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「わからないと言えることは大事」「やることは無限にあるし、世の中に事例がないこともたくさんある」SmartHR PM座談会 vol.2

「わからないと言えることは大事」「やることは無限にあるし、世の中に事例がないこともたくさんある」SmartHR PM座談会 vol.2

SmartHRのプロダクトマネジメントチームでは2024年3月現在、25名のメンバーが活躍しています。
メンバーのことを少しでも知ってもらいたいと思い、昨年のPM座談会(「SmartHRは自分たちの成功体験を一回捨てるフェーズだと思う」SmartHR PM座談会 - SmartHR Tech Blog)に続き、今回は比較的若手のPM2名に話を聞きました。ほぼ同時期にSmartHRに入ってきた2人ですが、キャラクターも強みもそれぞれユニーク。多様な視点でSmartHRのPMについて語ってもらいました。

目次

登場人物の紹介

渡辺 隆久(@nabe3

新卒でNTTコミュニケーションズ株式会社に入社。社内業務システムの企画・開発・運用を行う部門でプロジェクトマネージャーを担当。その後グループ会社に異動し、プロダクトオーナーとしてAI系の自社プロダクトを立ち上げ。2022年にSmartHRにプロダクトマネージャーとして入社、現在はSmartHRの労務基本機能を担当。

永井 雄太(@nagai

新卒で名古屋のITベンチャーにエンジニアとして入社。モバイルアプリの開発、プロダクトマネジメントや新規サービスの立ち上げに従事。副業でEコマース領域のSaasプロダクトのPMを担当。 2022年にプロダクトマネージャーとして入社。SmartHR 基本機能のPMを経て、現在はプロダクト基盤のPMを担当。

安達 隆(@adachi

CPO(最高製品責任者)。2009年にチームラボ株式会社へ入社し、受託開発等に従事。2012年に株式会社Socketを共同創業。Eコマース領域でSaaS事業を立ち上げ、KDDIグループに売却。株式会社メルカリにて社内業務システムの開発を担当したのち、2019年にSmartHRへ入社。2020年に執行役員・VP of Product Managementに就任。プロダクト戦略の策定と組織作りを推進。2024年1月より現職。

転職を考えたきっかけ

安達:渡辺さんと永井さんだと、渡辺さんのほうが入社は先なんですね。

永井:はい。渡辺さんが2022年1月1日入社で、僕が2月16日入社なので1か月半違いですね。

安達:ほぼ同期。2人ともSmartHRは2社目でしたよね。前職での経験と、転職を考えるようになった経緯についてまずは聞かせてください。

渡辺:僕はNTTコミュニケーションズに新卒で入社しました。最初はプロジェクトマネージャーとして進行管理業務を3年半ほど経験し、その後グループ会社に出向して新規サービス立ち上げのPMを2年ほどやって転職した、という流れです。
転職はスタートアップやベンチャーを中心に考えていました。新規事業に関わったことがきっかけで、もっと規模の小さいところでスピード感をもってやりたい気持ちが出てきたんです。あとは自分のやっていることが「プロダクトマネジメント」という職能だと知ってからは、そこを本気でやってみようと思い、PMとして仕事ができる企業を探しました。

安達:NTTグループに新卒で入社してスタートアップに転職するって、結構ハードルが高いイメージがあるんですけど、自分の中での障壁とか、周囲の人の反対みたいなものはなかったですか?

渡辺:自分の中で会社を出ることへの障壁は大きかったですね。言ってみれば「実家を出る」みたいな感覚で。ここにいれば安定して生活は成り立って、仕事もやりがいはある。リスクのある環境に自分から出ていくかどうかは考えました。
逆に周囲の反対は特になかったんです。どちらかというと「やりたいことをやるのがいいんじゃない」と背中を押してもらった感じでした。

安達:自分の中にあったハードルを乗り越える原動力はなんだったんですか?

渡辺:ちょうど30歳を迎えるタイミングで、自分の人生やキャリアを改めて考えていたんです。出向先でPMをやるまでは、与えられた場所で成果を出そうとやってきたものの、自分の強みが継続的に積み上がっていく感覚が持てなくて。PMになってからは、これまでの経験がPMとしてのパフォーマンスに繋がっているなと感じましたし、もっと積み上げたいという思いが出てきました。
でも当時は、ジョブローテーションで違う職種に配属されてPMに戻れない可能性もあって。悩みましたが、今PMに興味を持っていて、チャレンジしたいという思いを大事にすることにしました。一度外に出てしまえばその後の選択肢は作っていけるという考えもありましたね。

安達:何をやるのか自分である程度コントロールできる状況に身をおきたい考えがあったんですね。永井さんはどうですか?

