大きくなるにつれ、「グループ会社全体で横断的にSmartHRを利用したい」というニーズが増えてきました。
たとえば、
- グループ全体でタレントマネジメントを行い、横断的に分析したい
- グループ横断での人事労務を行いたい
といった要望です。 グループ企業管理への対応は2023年後半から段階的に開始され、2024年10月にはグループ企業管理ユニットが正式に立ち上がりました。 グループ企業管理ユニットの仕事は、これまでの『1つの企業』での利用を前提とした様々な機能に、新たな概念を追加していく作業です。 そのため、単なる新機能開発だけではなく、アーキテクチャやデータ構造の見直し、既存機能や既存プロダクト(人事労務、タレントマネジメント、情シスなど多岐にわたる)への影響を考慮した基盤開発を行っているのが特徴です。
グループ企業管理の難しさ
グループ企業管理ユニットの開発には、いくつかの大きな難しさがあります。
中長期を見据えた対応への転換
私たちのユニットの立ち上げ当初は、半年〜1年スパンのロードマップを立てて着実に実行し課題解決することに集中していました。 これを進めていく中で、顧客から寄せられる要望やユニットの目指す姿も徐々に明らかになっていき、我々が目指す最終的な形が見えていないという課題があることに気づきました。
私たちのユニットでは、そうした気づきをきっかけに、グランドデザイン作りに取り組むことになりました。グランドデザインとは、中長期を見据えて「どんな基盤を目指すか」を示す指針です。1年先だけでは直近すぎて市場の変化に耐えられないし、5年先では不確実性が高すぎる。そこで現実的に描ける未来像として「3年」というスコープで私達は検討しました。
検討にあたっては、開発メンバーの中からエンジニア1人がプロダクトマネージャー(PM)・デザイナー・プロダクトマーケティングマネージャー(PMM) とともに議論に専念し、残りのメンバーは並行して機能開発を続ける体制をとりました。 役割を分担しながら要求を整理し、さらにユーザーヒアリングでユーザー理解を深め、このグランドデザインを形にしていきました。
より詳しい内容は以下の資料をご参照ください。
既存の大規模システムへのアプローチ
私たちが取り組んでいるSmartHRは既に大規模なシステムです。 そこに「グループ企業対応」を組み込むには、場合によってはデータ構造を大きく見直す必要があります。
データ構造の見直しは容易ではありません。既にユーザ数や導入社数も多く、機能数も多い上に、SmartHRの重要なデータは様々なプロダクトで参照されており、広大な影響が考えられます。このような状況下で、「既存のお客様への影響を最小限にしつつ、将来の成長に耐えられるようにどのように作るか?」が大きなチャレンジです。
グループ企業管理のおもしろさ
難しさがある一方で、グループ企業管理ユニットの仕事には「面白さ」もあります。
その一例が、グランドデザインを描く過程そのものです。 エンジニアだけで要望を受けて実装するのではなく、職能横断のメンバーで議論し、ユーザーの声を取り入れながら長期的に持続可能な基盤の方向性を定めました。これまでは目の前の要望を少しずつ解決していましたが、グランドデザインを通じたユーザーヒアリングやビジネスサイドで整理された顧客要求を経て、今のままでは本質的な解決にはつながらないと感じるようになりました。
より多くの意見を取り入れながら検討していくことで、複数の要望をまとめて解決できる共通の基盤を作れるのではないか——そうした発想へと変わっていきました。
グランドデザインのように中長期を見通した構想や設計を考え、「課題の本質を見極めるプロセスそのもの」が、このユニットで働くおもしろさのひとつです。
チームの文化・進め方
私たちは基本的にスクラム開発をベースにしています。スプリントは1週間に設定し、デイリースクラムやレビュー、レトロスペクティブなどのスクラムイベントを実施しながら開発を進めています。
ただし、状況によってはスクラムにこだわらない柔軟さも持っています。たとえばディスカバリーフェーズにおいては、仕様や影響範囲がまだ不確定で、スプリント計画を立てづらいことがあります。 その場合は無理にスプリントに当てはめず、カンバン形式でタスクを潰していくスタイルをとっています。このように「スクラムを軸にしつつも、状況に応じて最適な進め方を選ぶ柔軟さ」をとっています。
今後の挑戦
現在、グループ企業管理ユニットはグランドデザインに基づいた開発を始めたばかりです。中長期的な視点から見えてきたのは、私たちの役割を「他チームと協業して機能を実装する」から、「仕組みを提供し、プロダクトチームが自律的に拡張できるようにする」方向へと進化させる必要性です。
この方針に基づき、すでに以下のような取り組みを始めています。
- プロダクトチームがより自律的に開発を進められるような仕組みづくり
- 複数プロダクトにまたがって再利用できる共通の設計や考え方の整理
これらはまだ道半ばですが、基盤が直接「価値を実装する」のではなく、価値を実装するための仕組みとして形にしていく段階です。 今後はこの取り組みをさらに加速させ、プロダクト全体の開発スピードと柔軟性を高めていきたいと考えています。
特に、現在のフェーズは「すでに動き出した仕組みを大規模に拡張し進化させる」、10→100の段階です。このような成長フェーズに興味がある方にとって、大きなやりがいのある環境だと思います。
一緒に挑戦しませんか?
グループ企業管理ユニットの取り組みは、既存の大規模システムを相手にしながら、新しい基盤を設計・実装していくチャレンジです。 そこには「難しさ」も数多くありますが、そのぶん、大規模なアーキテクチャ設計を経験できる機会や、複数プロダクトをまたいだ課題解決の面白さを味わうことができます。
大規模システムの成長に携わりながら、中長期を見据えた基盤設計を実践できる環境であり、0→1 ではなく 10→100 のフェーズで腕を試したい方に、成長につながる面白い挑戦になるはずです。 こうしたチャレンジに少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひ私たちと一緒に「グループ横断で使える SmartHR」を実現する基盤づくりに挑戦してみませんか!