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ユーザー価値最大化のためにいかに動けるか、変われるか 〜アジャイル推進室連載企画第1弾〜

こんにちは。プロダクトエンジニア兼アジャイル推進室メンバーの長田(shooen)です。

SmartHRでは以前よりスクラムをはじめとしたアジャイルに開発していくための取り組みをおこなっています。 そんなSmartHRのアジャイル周りについてより詳しく知っていただきたく、「アジャイル推進室連載企画」をはじめました。

今回は第1弾として、アジャイル推進室メンバーである荒川(kouryou)さんのインタビュー記事をお届けします。

荒川 涼太 (kouryou)

2019年9月にSmartHRへ入社。SmartHR基本機能の開発およびエンジニアのマネジメントを担当。 また、アジャイル推進室メンバーとしてアジャイルに関する社内向けの取り組みや社外へのアピールなどに力を入れている。

SmartHRの7つの価値観とアジャイルは相性がとても良い

荒川 涼太さん 趣味は筋トレ。ベンチプレス100kg上げている。

長田: 本日はよろしくおねがいします。早速ですが、まずはアジャイル推進室のことについて詳しく教えてください。

荒川: アジャイル推進室はSmartHR全体がアジャイルな組織になることを目指し、それを推進・サポートすることを目的としたコミュニティです。 発足当初は2名から始まった推進室ですが、今は10名のメンバーで運営しています。

長田: どのような取り組みを行っているのですか?

荒川: まず定常業務が3つあります。

1つ目は「アジャイルやっていきの集い」です。社内のアジャイルな取り組みを共有したり困りごとを相談する場で、毎週30分のMTGで運営しています。

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2つ目は「スクラムマスター養成講座」です。主に新しく入社された方を対象に、スクラムガイドをベースにスクラムの基礎知識やスクラムマスターの振る舞いについてインプットする講座です。毎週1時間 x 7回で構成しており、半年に1度開催しています。

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3つ目は「交代制スクラムマスター」です。スクラムマスターの役割を約3か月ごとにローテーションすることで、スクラムマスターとしてチーム・組織を改善していける人を増やしていくための取り組みです。参加者は各々が所属しているチームのスクラムマスターを担い、チームの観察・プロセス改善の提案・スクラムイベントの改善などを行います。 毎週1時間の定例MTGを実施し、そこで他のスクラムマスターと情報交換や気になったことなどの相談をしています。

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定常業務以外では、テックブログ執筆や社外イベントへの登壇などの社外発信、ビジネスサイド向けのスクラム勉強会なども実施しています。

アジャイル推進室の目的に沿った取り組みであれば推進室メンバー各々が自律駆動でさまざまな取り組みをおこなっています。

長田: アジャイル推進室が発足して約3年が経ち、上記の取り組みも比較的軌道に乗り、以前に比べて組織にもアジャイルやスクラムが浸透してきているかと思います。 荒川さんから見て今のSmartHRのアジャイルに関する強みや課題はどのようなところにあると考えていますか?

荒川: 一番の強みはアジャイルが開発組織のカルチャーとして定着しつつある点です。というのも、SmartHRの7つの価値観とアジャイルはとても相性が良いんですね。会社の価値観に共感し行動に移せる人が集まっているので、自然とアジャイルソフトウェアの原則に倣った行動を取りやすいというのがあると思います。

あとはユーザー目線で開発できていること。エンジニアとして技術にこだわりたい・こんな機能も追加したいなどのシーンは往々にしてありますが、いずれのシーンでも必ず「それはユーザーが本当に欲しいものかどうか・ユーザーにとってどのような価値があるか」を考えながら意思決定できているのはこの組織の強みだと思います。

課題としては、フィーチャーチーム内の動きはかなり洗練されてきている一方、チーム外との関わり、ステークホルダーやビジネスサイドとの関わりがまだまだ弱いと思っています。今期のプロダクトサイドのテーマでもある「越境」を意識して行動していくフェーズに来ていると思います。

長田: チーム外との関わりという点について、具体的にどのような状態を目指していますか?

荒川: ステークホルダーやビジネスサイドのメンバーともっとカジュアルに話し合える、意見を言い合える関係が構築できればと考えています。そのためには、チームの目標からレベルアップしていく必要があると考えています。 今、各フィーチャーチームが掲げる目標はアウトプットベースになっていますが、これがアウトカムベースになるのが理想だと思っています。そのためには我々もステークホルダーやビジネスサイドのことを理解し、協働していく必要があると思っています。

長田: なるほど。プロダクトサイドとビジネスサイドそれぞれの目標が近づくことで自ずと協働すべきシーンが増えてきそうですね。

アジャイル推進室のメンバーとしては今後どのようなことにチャレンジしていきたいですか?

荒川: 「社外発信」と「ビジネスサイドを絡めたアジャイル推進活動」ですね。社外発信については国内最大規模のスクラムイベント、Regional Scrum Gathering Tokyo に登壇したいと思っています。前回の Regional Scrum Gathering Tokyo 2023 はプロポーザルを出したのですが残念ながら採択されなかったので、次回またチャレンジしたい!他にもテックブログやLTイベントなどで定期的に社外発信していけたらと思っています。

ビジネスサイドを絡めたアジャイル推進活動については、フィーチャーチームの意思決定の場にチーム外の方を巻き込んでビジネスサイドの意見をもっと吸い上げていきたいですね。そのためのコミュニケーションや仕組み化などに取り組んでいきたいと考えています。 まだ具体的なアイデアはないのですが、まずは自分がいるチームで出来ることから小さく始めていけたらと考えています。

LeSS自体は素晴らしいフレームワーク。さまざまな困難の要因は人数の多さに帰結する。

長田: ここまではアジャイル推進室に関していろいろと訊かせていただきました。ところで、荒川さんが開発を担当しているSmartHR基本機能の開発体制ではLeSSを採用していますよね。ここからはSmartHRでのLeSSについてお話を聞かせてください。まず、LeSSの体制について教えてください。

荒川: SmartHR基本機能では現在6つのフィーチャーチームでLeSSを回しています。各チーム7~10名のメンバーで構成されており、PMが1名、エンジニアが5,6名、専属のQA、デザイナー、UXライターはチームによっていたりいなかったりといった感じです。

長田: 専属のQA、デザイナー、UXライターがいるかいないかはどのように決まっているのですか?