永井:僕は新卒で、迷惑電話やメールを防止するサービスを開発する会社にエンジニアとして入社しました。70人ほどの会社で、モバイルアプリやサーバーサイドの開発を粛々とやっていました。人材も揃っていなくて、僕がデザインがちょっとできたのでカバーしたり、テックリード的なポジションをしているうちに、いつの間にかPM的な動きもするようになっていました。

安達:そこからなぜ転職をしようと思ったんですか?

永井:副業でもPMを始めていて、その時の上司にいろいろ教えてもらううちに、腰を据えてPMの仕事を専任でやりたいなと思い始めたんですよね。一度PMになると、エンジニアに戻りにくくなるかなという不安はあったんですが、調べてみると意外に戻ってる人もいて。そういう例もあることだし、個人開発もしていたので、コードはそこで書ければいいかなと。プロダクトマネジメントは大規模なものほど個人では携わりにくいですし、会社でしかできない仕事と自分でもできる仕事は分けて考えようと思い、転職を決意しました。

安達:SmartHRに入って2年経ちますがどうですか?やっぱりコード書きたいとか、エンジニアに戻りたいという気持ちは…

永井:コードを書きたい気持ちはずっとありますね。今も社内で少し手伝いをしたり、個人開発のネタを温めていたりしています。でもPM専任で働いてみて、自分にはPMのほうが合っているなと思いますし、エンジニアに戻りたいとは思っていないです。

安達:よかった。いや、エンジニアに戻りたいって言われたら、ちょっとパスを考えなきゃなと思ってた。

渡辺:僕も永井さんがエンジニアに戻りたいって言ったらどうしようかなと思って聞いてました(笑)。

渡辺さん、永井さん、安達さんの写真

SmartHRを選んだ理由

安達:永井さんはPMを専任でできる会社を探したということですが、選択肢はたくさんありますよね。どういう軸で検討してSmartHRを選んだんですか?

永井:もともとBtoBのサービスが好きで、プロダクト作りに集中できるSaaSがいいなと考えていました。その中で成長企業という軸で考えて、数社の選考を受けていきました。
SmartHRはプロダクト自体に魅力を感じていました。人事データを握っている点で競合から見ても明らかに優位性を感じましたし、僕も前職でデータを活用したサービス開発に携わっていたので、考え方が近そうだと思ったのもあります。
あとは選考時に人事の皆さんとのコミュニケーションがすごく快適だったんです。テンポが速くて、選考翌日にはすぐメールが来て次のステップに進んだし、気になるところを質問すればとても真摯に答えてくれました。面接官の2人もすごく話しやすくて、雰囲気がいいなと思ったのも決め手の一つですね。

安達:将来性とカルチャーマッチを評価してくれたんですね。ありがとうございます。渡辺さんはどういう軸で考えていたんですか?

渡辺:僕は、その会社が取り組もうとしている課題が何なのかと、それを自分がやりたいかを意識していました。あとは会社の規模やフェーズですね。大企業からの転職だったので、10〜20人規模の会社はギャップが大きすぎるなと思っていました。

安達:なるほど。渡辺さんはオファーを出してからも結構悩んでいましたよね。決め手はなんだったんですか?

渡辺:最終的には企業が解決したい課題にどれだけ共感できるかで決めました。ちょうどその頃、身近な人が労務の手続きで困っていたのを目にしていて。これを自分で解決できるのは、めっちゃやる気が出るなと思ってSmartHRに決めました。

安達:労務領域に明確にパッションを持って入ってくれるの、いいですね。まだ解決できていない課題がたくさんあるので、これからが楽しみです。

SmartHRに入社してやってきたこと

安達:ここからは、入社後の話を聞いていきたいと思います。まず、2人が具体的に何を作っているのか聞かせてもらえますか?

