この記事はSmartHR Advent Calendar 2025の4日目の記事です。
こんにちは、UXライターのhebikoです。SmartHRのUXライターは、「UI文言やヘルプページを作成する」ほか、「開発チームがUI文言やヘルプページを作成するための支援をする」役割を持っています。
UXライター自身が書くだけでなく、「開発チームがUI文言やコンテンツを作成できるよう支援する」という役割に疑問を持つ方もいるかもしれません。これは、各チームの人数を必要以上に増やさず、コミュニケーションコストを抑えることで、デリバリー速度を維持することが狙いです。ユーザーに価値を早く届けるために、UXライターがチームに常に参加していなくても、開発チーム自身がフィーチャーリリースに必要な文言やヘルプページを作成できる状態を目指しています。
この記事では、「開発チームがUI文言やコンテンツを作成するための支援をする」実践として、MCP Serverを使い、ID管理機能のヘルプページ作成にかかる工数を大幅に削減した取り組みを紹介します。
なぜMCP Serverを使うことにしたのか?
MCP Serverによるヘルプページ作成の工数削減に取り組んだ背景には、ID管理機能というプロダクト特有の事情があります。
ID管理機能は、2025年8月にリリースされた、SmartHR上で外部SaaSのアカウントを管理できる機能です。SmartHRと外部SaaSを連携することで、SmartHR内にある従業員のデータと照らし合わせて、アカウントの保有状況を可視化できます。これにより、従業員の入退職に伴うアカウント管理が楽になるほか、コスト削減やセキュリティリスクの低減に繋がります。
ID管理機能の価値は、対応している連携先が多ければ多いほど高まります。そのため、ID管理機能では、まず連携先を増やすことに集中しました。今期の目標は「3か月で50件のSaaSと連携する」というチャレンジングなものです(開発全体の詳しい話は「AIとプロセス改善で実現した高速開発の裏側 —— 3か月で50件のSaaSと連携」を是非ご覧ください)。
そして、連携先が増えると同時に必要になるのがヘルプページです。ID管理機能では、連携するSaaSごとに設定手順や入力すべき情報が異なるため、ユーザーが迷わず設定できるように連携先ごとにヘルプページが必要でした。
つまり「3か月で50件のSaaSと連携する」というのは、「3か月で50件のヘルプページを作成する」必要があるということになります。
これをいかに効率化しようかと考えたときに思い浮かんだのが、SmartHRですでに利用していたMCP Serverを活用する方法でした。MCP ServerはAIがワークフローに沿ってタスクを実行できる仕組みで、すでに「MCP Serverを利用してAIにリリースノートを書かせる」取り組みが進んでいました(詳しく知りたい方は「SmartHRのライティング x 開発 x AI活用 | AIにリリースノートを書かせる取り組みを中心に」を参照してください)。
リリースノートの取り組みでは、MCP Serverの「ツール」を使って、AIに安定したリリースノートを書かせています。MCP Serverの「ツール」とは、特定のワークフローをAIに実行させる仕組みです。ツールには、AIが踏むべきプロセスや参照する情報、アウトプット形式などをあらかじめ指示として組み込めます。これにより、AIが毎回ゼロから考えるのではなく、決められた手順に沿って一貫した成果物を生成できるようになります。
ID管理のヘルプページもこの「ツール」を利用してAIに初稿を書かせることができないか?と考え、取り組みをはじめました。
MCP Serverのツールを作ってみる
ここからは、このMCP Serverのツールを実際にどう設計したかを紹介します。 まずは、AIに渡すべき情報を考えました。ポイントは「手間をかけずに取得でき、アウトプットの精度が上がるもの」です。
実際にインプットする情報としては、以下に決めました。
- 連携の実装をしたGitHubのPull Request(以下、PR)
- 連携先SaaSのAPIの仕様書
- Design Doc(設計ドキュメント)
- 連携先SaaSの管理画面でAPIトークンなどを取得する方法を、ChatGPTやGeminiに調査してもらった結果
次に、AIが踏むプロセスを定義しました。具体的なプロセスは、以下の通りです。
- SmartHRとID管理に関する基本情報を把握する
- 連携先の情報を把握する
- 現在あるヘルプページの実例を調査する
- ヘルプページを執筆する
- AIによるセルフレビューを実施する
SmartHR内の別プロジェクトでも、ステップを分割した方が精度が上がるという知見がすでにあったため、この形に決めました。
方向性が決まったら、AIエディタの力を借りて実際のツールを生成します。 AIエディタが作ったツールをベースに、自身で必要な指示文を足すなどして細かな調整をし、ツールの最初のバージョンを完成させました。
MCP Serverのツールを改善する
完成したツールを、まずはUXライターである自分自身が使い、アウトプットの精度を確かめました。