荒川: チームがどれだけクロスファンクション(機能横断型)になっているかによります。どのチームも最初は専属でいるのが基本ですが、チームの他メンバーに少しずつ職能を移譲していき、最終的には専属でなくなりコンポーネントメンターとして関わる形になります。このあたりに関しては過去のエントリ、SmartHRにおけるクロスファンクショナル実践例で詳しく書いているのでそちらを参照いただけたらと思います。

長田: 荒川さんが思う今のLeSS体制における課題や困難はどのようなものがありますか?

荒川: 人数が多いこと。これに尽きますね(笑)。人数が多いことによってコミュニケーションコストは高くなるし、認識を揃えるのも難しくなる。チームが増えればフィーチャーチーム同士で足並みを揃えるのも難しくなってきます。

長田: それらの課題に対して現在意識していることや取り組んでいることはありますか?

荒川: これらの課題はオーバーオール系のイベントで担保したいと常に考えています。が、そのイベントを機能させるのもまた難しいんですよね。機能させることが難しい要因の一つとしてはやはり参加者が多いことが挙げられると思います。 今は多くの人がリモートワークなのでどのスクラムイベントもオンラインで開催しています。オンラインだと集まることも容易なため基本LeSSのメンバー全員が参加しています。そうすると計50名以上のメンバーが集まることになり、発言の心理的ハードルが高くなったり、コンテキストの差分を埋めることが大変になってきます。また、それだけ人数がいると全員で議論して意思決定することも当然難しくなります。

この問題への対策としてパッと思いつく手段は参加人数を絞ること。昔実際にメンバーを絞ったことがあるのですが、限られたメンバーでの意思決定は周りが納得感や当事者意識を持つことを難しくしてしまいました。この経験を踏まえ、現在は参加メンバーを絞ることはしていません。 今試しているのはファシリテーションが得意な人にファシリテーターを固定してみて、イベントをうまく回していけるかチャレンジしているところです。

なので、LeSSが難しいというよりも人数が多いことがいろいろな課題につながっていると感じています。LeSS自体はむしろ素晴らしいフレームワークだと思います。50名以上のメンバーでスクラムが回せているのはとてもすごいことで、これはLeSSというフレームワークがあってこそだと思います。

スクラムマスターをやることでエンジニアとしても成長できている

長田: SmartHRではアジャイル推進室メンバーでない人も交代制スクラムマスターの取り組みを通してスクラムマスターを担うことがあります。ただ、スクラムマスター専任になるわけではなく、エンジニアやデザイナーなど、各々の職能を専門とした開発者をやりつつスクラムマスターも兼任する方法をとっています。 荒川さんもエンジニアとして動きつつスクラムマスターとして立ち回ることもあると思いますが、そういった点で苦労することや逆に良いことなどはありますか?

荒川: 考え方の切り替えに苦労しますね。開発者としてのめり込んじゃうと俯瞰することが難しくなる。なので「あえて一歩下がってみる」というのは常に意識しています。メンターをやっている交代制スクラムマスターでも参加者には「『スクラムマスター視点で見るので一歩下がってみます』というのをチームに明言しておくといいですよ」というアドバイスをよくしています。 あえて発言せずに観察することってとても大事なんですよね。何か気になったことがあってもすぐにチームに投げかけるのではなく、少しだけグッと我慢する。すると他のチームメンバーがそこに気づいてちゃんと投げかけてくれることが多々あります。チーフ(プレイングマネージャー)やスクラムマスターが言わなくても開発者たち自身で気づいて提案・行動していく状態はまさにアジャイル推進室が目指している組織の姿と合致します。

良いことですが、スクラムマスターとして振る舞うことで視野が広がり、エンジニアとしても成長できていることです。 例えばなぜその機能をつくる必要があるのかを考えたり、解決したい課題を正しく理解するということを以前に比べてより意識できるようになりました。結果、ユーザーの理解を深めようとしたり、エンジニアとスクラムマスター両方の視点から考えることでプランCを出しやすくなったと思います。 前提としてスクラムマスターは専任でやったほうが良いと思っていますが、それはそれとして、兼任スクラムマスターならではの良さも感じることが出来ています。

長田: このテックブログを見てくださっている方の中には、SmartHRに興味があるけどもアジャイル開発やスクラムの経験がない方もいるかと思います。そのような方へ伝えておきたいことはありますか?

荒川: アジャイルもスクラムも目的はユーザーにとっての価値を最大化することです。それらの経験がなくとも、今の状況においてユーザーの価値につなげるには、その価値を最大化するには何を変えればよいかを常に考えていけることが大事だと思います。 実際にスクラム未経験の方も入社されていますが、先述の通り入社後スクラムを学べるコンテンツを用意しているのでその点は安心していただけたらと思います。 なのでユーザーの価値を大切にする人は弊社に向いていると思いますし、我々もそんな方と一緒に働きたいと思っています。

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以上、アジャイル推進室連載企画第1弾でした。SmartHRのアジャイルな取り組みやLeSSの実情など、少し具体的にイメージできたでしょうか?

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