渡辺:僕は大きく3つあります。1つ目は、入社直後から携わっている、従業員情報の中の標準項目を追加する開発です。法改正などの影響で必須になった項目を追加し、該当部分だけでなくほかの機能への影響などを広く考慮し、全体的にマネジメントしていきます。
2つ目は、従業員の過去の情報を蓄積していく「履歴」機能の開発です。人事データを単に蓄積するだけでなく活用できる形に整備していくもので、SmartHRに入って8割くらいはこれをやってきました。SmartHRは、従業員の入社から退社までの人事データをすべて蓄積できるところがプロダクトの強みの1つです。それを活用して新しい機能の提供や、価値の創造に取り組んでいるところです。
3つ目は、「グループ企業管理」機能の開発です。これは、グループ企業複数社でSmartHRを導入いただいているユーザー向けの機能で、従業員データをグループ横断で活用できるようにしましょう、というものです。

安達:従業員情報はユーザー企業にとって大きな資産ですが、SmartHRはローンチ当初からデータ活用を想定していたわけではないので、いろいろと整備の余地があって。それにかなりの時間をかけてやってきたんですよね。今はだいたい落ち着いてきたところですね。
履歴の開発は、どちらかというとマイナスを埋める作業というか、ユーザーから「当然これはできるでしょ」と期待されることができない状態をひとつずつ直していく作業じゃないですか。モチベーションを保つのが結構難しいんじゃないかと思うんですけど、実際どうでしたか?

渡辺:始めは確かに、モチベーションはあまり高くはなかったかもしれないです。労務のでかい課題を解決したいんだと思って入ったわりには、安達さんが言う通り、マイナスからゼロに穴を埋めているような感覚で。
でもやっているうちに、穴に落ちたときにどれだけユーザーが困るのか、穴の深さに対する解像度が上がっていって。その穴につまずいてしまうがゆえに、せっかくプラスの価値を提供しても本来の価値に到達できないことも見えてきました。その穴そのものを埋めるだけじゃなくて、SmartHR全体を見たときにも価値があるんだと気づいてからは、モチベーションも上がりました。

安達:課題への解像度をあげていったらレバレッジが効くことが腹落ちしてきて、それがモチベーションになったと。いい話だ。
永井さんにも同じく、どんなものを作ってきたか話してもらっていいですか?

永井:僕は2年目からは渡辺さんと同じ部署にいて、履歴とグループ企業管理をやってきました。その前の1年は、マイナンバー機能のリニューアルと、先日リリースされたSmartHRのスマートフォン向けアプリの立ち上げを、手を挙げてやらせてもらいました。

安達:そうそう、スマートフォン向けアプリは永井さんが手挙げでアサインされるという、当時のうちの会社では珍しいパターンでした。

永井:前職でスマートフォン向けアプリのエンジニアとPMをやっていたので、話を聞いてやりたいなと思ってたんです。Slackのtimesチャンネルで「やりたい」って呟いたら、安達さんが「やる?」って拾ってくれて。それで、当時の上司の塚本さんと話して担当することになりましたね。
すごいフッ軽な会社だな!しかも入って2か月目くらいで、新規開発のPMやらせてもらっていいんだ!と驚きました。

安達:スマートフォン向けアプリの開発は我々も初めてで知見も社内になくて。経験のある永井さんが「興味がある」と言ってくれて、渡りに船だったんですよ。まだPoC段階だったので、経験があるPMを専任で採用する段階でもなかったし、いろいろ巡り合わせが良かったです。スマートフォン向けアプリ、すごい勢いでインストールされてますね。

永井:SmartHRでは大きいプロダクトを担当する認識で入ったので、入社早々のタイミングで0→1の新規開発をやるとは思っていませんでした。一方で100を1,000にするフェーズの開発にも携わっていて、1年目に両方経験できたのはすごく良かったなと思っています。

安達:うち、意外と0→1もありますよね。最初はPoCから小さく始めることが多くて、兼務で急に降ってくるチャンスもある。

永井:そうですね。僕が入った頃は兼務自体もそんなになかったんですが、最近は全社的にマルチプロダクトに舵切りしたというのもあって、メインのプロダクトを持ちつつ新しいプロダクトも立ち上げる機会がすごく増えていて、経験を積みやすい環境ですね。

安達:マネージャーとしては兼務がいいことだとは全然思ってないんですけど、求められるスピード感からすると仕方ないところもあって。

永井:でも最近は、一定のところまでやったら専任を決めて渡すのが仕組み化されてきてますし、いちPMとしていろんな経験を積めることはやっぱり大事だと思うので、僕自身は両方やれてすごくいいなと思ってますよ。

安達:そう言ってもらえてよかった。肩の荷が少し下ります。

入社後のギャップは?どんなことに悩んでいた?