具体的には、「最初の10件の連携先はUXライターがMCP Serverを使ってヘルプページを作成する。併せてMCP Serverの検証期間とする」「最初の10件以降は開発チームがMCP Serverを使ってヘルプページを作成する」という進め方で開発チームと合意し、MCP Serverの精度を高めていきました。
改善は以下のように進めました。
- MCP Serverのツールを実行し、AIにヘルプページの初稿を書かせる
- 初稿をUXライターが修正する
- 修正前・修正後のヘルプページをAIエディタに読み込ませ、「修正後のアウトプットに近付けるにはMCP Serverのどの指示を修正すべきか?」をAIに提案させる
- 提案を反映し、ツールを更新する
人間が直接MCP Server上の指示を修正するのではなく、AIに「どの指示が足りなかったのか」を解釈させることで、ツールの指示をより改善できました。
この改善を繰り返すうちに、初稿の完成度が大きく上がり、AIが出す文章の質が安定してきました。
MCP Serverのツールを開発チームに使ってもらう
精度が十分になったタイミングで、ヘルプページの作成を開発チームに引き継ぎました。MCP Serverの設定方法や使い方をドキュメントにまとめ、開発チームが使えるようにしました。
「最初は使い方に戸惑うことがあるかもしれない」と心配していたのですが、すでにAIによる開発を取り入れているチームだったこともあり、スムーズに導入されました。
実際にMCP Serverを使う手順は以下のとおりです。
1. 連携先SaaSの管理画面でAPIトークンなどを取得する方法を、ChatGPTやGeminiに調査してもらう
連携先ごとに必要なAPIトークンなどを取得する方法は異なります。ここをヘルプページ作成のために一から調査し、初稿として起こすのは、手間のかかる作業です。そのため、ここをAIに調査してもらうことで、書き手が調べる手間を削減しました。
2. AIに渡す情報を収集する
AIには、以下の情報を渡します。
- 連携の実装をしたGitHubのPR
- 連携先SaaSのAPIの仕様書
- Design Doc(設計ドキュメント)
- 手順1の調査結果(連携先SaaSの管理画面でAPIトークンなどを取得する方法を、ChatGPTやGeminiに調査してもらった結果)
手順1でAIに調査させたもの以外は、実際の開発の中でできる成果物です。できるだけ手間をかけずに情報を収集できるようにしました。
3. MCP Serverを使ってヘルプページの初稿を作成する
以下のようなプロンプトをAIエディタに入力し、ヘルプページを作成します。
MCP Server「ux-writing」のツール「create-idapp-help」を使ってID連携のヘルプページを作成してください。 新しいID連携アプリ「{連携先名}」との連携手順についてのヘルプページを作成したいです。 参考となる情報を以下に書きます。 github MCP Serverの get_pull_request を利用して以下のGitHubのPRを取得してください: 取得:{PRのURL} 作成:{PRのURL} 削除:{PRのURL} Design Doc: {Design Docを作成したPRのURL} APIの仕様書は @ファイル名 です。 設定手順は @ファイル名 です。
4. 出力結果が正しいか確認し、必要に応じて修正する
今回のMCP Serverは初稿の作成を楽にするものであり、初稿はあくまで「下書き」です。手順や記載内容が正しいかどうかを人間が確認することは不可欠です。
5. UXライターにレビューを依頼する
最後に、UXライターがレビューをし、問題なければ完成です!
得られた効果
開発チームの工数削減に貢献できた
これまで、ヘルプページ作成には、1ページあたり1〜2時間かかっていました。APIの仕様の確認やヘルプページに記載すべき内容の確認など、事前調査にも時間がかかっていたためです。
MCP Serverによる初稿の自動生成と必要な情報の明文化により、作業時間を30分程度まで短縮できました。MCP Serverが初稿を自動作成してくれること自体も負担軽減に繋がりましたが、それ以上に大きかったのは「AIがヘルプページを作成するのに必要な情報」を洗い出し、人間が調査すべきことを明文化したことです。
UXライターのレビューコストが下がった
副次的な効果として、UXライターのレビューコストが下がりました。
AIは決められたフォーマットの文書を生成するのが得意です。ID管理のヘルプページはある程度書くべき項目が決まっているため、指示が整っていれば、AIが抜け漏れなく書いてくれます。そのため、「この項目の記載が抜けている」ということがなくなり、UXライターのレビューもより楽になりました。
おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今後とも、UXライターとして、開発チームで業務がより進めやすくなるような取り組みをしていきます。 SmartHRのUXライターの責任範囲や、それに伴う動き方について興味のある方は、是非以下の記事をご覧ください。
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