安達:話を少し遡って、入社直後のことを聞いてみたいんですけど。最初の1〜3か月あたりでギャップを感じたことはありましたか?

永井:プロダクトがものすごく大きいので、全体像を把握するのが難しいなと思っていました。入って半年〜1年くらいのあいだは、プロダクトの手綱を握っている感覚は全然持てませんでしたね。

安達:ああ、それはわかる。自分が担当している領域ですらキャッチアップに半年〜1年はかかりますよね。どうアプローチしていったんですか?

永井:仕様理解は必要に応じてキャッチアップしようと決めて、ユーザーの業務起点で全体像を把握することに注力してました。ユーザーの業務フローをmiroに書き出して、それぞれの工程ごとに、どのタイミングでどの人にどの業務がいくのかを付箋で貼りつけていって。そのマッピング作業を通じて俯瞰で見て、ロードマップを作ったりディスカッションしたりできるようにする、というのをめちゃくちゃ頑張ってやりましたね。

業務の全体像を整理したmiroのキャプチャ
業務の全体像を整理したmiro

安達:まずユーザーの業務は何なのか、それに対して今ある課題は何なのか全体像を把握していったんですね。
渡辺さんはどんなギャップがありましたか?

渡辺:大企業から転職した身としては、スタートアップってめちゃくちゃ残業しながらでも開発を進めていくイメージがあったんですが、SmartHRはいい意味で大人というか、ワークライフバランスを各々でとっていて。自分が勝手に思い描いていたよりずっとなじみやすい環境でした。

安達:一方でプレッシャーもあったんじゃないかと思います。ハードワークでなくても、ゆるいわけではないですからね。

渡辺:そうですね。残業時間は前職より減りましたが、日々求められている成果については前職よりプレッシャーを感じていました。自分自身で「これができないといけないんだ」と置いたハードルへのプレッシャーが一番大きかった気がします。

安達:なるほど、周りからのプレッシャーではなくて。

渡辺:はい。転職すると環境が全然違うので、いわゆる1年生みたいな状態になる。でも社会人としては6年、7年とキャリアを積んでいるので、1年生なのに6年生のパフォーマンスを出さなきゃと思うんですよね。
僕の場合、最初に携わった履歴という機能が、SmartHRの中でも深い仕様の部分で。ユーザーの業務のことは当然理解したうえで、これまでの仕様や経緯も考慮に入れて最適解を考えなきゃいけないのが結構重くて、全然できなくて苦しんでました。

永井:当時よく2人で話してましたよね。当時のPMは社歴の長い人が多くて、先輩たちと自分を比較して僕自身もプレッシャーに感じる時期がありました。

安達:それはどうやって乗り越えたんですか?

渡辺:「自分で自分のハードルを上げて、それがプレッシャーになっていた」という話をしましたが、そこをアンラーニングしないといけないんだと気づいたのが大きかったですね。転職して新しい環境に身をおいているのに、全然アンラーニングせずに単に職場を移動してきたぐらいの感覚でやってるから、できないってことを認められずにもがき苦しんでるんだなと。
そこに気づいてからは「できない、わからない」と伝えて、自分の力だけで解決しようとせず周囲のメンバーに頼るようになっていきました。それを繰り返しているうちに、いつの間にかプレッシャーから抜けた気がします。

安達:確かに、渡辺さんとはずっと月1回は1on1をしてるんですけど、どこかの時点から悩みをオープンに話してくれる印象が出てきました。僕、自分が直接マネジメントしてないメンバーとも1on1を結構やるんですが、弱みを開示する人とそうじゃない人は分かれますね。渡辺さんは悩みをシェアしてくれるので、僕も新しいメンバーの課題感を知れてありがたかったです。
それがきっかけの一つにもなって、PMのチームビルディングに力を入れるようになりました。そうか、新しく入ってきた人ってこういうことで苦しむんだ、もっと横のつながりを大事にして気軽に相談できる関係性を作ってかないとみんな潰れちゃうなと思って。

渡辺:そうなんですね、吐露して良かった。いつからか、合格点を取りに行くよりも適応を優先するようになったら、どんどん悩みを言えるようになりました。

安達:自分がどうやったら認められるかではなく、どうしたら成果を出せるのかと視点を変えたときに、普通に悩みとか相談したほうが早いよねと。ある種、自分目線から成果目線に移行していったんですね。
一方、永井さんって、あんまり自分の悩みは見せないですよね。

永井:そうですね。自分はコトについて話すほうが好きなんですよね。でも、ちょうど今度の1on1では安達さんに自分の課題を話そうかなと思っていたところでした。
というのも、PMが「できない」ってちゃんと言うことはすごく大事だなと思っていて。「PM=いろいろできる人」という認知は、SmartHRだけじゃなく広くあると思うんですけど、自分が経験不足な中で成果を出すために探っていくフェーズは絶対にあって。実際、エンジニアやデザイナーの皆さんの協力や受け入れるキャパに助けられることがたくさんあるんですよね。SmartHRはチームで動くことを大事にしていて、PMもチームメンバーに対して、これはPMの仕事だけど部分的にここはできないんですって言える環境があるのがいいですよね。

安達:PM同士でフォローしあう、マネジメントラインでサポートするということもしつつ、同じ開発チームにいる別の職種の人がフォローしてくれる。そこはSmartHRのいいところですよね。

渡辺:確かに。僕も自分からどんどん言えるようになったって話しましたけど、そうなる前に、エンジニアが「もっと相談してくださいよ」って言ってくれてるんですよね。

安達:おお、素敵ですね。チームメンバーに「わからない」って言えるかどうかって、PMにとっては越えるべき壁のひとつだと思うんですよね。PMの立場だと、エンジニアはじめチームメンバーを不安にさせないようにと思って、ロードマップや資料をひとりで頑張って作り込んだりして、そこにはまり込んで止まってしまうこともある。
でもプロダクト開発って「わからない」ところがスタートラインですよね。だからユーザーに聞きに行きましょう、データを見てみましょうと言えないと、いいプロダクトは作れない。「わからない」を認めることは、PMとして大事な一歩だと思います。

渡辺さん、永井さん、安達さんの写真

お互い肩をならべて、背中を預ける

安達:2人はほぼ同期で、タイプはだいぶ違いますがコミュニケーションも多くて、肩を並べてやってきた感じですよね。お互いをどう見てるんですか?

渡辺:僕は永井さんからめちゃくちゃ影響を受けました、この1年は特に。永井さんは、攻め攻めなんですよ。目的を達成する、成果を出すことに真っ直ぐで、ちょっと懸念点があっても一旦無視してまずみんなに出す。どんどん自分から提案を仕掛けていって、そこからみんなで着地点を探して進めていく、斬り込み隊長的な動きがすごいんです。それを見ていて、自分は同じことができるかなと振り返ったり、安達さんやいろんな人と話したりしました。

安達:自分よりも社歴が長い人やマネージャークラスの人よりも、同期が全然自分と違う動きをしているのを目の当たりにするほうが、刺激になるんですかね。

渡辺:同じチームで一緒に働いて、2人でひとつのロードマップを見ながら進めていた時期があったんですよね。そのときに同じ情報量と同じ視野、視座で見ているはずの人が全然違うアクションを取るというのは、じゃあ自分もできたはずだよな、とより強烈に感じるところはありました。

安達:確かに、あのプロダクトはうちとは違うから、みたいな言い訳はできない。

永井:一時期、僕と渡辺さんとで、毎朝15分話してたんですよね。そのときはプロダクトの課題が結構重くて、毎日すり合わせないとまずいよね、と渡辺さんが提案してくれて。やってる仕事とか話したいこととか、雑談レベルで話してました。

渡辺:やってましたね。そのコミュニケーション量の多さも、影響度には関係あるかもしれないです。

安達:自分にない、いい動きをするPMを内面化して取り入れていくことで成長できますよね。永井さんからは、渡辺さんはどういうふうに見えてるんですか?

永井:渡辺さんはチームビルディングの力、全体を取り回すファシリ能力がすごく高いなと思っています。僕はもう、目的達成のためならなんでもやるでしょ、と目的に向けての話しかしないんですけど、渡辺さんはチームのモチベーションとか勢いをつくっていくところがすごくうまいです。僕と渡辺さんはいい意味で全然違うので、横で見ながらパクらせてもらってます(笑)。
渡辺さんには、以前に一度「ちょっとひとりで突き進むところがあるかも」と言ってもらったことがあって、確かにそうかもと一度立ち止まったこともあります。

渡辺:言ったっけな(笑)。

安達:いいですね、お互いにフィードバックしあってる。

永井:PMは、なんでも全部やる、できないといけないと思われがちですが、それぞれに強みも弱みもあるよなって。渡辺さんとのコミュニケーションを経て感じるようになりました。大事な部分で足りないところは自分で補っていく必要もあるけど、人と働くことによって補えることもあるし、無理に全部をやろうとする必要はないんだなと学びました。

安達:それはすごく大事なことですね。キャリアを積んでいくうえで、自分の強みを自覚することはとても重要だと思います。ある種のブランドというか、「この人はこういうことを任せたら絶対に成果を出してくれる」と思ってもらうことがミドル以上には必要になってきます。いろんなタイプのPMと比較することで、自分が当たり前にやってることが実は強みだと気づけたりしますよね。

永井:SmartHRには20人以上のPMがいて、渡辺さんのように近距離で働く機会もあれば、別チームのPMでもドキュメントを見たり、ロードマップを作るプロセスを横目で見たり、定例で話したりもできる。今すごくいい環境だと思いますね。

安達:いろんなタイプの人と出会える環境はメリットですよね。人材育成って、誰がどうマネジメントするかという方向で考えがちだけど、横にどんな人がいるかというのも大きな成長ドライバーになるんですね。面白いな。

入社して2年、ここが成長した

安達:いろんな視点で話してもらいましたが、改めて、SmartHRに入って2年経って「ここはすごく成長したな」と思うポイントを聞かせてください。

渡辺:早めに自分の考えを出してフィードバックをもらって修正していく動きができるようになったのは成長したポイントだと思います。それで自分のアウトプットも良くなっている実感がありますし。 前職では作る資料は稟議資料なので、練りに練って出すし、フィードバックをもらう機会はほぼありませんでした。
今は「とりあえず自分はこう思ってるんだよね」というスタンスで書いてみて、周りの反応を見ながら、この筋は進めていってよさそう、一旦引き下がろう、誰かにアドバイスをもらおう、とフィードバックを得て進められるようになりました。

安達:いい話だ。永井さんはどうですか?

永井:2つあって、1つは「ちゃんと課題を捉える」スキルが身についたことです。SmartHRでは「結局それって何が課題なの?」「その課題って本当に大きいの?」と問われるのが当たり前で。そこがなんとなくズレてると、だいたい突っ込まれるんですよ。
入社したばかりの頃は課題をなんとなくで捉えていた部分がありました。スマートフォン向けアプリの立ち上げのときに、ユーザーヒアリングに10社も20社も行って、PoCしてフィードバックをもらって、それでも残る課題はこれだ、と突き詰めていく経験をさせてもらって。リリースした後も検証して、課題の探索のサイクルを一巡しっかり回し切れました。そこで「ちゃんと課題を捉える」とはどういうことか、だいぶ掴めるようになりましたね。
もう1つは、僕は兼務が多くて、いろんなプロジェクトを反復横跳びで捌きまくった結果、メモリが広がった感覚があります。やっぱり負荷をかけないとメモリは広がらないと思っていて。作用したのは作業時間というより認知負荷の大きさのほうですね。

安達:確かにメモリを広げるには、ある程度の負荷をかけないとですよね。

永井:SmartHRはプロダクトが大きくて、さらにマルチプロダクトで新しいプロダクトに関わる機会もどんどん増えてきます。それに伴って、新しいふわふわした概念をちゃんと整理していくことは、これからさらに求められると思います。その点でも、いくつかのプロダクトに関われたのはありがたかったですね。

安達:PMのスキルとして、人によって明確な差が出るんだけどなかなか身につかないものとして「コンセプチュアルな物事を扱える力」がありますね。具体の機能をどう作るか、というのは比較的簡単ですが、もっと抽象度の高い戦略とか、まだ競合製品もないような領域で、みんなが共有できるコンセプトを作ろうとすると全然うまくいかないってよくあることで。

渡辺:うんうん。(ずっとうなずいている)

永井:わかりますわかります。

安達:そこはもう練習ですよね。こういうものが欲しいねってみんなが口にしてるけど、よくよく聞いてみると言ってることが少しずつ違うということもよくあって。それを整理していくのはめちゃくちゃ頭を使うし、やらないと身につかないものですね。

永井:SmartHRには事業戦略検討会といって、プロダクトの大きな方向転換などがあるときに、PMが経営層に話をする機会があるんですよね。そういう場にコンセプチュアルな話を持っていって、経営層に対してちゃんと説明をして、そこで合意を得て進めるという経験が社内で仕組み化されて存在するというのが、僕はすごくいいと思います。

安達:そこで客観的な目線が一度入るから、説明しようとするともっと解像度をあげないとダメだと自分で経験して理解できるんですよね。いい成長機会になっていると思います。

SmartHR、これからここが面白くなりそう

安達:最後にこれからの話をしたいと思います。2人から見て、SmartHRのこれから面白くなりそうなポイントはどこでしょうか?

渡辺:多分、今からすごいカオスが来るだろうなと思っています。今は社員1,000人規模でプロダクトは大小15〜20個ほどあり、それを20数名のPMが見ている状態です。PMのお互いの動きがこれまではある程度見えていましたが、それがどんどん見えなくなってきます。今まで共有できていたコンテキストも、プロダクトや人が増えると共有しにくくなる。社内でプロダクト同士が競合したり、コンフリクトしていることにも気づかなくなってくるでしょう。そのことに個人で対応するのではなくて、プロセスやシステムで解決していかないと、価値の最大化ができないフェーズが来ると思っています。

安達:うんうん。今まではPM20人くらいで、ギリギリ全員の顔が見えて、何をしているかもわかるけど、これからはもう無理という段階に入っていくわけですね。

渡辺:いちPMとしては、自分で食い止めないととも思いますが、より広く関係者と議論して、問題を早く解消して前に進めることが大事ですよね。やることは無限にあるし、世の中に事例がない問題も出てくるので、試行錯誤のしがいがあって面白そうだと思ってます。

安達:いろんなブレイクスルーが求められるけど、全然イメージついてないところが面白いと。マネージャーみたいな目線ですね。

渡辺:最近はマネジメントも意識し始めてますね。チームや組織をどうやってスケールするか、みんなでどうやってでかい目標に向かうかには、結構関心があります。

安達:いいですね。メンバーもそういうことを考えてくれるのはすごく心強いです。現場で気づいて仕組みをたたきで作ってみるというような動きは今後も期待しています。永井さんはどうですか?

永井:渡辺さんが組織の話をしたので、僕はプロダクトの話をしようかなと。SmartHRはもともと人事労務領域でプロダクトが始まって、タレントマネジメントにも領域を広げてきました。今までは人事労務の延長線上でプロダクトを展開してきたのが、これからはまったく違う方向の事業もやっていくことになると思います。
もともとある土台のうえに、新しい概念を乗せつつ価値を生み出していくにはかなり高い視座が求められると思います。すでにそれぞれのPMが自分の強みを活かしながら新しい価値を生み出していこうとしていますが、これからますます面白くなるなと僕は思っています。

安達:これからのプロダクト開発については、経営陣も含めて誰も正解を持っていなくて、トップダウンだけでは進まない状態ですね。現場で新しいことを考えてアイデアを出していくのも大事で、そこに経営陣の判断がうまく組み合わさって、事業に勢いが出てくるものなので。そこが面白いところですよね。

永井:Slackに不意に投下されたビジネスアイデアが実際にプロダクトとして動き始めたり、事業戦略検討会で起案されたことが起点になってプロダクトが生まれたり、ボトムアップで参戦しやすい環境がありますよね。

安達:情報に透明性があって、会社の状況や方向性はきちんとシェアされていますから、ある程度の解像度を持っていれば、経営層と同じ目線で提案できるようにはなっていますよね。どんどん参戦してもらえると僕たちも心強いです。

では今日はこの辺で。タイプの違う2人から話を聞けて、僕自身もいろんな発見がありました。ありがとうございました!


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制作協力:伊藤 宏子